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姫パーティは楽しくも楽じゃない  作者: 犬之 茜
生産と借金生活、時々メイン
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メインクエスト1終了

 世間では四月下旬よりゴールデンウィークに突入している企業があるなか、僕ら学生は昨日からようやく連休となり舞い上がっていた。

 そんな中で僕は相変わらず軟膏作りの毎日。五月に入り委託販売も徐々に売り上げが上がっている。専ら購入はゼメスを始めとした住人ばかりだけど、この一週間で四万以上を稼ぐ事が出来た。今月のノルマまで約七万。頭金を払い契約してから一週間足らずでこれだけ稼げたことに恐怖を覚える。大変だけど、生産職が一定数存在できるのはこの売り上げによる稼ぎがあるのも理由の一つだと思える。

 クエストを受けてリゼを稼いだ日々が馬鹿らしくなるくらいに稼ぐことが出来たけど、代わりに戦闘系の技能はまったく増えていない。


「ずっと生産もなんだし他の事しようかな」


 明日は樹たちと、明後日は桜たちと遊ぶ約束をしている。連休最終日はテニス部も休みらしいけど、クラスの人と遊ばないのかな?


「いい加減クエストも終らせないとね」


 ギルド設立についても情報があった。僕は興味ないから詳しく調べてないけど、大型アップデートでメインクエスト4が解禁した。それに合わせてクエスト達成が条件の一つらしいとだけ記憶している。

 その他にもアップデートの違いが現れている。初めての雨を経験したのもその一つ。ファッション装備が水で透けるのはすでに知っていたけど、戦闘中は視界は狭まるし足下は草が濡れて滑りやすくなったりと大変だった。あとは、下着が透けて見えたから急遽装飾品のマントを百リゼで購入した。

 初期ファッション装備やマントは厚手な為、透ける事はないのでワンピースの弊害がまた一つ判明した。


「雨対策はマントしかないのかな。あとは足下の安定性は……」


 素足で活動している僕としては対策は限られる。ただ、二足歩行よりも四足歩行のほうが安定していたので《獣走》を極めるつもりでいる。だけど、レベル3から上がる気配が見られなかった。


「フィールドとハジリ村はずっと四足歩行で移動してるのにな」


 すでに住人から変な眼で見られなくなったので、村の中でも《獣走》で移動している。速いし、慣れてしまったので移動にこの技能は欠かせなくなっている。だけど、それだけ使用しているにも関わらずレベルが上がらない。レベル上限は不明だけど、能力的にまだ上がりそうだと思っている。

 そして今も《獣走》を使用し、首都にたどり着いた。流石にプレイヤーも住人も多いので二足歩行に切り替える。


「まずはこっちにも委託頼んで早めの返済に目処つけなきゃ」


 住人に薬品店の場所を聞いて移動する。もちろん、首都に入る際に初期ファッション装備とマントに変更している。ワンピース姿がいないのでこれだけで変装になる。

 エンテのクエストは報酬内容から、ワンピース狙いの女性プレイヤーかレシピ狙いの生産職が受けている状態。だけど獣人でワンピース姿を見掛けることはない。なぜなら、僕と間違われるからだとオリヒメが語ってくれた。どういう意味なんだろ。


「手数料10%ですか。分かりました、とりあえず十個お願いします。え?十日間だけですか?」


 ハジリ村での委託販売は手数料5%で、委託期間が二週間だったのに対して首都だと委託の条件が厳しい。もし十日間で売り切らないと手数料だけ払うことになってしまう。ただ、人口は圧倒的に多いことを考えると口コミで拡散する速度は首都のほうが上。最初の一個が如何に早く売れるかによって明暗が分かれる。


