ヴィーナス
ユニークが一万行っていました。ありがとうございます。
当初、徐々に女の子っぽくなるはずだったLiLiですが、なぜか変な方向に成長しています。将来が不安です。なんでこうなったのかな?
「はあー、最近は脱げないなー」
ギルドとして活動するようになって、フィールドで脱げる機会が減ったことには少し不満がある。今まではshia達が黙認してくれていたけど、男性と行動する機会も増えたら流石に恥ずかしくて全裸戦闘が出来ない。同志のLiLiとの狩りの時が一番の楽しみになってきている。
それでも、今のギルドも嫌いじゃない。今までパーティーを組んでいたshiaとリーフのことは好きだし、新たな仲間たちも楽しい。
ギルマスになったケルドと言う男性はリーダーとして皆を纏めてくれるし、ケルドとボス周回で行動していたスルトと言う女性はサブマスとしてギルマスを支えることが上手く、メンバーからの不満もきちんと聞いて改善案を模索してくれる。
shiaもサブマスとなり、戦略やギルド運営など重要なことをしている。そんな皆と過ごして、メンバー間のトラブルもほとんどなく楽しくやれている。
「でも、ヌーディストとしての誇りがー」
別に露出が好きな訳じゃない。
ただ日々の繁雑とした生活環境に息苦しさを感じる時がある。昔は空手で発散していたけど、最近は合気道も始めたせいで忙しくなった。面白そうだから始めたので、そのことについては不満はないのだけど、街の空気の悪さと行き交う人と車を見て息苦しさを感じている。
「ばあちゃんたちの家なら、こっそり脱げるんだけどなー」
元は田舎に住んでいたけど、父親の仕事の都合で五歳の時に大阪に引っ越して来て、それからマンション暮らしをしている。かつての広い家と違い狭い室内。排気ガスで汚れた空気と様々な匂い。
連休に田舎に帰省する度に、その違いを実感して今じゃそれがストレスになっている。まだ高校二年なので、就職も進学もまだ少し時間があるので地方で住むにもまだ一年以上掛かる。
「露天風呂も最近行ってないなー」
服を脱ぐきっかけが露天風呂だった。外で裸になる解放感。それがいかに非日常的であり、息苦しさを消し去ってくれることを知った。あの時は単にお風呂が気持ち良かっただけかもしれない。
だけど、田舎の川で泳いだ時にも解放的で気持ち良かった。夏の時期に子供がよく泳ぎにくるスポット。だけど、早朝に行った時には誰もおらず水着に着替えるのも面倒で裸のまま泳いだ中三の夏休みに、外で裸になる解放感が堪らなく好きだと知った。
それからは、田舎に行く時や露天風呂でストレスを発散できたけど、どちらも行く頻度はかなり少ない。その中でVR世界が目に付いたのは当然の成り行きかもしれない。母親がゲーム好きだったので機器は揃っていた。ソフトで何種類か行ったけど、どれも裸になることは出来なかった。
その中でも、自分がアイドルとなる着せ替え要素を利用して裸でライブとかしたけどリアル感がなくいまいちだった。同じくRPGをしたが、そちらもいまいち。だけど、少しはストレス発散にはなった。そうして学校と道場の日常にゲームが加わった。
それから一年。次世代ゲーム機として『イリューティス』が発売された。リアル感が期待出来るかもしれないと、お年玉や貯金で『プリズムハート・カルテット』と共に購入した。
初めは少しだけリアル感が改善された程度で正直がっかりした。リアルの風の心地よさ何てなかった。それでも、自分の武道の技術で敵を倒すのは面白かった。どうやらRPGとの相性は良い方だったみたいで、それだけでストレス発散にはなった。
ゲームをして仲間が出来、楽しくなった。ただ、今まで裸で戦闘をしていたので仲間が出来た事でそれが出来なくなった。
