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姫パーティは楽しくも楽じゃない  作者: 犬之 茜
生産と借金生活、時々メイン
38/123

《格闘》と情報交換

 入部届けを提出してからの学校生活はそれほど特筆することもなく土曜日となった。午前中は授業だったので、久しぶりにお昼からはフルでログインするつもりで時間が経つのが待ち遠しかった。

 この数日は、ヴィーナスがいる間は街に一緒に行ってもらい、いくつかの生産を覚えることが出来た。ヴィーナスは覚えるつもりはなかったので、悪いことをしたと謝ると、護衛だから気にするなと格好いいことを言ってくれた。

 ヴィーナスとタイミングが合わない時は、日課の素振りや反復横跳びなどをしたり、モブ狩りをして時間を過ごした。お陰でギルド勧誘もなく、落ち着いた時間を過ごす事が出来た。ようやく、オリヒメが修得した《攻撃力上昇(小)》も手に入ったし、予想と違って反復横跳びの結果《脚力強化》も修得できた。


「んー、ヴィーナスが来るまで三十分はあるから、どうしよ」


 プリハ時間としてプレイヤーに呼ばれるようになった時間単位での換算なので、実際はそれほど待ち時間はない。早く到着することも考えると、それほど待ち合わせ場所の小川からは離れられない。

 現在はヴィーナスのオススメである小川の近くにあるセーフエリアにログインしたばかり。来るのが少し早かった。


「何匹か狩っておこう」


 お金は大事だしね。こっちでも金欠は悲しいし。

 横幅二メートル…この世界だと二メルスの小川を飛び越える。この小川を挟んでモブの強さや種類も変わってくる。今の僕には丁度良い、モブが一匹から五匹くらいで徘徊している。モブ一匹辺りが二十レベルより高いので、五匹は厳しいけどね。


「ブルービーと、フィールボア二匹かー。頑張ろう」


 小川からさほど離れる事もなく、三匹の集団が視界に入る。


「まずはボアを速攻かな」


 相性が悪いビー一匹に時間を取られて、ボアに背後を取られるのは痛い。ここ数日でこの辺のモブとも戦闘をしたので、それほど脅威には感じない。ついでにドロップ品から匂いも記憶済み。

 イエロービーの強化版であるブルービーは針攻撃に睡眠効果がある。

 フィールボアは素早いだけで、攻撃が突進と天に伸びた牙による突き上げだけ。


「よしっ」


 早速お馴染みの《獣走》を使用して、まだ気付いていないボアに《突進》をかます。これはボアに見習ってやってみたら覚えました。ついでに《頭突き》とかの武器【ヘッド】が解放した。順調に動物に向かってます。

 《突進》と《バックアタック強化》で甲高い悲鳴を漏らしながら、顔を地面にぶつけるボアのお尻に《毒牙》をブスリと突き立てる。穴には入れてないよ?


「ぷはっ、よし」


 毒になったのを確認しているうちに、ようやくもう一匹のボアが僕に突進してくる。ビーも飛んできた。


「《スローイング》」


 最近使う頻度が減った短剣を鞄から出して、未装備のまま道具としてビーに牽制。武器類も道具として使えるのはヴィーナスから聞いたテクニック。武器本来の攻撃力しかないけど、牽制には使える。たぶん業の補正は期待出来ないけど。

 ただ、道具として使ったら消滅してしまう。今回投げた【草鼠の骨剣】もビーの羽を掠めるだけで、投剣としての役目を終えて消滅してしまう。少し勿体なかったかな。

 ボアの突進は《跳躍》によって回避。《脚力強化》と四足と認定される《獣走》で一気に距離を広げる。

 立ち止まったボアに向けて、お返しの《突進》をするけど避けられてしまった。さすが素早いだけある。もう一度突っ込み、そして《突進》同士の勝負と見せかけて衝突する直前にブレーキを掛けて、突き出されている頭に《ポイズンクロー》を引っ掻ける。

 そこに始めのボアとビーが近寄ってきた。始めのボアは残りLF五割強、ビーはほぼ無傷。


「《つむじ風》」


 ボアに向けて魔術を放ち、ビーの攻撃を尻尾でいなし、クローを受けたボアに《スラッシュ》を放ち離脱。始めのボアよりレベルが低かったのか、残り四割となってさらに毒の追加ダメージを受けている。よし、始めにこれを倒そう。


「《つむじ風》」


 ビーの攻撃を躱しながら魔術を放つと、毒と合わせて一匹が倒れた。


「次のボアは…っ!」


 魔術を唱えているうちに準備をしていたのか、気が付いた時には遅かった。

 《突進》からの《突き上げ》で空に投げ出され、ビーの《スリープニードル》がお腹に刺さった。


「うくっ!」


 強い静電気のような痛みがお腹に響くなか、辛うじてクローを降り下ろせた。だけど業を放つまでには行かず、そのまま地面に全身を打撲。


「やば…」


 LFはまだ六割以上あるけど、眠くなってきた。

 動かなきゃと思うけど、身体に力が入らずに意識も保てなくなって僕は眠った。



   *****



「あ、起きた?」

「…………、…………んぅ?」


 ゆっくりと目を冷ますとヴィーナスが僕を膝枕で寝かしてくれていた。


「どう、なったんだっけ」


 えっと、確か戦闘中にビーの針攻撃を受けて。


「あ、睡眠になったんだった」


 あれ、でもそのままだと攻撃を喰らって目を冷ますか、一撃で死に戻るかするはず。でも、一撃で死ぬ要因はなかったし。


「アタシが間に合って良かったよ」


 そう言って、寝ている僕の頭を撫でてくる。


「ヴィーナス?」

「ログインすると、近くでリリっちが戦ってるとこを発見したから加勢に行こうと近付いたら、いきなり空に飛ばされるわ、太い針がお腹に刺されるわ、地面に落ちたら動かないわで焦ったよ」


