情報収集1
「えっとまずはメインからかな」
昨日の変な集団改め、ギルド『LiLi様見守り隊』との出会いが衝撃的だった。なにより、僕をストー──見守るために着いて来ているのに、平均レベルが39と高かったこと。ギルド結成したことから、メインクエスト4を終了していることは分かるけど、そんな高レベル集団だとは思わなかった。なにより熊のギルマス、今はただのギルメンに堕ちたリンゴがレベル44とずば抜けているらしい。どんな廃人なんだよ。
「メイン進めたら魔導書が増えるとは思わなかったよ」
メイン2で毒回復で、メイン3と4で風魔術の魔導書が買えるようになるらしい。知らなかった。
「攻撃魔術は欲しいね。智力も低いけど、買える魔術は全部買いたいし。なにより、遠距離攻撃は必要だもんね」
内容までは聞かなかったけど、今日の情報収集を終えたらさっそく買いに行きたい。
プリハ内からは公式サイトしかアクセス出来ないので、複数を閲覧する場合はリアル側で探す必要がある。
ブックマークしている公式を含めて三つのサイトと二つのブログ。これが僕の情報源。必要最低限しか見ないようにはしているけど、久しぶりに一通り情報を見ようと思っている。
「メイン3は蜘蛛の討伐だったよね。蜘蛛二種類にボスかー。毒と麻痺対策いるんだ」
クエスト総合スレッドやメインクエストスレッドを次々と眼を通していく。
毒は魔術で対策できるけど、麻痺はアイテムいるみたいだね。状態異常回復の魔術なまだかな?
それより、ほとんどのゲームで始めに毒と解毒が出るんだろ?その後に毒も含めた状態異常回復のアイテムとか魔術出るのに。なんで特別扱い?考えても解らないけど。
「必要数のモブ討伐してから、奥に行けばボス出現。ボス討伐後もモブ討伐数×十のリゼが追加報酬であるんだ」
だからあれだけ炭鉱前の転移装置に人がいたんだね。あ、でも。ボス討伐からプリハ時間で十二時間限定なんだ。それ過ぎて報告しても追加報酬貰えないんだね。
「うーん。年齢でタイムリミット違うから、その対策かな。十二時間いても、他のプレイヤーも倒してるし、リポップまでもそこそこあるならあんまり稼げないかな」
これは倒せる感じなら倒すって感じで良いかな。軟膏製作の方が効率は良さそう。討伐数×百なら軟膏よりも効率良さそうだけど、十だしな。
「メイン4は……いいや。楽しみに取っておこう。魔術は気になるけど、先に見ても忘れそうだし。寄り道ばっかだし、借金返済が優先だし。はあ、借金なんて作るもんじゃないよね」
悲しい気分のまま一旦スレッドを閉じて他を見ていく。雑談スレッドが公式だともう二十近くまで来てる。最近、公式雑談は荒らされてるみたいだし見なくていいかな。
「二つ名命名スレッド……」
怖いけど開いてみる。だって、昨日の集団が僕の事を知らない名前で呼んでいたしね。
「えーと、結構盛り上ってるね。結構二つ名着いてる人いるし。あ、個別にスレッドあるんだ」
個別なんて怖すぎる。けど、見てみたい。
「えと、属性が『薬師』の追加で、あーうん。それでなんで【おいしゃさん】?」
薬師だから【おいしゃさん】らしい。意味が解らない。医者と薬屋さんは違うんじゃないかな?この後、お医者さんゴッコしたいってかなり変態が集まってる。然り気無く、見守り隊が軟膏の宣伝を挟んでくれてるし。
臭いを覚えたので見守り隊全員の名前はリストに登録されているので、フレンドにはなっていない。どうせ近くにいるだろうし、近くにいたら臭いで居場所がすぐに解る。
そんなメンバーが軟膏の書き込みをしてくれている。プリハ内からの書き込みらしく、プレイヤー名が『名無し』の間々に見られる。変な人たちだけど感謝だね。なにかお礼でもした方がいいかな。考えとこう。
「軟膏オークション詐欺なんてあったんだ。害獣として処分されたとか怖いよ!」