「ブランド品はこの首都でも君が始めてだから売れるでしょうね。あとは、安定した納品を頼むよ」


 いくら人気でも、定期的な入荷と気紛れな入荷だと、品質が良くても値段が変わってくるみたい。そして首都の販売価格は手数料含めて五十リゼの上乗せとなった。

 プレイヤーなら同じ商品でも安い場所を探すことはするけど、住人は住んでいる場所で購入するので申し訳ない。借金返済したら、少し値引きするから許して。


「次は棟梁に五万リゼ払って……」


 久しぶりの首都なので色々と見て回りながら棟梁に会ってお金を渡す。早い支払いに驚かれたけど、まだまだ借金は残ってるんだよね。

 最近キンリーの所にも行ってないね。フィールドと雑貨屋とファルの家を往復する毎日だったので、クエスト報告を終えたら遊びに行こうかな。


「と、ここだったよね」


 メインクエストをこんなに放置するプレイヤーがどれくらいいるのだろう。あまりに久しぶりの族長の家なので、場所を忘れそうになった。迷ってないよ?一時間ばかり散歩しただけだよ。


「いらっしゃい」


 ドアをノックすると黒豹の獣人がドアを開けてくれた。イケメンだけど名前忘れた。


「嬢ちゃんか。無事に手紙を届けてくれました?」


 そしてイケメンは僕を覚えていた。イケメンだからか、クエストの進行上だからか。クエストだからだよね。


「はい、時間掛かっちゃいましたけど届けて来ました」

「ありがとう。今、族長に伝えるから待っていてもらえるかな」

「うんっ」


 黒豹の執事が奥に消えると、入れ替わりで黒豹のお姉さんがミルクを差し出してくれた。やっぱり名前は思い出せない。そもそも聞いていたか疑問だけど。


「お待たせ。ああ、ゆっくり飲んでからでいいから」

「すぐ飲みます‼」


 ゆっくりミルクを飲んでいる所に執事さんがやって来て優しく言ってくれたけど、忙しい族長を待たせたらいけないよね。慌ててミルクを飲み立ち上がる。


「嬢ちゃん、おヒゲが付いてますよ」


 布を取り出して口を拭いてくれる執事さんに、不意討ちだったのでドキッとしてしまった。布からは爽やかな匂いがした気がした。そんなに長い時間嗅いだ訳じゃないので、匂いを覚えられなかったのが残念。


「綺麗になりました」

「あり、がと……」


 恥ずかしくて直視出来ない。前にもこんなことがあった気がする。


「では、こちらに」

「うん」


 執事に着いていき、族長さんと面会を果す。


「よく届けてくれた、小さい仔」

「はい」

「では早速報酬を払わせて貰おうか。セシル」

「はい。こちらが報酬となります」


 インフォメーションが流れて、報酬の千リゼを受け取った。他にアイテムとかもなく残念だけど、そもそもまだメインクエストの一つ目なので妥当なのだろう。

 僕が寄り道しすぎたせいで感覚がおかしくなったのかな。


「ありがとうございます」

「こちらこそ助かった。大変だったろう?」

「いえ、大丈夫です」


 実際、メインクエストのほうがオマケだったしね。生産を覚える過程で消化できて良かった。


「それで、続いて依頼を頼みたいが良いか?」

「はい!全然大丈夫です」

「……そうか。では、これを炭鉱長に渡して鉄鉱石を九十個ばかり用意して貰うように」


『貴重品【発注書】を受けとりました』


 そんなに発注してどうするんだろ。まあ、考える必要はないのかな?


「何度も行かせて悪いな」

「大丈夫です。えと、ここに鉄鉱石を持ってくれば良いですか?」

「いや、運んで貰う必要はない。ただ、発注を依頼して貰えばいい」


 なんだかメインクエスト1よりも楽な内容だけどいいのかな?やるしかないんだけどね。


「では頼んだ」


 執事セシルと共に族長の部屋を出て、玄関まで送ってくれる。


「気を付けて行って来てください」

「うん、行ってきます」


 転移装置を使えばすぐに着くから気を付けることもないけど、心配してくれるのは嬉しいね。

 手を振ってセシルと別れる。

 さて、キンリーの所に遊びに行こう。

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