悩んだ。このまま行くか、ソロになるか。自分のストレス発散方法が異常なのは理解していたから、悩んだ。だけどその時のパーティーであるshiaとリーフが悩みを聞いてくれて、カミングアウトした。嫌われたら離れればいいと思って。だが、二人は受け入れてくれた。それだけじゃなく二人がログアウトしていると思って、こっそり裸で戦っているのも見られていた。二人は今まで何も言わなかったので気付かなかった。
カミングアウトして二人があっさり受け入れてくれてからは、他のプレイヤーがいない場合には裸で戦闘するようになった。やはり、外で脱ぐことがなによりのストレス発散だと実感できた。徐々にリアル感が増す世界のお陰かも知れない。
ある時、『露出狂幼女リリ』の噂を聞いた。そして直感した。仲間がいたと。
それから数日、LiLiのことが頭から離れなかった。会って話してみたいと思った。同じ獣人領なので何時かは会えると思っていた矢先に本人が現れた。
一言で言えば可愛い。そんな女の子だった。噂が本当なのか疑問に思ったが、話を聞くと隣にいたオリヒメが原因だと知る。でもその時のLiLiの顔は困っているようであったが、何より喜色が浮かんでいた。同志だと直感したのは間違いないと思った。戦闘スタイルも自分と似通っていて、自分のように感じたからかもしれない。一方的な感情。
フレンド登録はしたが、それから連絡を取る事なく時間が進んだ。その間もリアルに近い風になり、裸での快感が増して行った。
そしてLiLiとの繋がりがない内にギルドが実装された。正直に言えば、LiLiを含めたパーティーでギルドを組みたかった。だけど、ギルドの最低人数は八人。これから攻略するのにギルドを組むことはパーティーで話して決めていた。なのに、いざ実装されると人数が足りない。
再度パーティーで話し合い、メンバーを探す事に決めた。その中で、LiLiの勧誘の担当になるようshiaに言われた。恐らく、自分とLiLiを一緒にさせたかったのだろう。ギルド設立での弊害は、今までのような戦闘が出来ないことは上がっている。それは裸での戦闘が出来なくなる可能性。だけども、二人いれば簡単な行動が出来る。それも同じような人物なら軋轢もない。shiaもLiLiが自分と同じだと感じたのだろう。共感出来る人物がいた方が良いとも思ったはず。受け入れてくれても、完全に共感は出来ないのだから問題が生じる可能性はあると危惧してくれていた。
その頃、LiLiは一気に有名になった。害獣として捕まったことに始まり、ネット上での生中継なんてことをして。
ギルド実装に利用されると心配したのはパーティー全員。これほど有名になれば旗印として一躍ギルド自体が実力を付ける近道になる。有名人に群がるのは人の心理。それだけ、人材とお金が集まる。そして自分たちも有名になりたいと思う人達がLiLiを利用しようと思うのは容易。
すぐに保護しようと思った。元よりギルドに誘うつもりだった。だけどギルドに誘えば自分たちも利用することになるとも思った。それだけは嫌だ。そんな理由でギルドに誘いたくはない。
LiLiの判断でギルドへの加入、つまり誘致は行うと言ったshiaに怒りが沸いた。だが、ギルド加入により利用しようとするプレイヤーが減る可能性を説かれ渋々了承するしかなかった。このままLiLiがこの世界から居なくなるのは嫌だった。まだ確りと話してもいないのに。友達になりたいと思ったのだから。
プレイヤーの話題からLiLiがハジリ村のゼメスと言うチュートリアルNPCの家にいることは直ぐに解った。宿屋でもないのに、住人の家に泊まる事が出来ることもプレイヤーの話題となっていた。次々と新しい事をするLiLiがネットの注目になるのは当然。思っていたようにギルド勧誘のプレイヤーも見られた。
プレイヤーに囲まれたLiLiを見て、咄嗟に身体が動いた。ただ困っている女の子を助けたいと思った。それだけ困惑と恐怖に彩られた顔が人垣の間から見えた。こんな小さな女の子に何をしているんだとプレイヤーの行動に怒りを覚えた。