一部の人が初期の軟膏の販売数が少ない時にオークションをしていたみたい。その内の一人がオークション販売したけど、前金だけ貰って販売せず行方を眩ませたらしい。幸い、ここでも見守り隊を始めとした有志で犯人を捕まえたみたい。でも、クローの永久不使用だと影響ないんじゃないかな?その犯人は『爪無し』と今は呼ばれている。脳波判定で一人に一個しかアカウントが作れないから、この人のプレイヤー生命は終わりだね。公式以外の晒しスレッドにプレイヤー名とアバターのスクショが掲載されているみたいだし。
「見なきゃ良かったかも」
事件は知らない所で発生して、知らない内に解決していた。それに間接的にでも関係していたみたいで、モヤモヤする。僕が悪い訳じゃないはずなのに、悪いことした気分。
「んと、知り合いで二つ名いないかな」
気分転換に他の有名人を探す。現在、二つ名持ちは僕を含めて十八人。プレイヤー名で一覧があるので探すのは楽。その中に一人。
「お姉ちゃん……」
オリヒメの名前があった。
「【保育士さん】と【百合の護人】って。特に始めの何?これ、僕のせいなの?」
僕と行動を共にしていた時に付いた二つ名らしい。知らなかった。オリヒメなら喜んで教えてくれそうなのに。まあ、その時は僕がからかわれるのか。知らなくて良かったのかな?
「もう一つは格好いい名前だけど、名前詐欺だよね」
百合はそのまま百合。僕やギルメンとイチャイチャしているかららしい。護人は大剣を使った攻守に秀でているから。【御姉様】なんて候補もあったみたいだけど、紛らわしいから却下されたみたいだね。なにしてるの。え、僕のせい?
「次のスレッド見よう。うん」
そっとスレッドを閉じて、今度は生産スレッドと薬師スレッドを見る。
「やっぱり小人領が開発進んでいるんだね。パッシブが生産向けみたいだし、当然か」
ガチ生産職にさらにパッシブ。それと階位での恩恵が凄いんだね。
「軟膏に色付けたり、香り付きに出来るんだ。水薬だと味まで付けられるんだ」
レシピは載っていないけど、それは生命線なのだから当たり前だね。それでも可能性を知れただけでも嬉しい。これでさらに売り上げが上がる。
「ふふっ、試したいな」
つい笑みが漏れる。草っぽい味の水薬は飲みにくかったしね。後で試そう。出来れば苺味とか蜜柑味とかフルーティーにしたい。あ、紅茶みたいなのとか珈琲味もいいかも。
インベントリの中身を思い出しながら、妄想する。うん、蜂蜜と蜜蝋はあったね。あとは牛乳と串焼き。串焼きはやめようかな、そもそも料理を味付け用に代用出きるのかな。やっぱり試してみよう。
「他は何かないかなー」
イベント予想・希望スレッドって、みんな無責任な要望出してるし。でも、イベントかー。ないのかな?
要望スレッドにもインベトの要望あるんだね。不具合報告スレッドにも書き込んでるのはなんでだろ。
「ギルド勧誘スレッドはかなり盛り上ってるみたいだね」
ヴィーナスからは無事にギルド結成したことを聞いている。メンバーは知らないけど、十二人の大きなギルドだ。そして、ギルドハウスの候補を探している。
僕が買った土地も、あと少し遅れていたら値上がりしていた可能性がある。すでに疫病が流行った土地は売り切れていた。流石に借金しているプレイヤーはいないけど、安い所は売れている。やっぱり借金してでも買っておいて良かった。
次に見た技能検証や金策スレッドを見て特に収穫が無いことを知る。有用や変わった技能は隠す用になってきている感じ。ギルドが増えてからは、顕著に新技能の報告が減っているみたいだね。ギルド同士の対戦あるのかな?PKできるなら、GvGがあっても不思議じゃないよね。関係ないけど。
他に気になる書き込みがないことを確認して僕はプリハの大地へと足を下ろした。
「メインも気になるけど、美味しい水薬の検証だー!」
その前に魔術買わなきゃ。