僅かな隙間に身体を捩じ込ませて、LiLiの手を掴んで人垣から引っ張り、とにかく走った。そしてようやくLiLiと再開出来たことを手の感覚から実感して嬉しくなった。
一応勧誘はしたけど、ソロを選んだLiLiにも嬉しく感じた。ちゃんと自分の意思を持っていること。でも、ほっとけない言動と見た目。ある意味、これがプレイヤーを惹き付けた要因かもしれない。魔性の幼女だよね。
これから暫くギルド勧誘が続く事を伝えると、本人も危惧していたのか暫く行動をすることになった。ようやく話し合える。もちろんパーティーには許可を貰っている。今はギルドメンバーを探す期間。急いで変なプレイヤーを招かないように、勧誘期間は短い訳じゃない。そしてお互いのフレンドなどから声を掛けていくので、チャットでも聞く事が出来るのでLiLiとの行動で支障が出ることもないと判断してもらっていた。
LiLiとの楽しい一時が始まる。オススメスポットも大変気に入ってくれた。言動からやはりLiLiも脱ぐことが好きみたいで過去最高の喜びを抱いた。LiLiは脱いでも可愛かった。
でも、いきなりお尻に鼻を突っ込み匂いを嗅いできたのには驚いたし恥ずかしかった。LiLiが自分なんかの遥か先にいるんだと思った。
匂いを誉められても恥ずかしだけ。仕返しに匂いを嗅ぎ返したらLiLiもようやく理解したのか恥ずかがっていたけど、LiLiが無臭だったことが残念。でも匂いに関係する技能を修得出来たのは行幸だったのかもしれない。使い方に悩むけど。
より身近な存在になったLiLiに《格闘》も教え、ほどなくして修得した。LiLiの知る技能は獣系ばかりで残念だけど、LiLiが【ヌーディスト】を貰ったことでいよいよ確信した。同志と。
たぶんフィールドで全裸になって最低十時間経過しないと貰えない階位。自分と再会するまでも裸になっていたことが確実になったのだから。
それからもLiLiに素材の買い取りや素材集めに会ったりしている。素材集めではモブが弱くて成長しないけど、そんなことより楽しい。もちろんお互い裸だし、たまに匂いを嗅ぎ合う関係になった。いまだに無臭なのが残念だけど。
「でも最近会えてないんだよね」
どうやらメインクエストを進めているらしく、一緒に狩りが出来ない。こっそり一人で狩りをしても、同志との狩りが楽しくて物足りない。また、合気道の昇段に向けて少しログインする時間が減っているので脱いでる時間がほとんど取れない。
武道でもストレス発散は出来るけど、やっぱり一番は外で裸になって解放感を抱くこと。LiLiがいればさらに倍。
「よーし、今日はとことん狩ってやる。リリっちがいたら良いんだけど」
それにギルメンに一人誘えないかな。
フワフワと言う、何を考えているか解らないプレイヤー。でも、なぜか似た匂いがする気がしている。
一人より二人。二人よりも三人。誘ってみるのも面白いかもしれないと思いながら、今日も服を脱ぎにいく。
『ヴィーナス』
本名:飯田恵那
(三章時点)
武器:拳・脚
種族:獣人・茶栗鼠
階位:【ファイター】【ヌーディスト】
タイプ:前衛・遊撃
技能
【武器技能】
《クローLv1》《格闘Lv5》
【魔術技能】
風属性:《つむじ風Lv3》《風扇Lv1》
【補助技能
《忍び足》《バックアタック強化(小)》《クリティカル(低)》《気配察知》《聴覚強化》《隠密》《跳躍》《気配遮断》《視力強化》《嗅覚強化》《臭気探知》《嗅覚追跡》
【生産技能】
【特種技能】
《投擲術Lv2》
【常時技能】
設定数(5/5):《勘》《攻撃力増加(小)》《腕力強化(小)》《脚力強化(小)》《命中率上昇(小)》
控え:《詠唱速度上昇(小)》《高速着脱》
備考:ギルド『Arioch』。攻撃・素早さ主振り。