 どうやら戦闘中に移動して、セーフエリア近くまで来ていたみたい。ログインしていきなりそれは驚くよね。パーティーを組んだままだったからペナルティーもなくて助かったみたいだけど、本当に危なかった。一匹なら、レベル差が十も離れているから問題ないけど、数の力にはそれでも危なくなるね。相性が悪いのもあったけど、やりようはあったはずだ。


「よくヴィーナスは無事だったね」

「アタシは魔術と《投擲術》で先にビーを倒したからね。リーチがないと、空の敵は厄介だしね」


 複数でも警戒範囲が地面だけか空と地面の広範囲かで状況は変わる。さらに、ボアは素早い上にビーは縦横無尽に飛んでいるので捕捉も大変。僕は相性が悪いビーを後回しにしたけど、今回はそれが裏目に出たみたいだ。どちらがいいとは言えないけどね。


「リリっち、目覚め代わりに水浴びしたら?」

「うん、そうするよ」


 服を解除していき、小川に入って顔を洗う。うん、冷たくて気持ちいい。

 砂地がある場所は少し離れているけど、ここはギリギリセーフエリア内なのでモブを気にしないで済む。プレイヤーもこんな場所までこないので気にしなくていい。ヴィーナスとは何度も肌を見せあっているので今さらだ。こっちだと、女性の裸を見ても特に変な感じにはならないしね。


「リリっち。今日はどうする?」

「んー、生産ばかりに付き合わせるの悪いし」

「だから、それは大丈夫だって。お返ししてくれれば」

「…………え?」

「ここを教えるのと全裸戦闘は約束していたしね。それをするなら、多少のことは大丈夫」

「えーと、そんな約束したっけ?」

「うん!」


 ここの招待も半ば一方的だったと思うんだけどな。でも、ここは僕も気に入ったし。護衛してもらって、僕はお返ししないのも悪いし。ヴィーナスとなら、今さらだから大丈夫かな?


「分かったよ。なら、今日はモブ狩りでいいかな?」

「え?本当にいいの?」

「なに驚いてるのかな。ヴィーナスとならいいよ。今さらだし、匂いまで嗅ぎあった仲だし」

「あはは、そっか。うん、そっか」


 匂いを嗅ぎあったで凄い恥ずかしそうにしているね。もしイタズラされたら、嗅いで仕返ししてあげよう。そうやって心で笑っていると、ヴィーナスまで脱ぎ始めた。


「モブ狩りついでに、前も言っていた《格闘》のアドバイスもしてあげるね。ついでに役立ちそうな技能も。リリっちもあれば情報交換しよう」


 そう話ながら、僕らは全装備解除状態で小川のこちら側─つまり弱いモブが出る側─のフィールドに立った。弱いと言っても街道から離れているせいか、レベル十五前後のフィールラットやグリースネークとイエロービーが徘徊している。


「まず、《格闘》は前にも言ったけど身体攻撃のみでのモブ撃破が条件だと思ってる。アタシが修得したのは百越えたくらいかな?」

「僕も蹴り上げはしてるけど、修得してないよ」

「爪とかで攻撃したらカウントしないのか、カウントしてもマイナス補正かは分からないけど。まだしてないなら、カウントなしが有力かな」

「この辺で装備なしの撃破大変じゃないかな?」

「イエロービー以外ならリリっちでも大丈夫だよ、きっと。早いから回避出来るし、クロー自体も武器としての攻撃力あんまりないんでしょ?」

「たぶんね。身体の一部だから攻撃力も耐久度も不明だね」

「あー、言っていた手入れか。手足にも耐久度あるのかな?」

「雑貨屋にハンドクリームとかも売ってたよ。ただのジョークアイテムだと思ってたけど…」


 同じく雑貨屋にあった、【爪鑢(つめやすり)】はクロー用、【歯ブラシ】はファング用、【ブラシ】は尻尾用で恐らく頭用の耐久度回復アイテム。それぞれ百リゼで十回使用出来る優しい仕様。

 たしか【ハンドクリーム】も同じ値段だったはず。それなら、蹴りを使う僕も買った方がいいのかな?


「今度試してみよう。リリっちのお父さんか雑貨屋に聞けば分かりそうだしね」

「お父さんって……」

「チュートリアルのゼメスだね」

「やっぱり」


 こんな所まで、僕のお父さん設定が広まっているなんて。


「さて、アタシがまずやるから見ていて。服着てないから、筋肉の動きわかるはず」

「うん?」


 筋肉って、アバターだし。ヴィーナスの柔らかくて美味しそうなお肉しか…………。


「ひはひよ」

「リリっちが変な事考えてたから」


 なんで分かったんだろう。


「ちゃんと見ておいてね。動きが参考になるかもしれないしね」

「うん」


 するとフィールドに向かって一礼をしたヴィーナスがモブに歩いて近付いていく。

 気配に気が付いたグリースネーク二匹がヴィーナスに飛び掛かるも、それを軽く身体を反らすだけで躱し、腰を落とし「ハッ!」と正拳突き。そのまま向きを変えて、もう一匹にかかと落としを放った。

 その後も流れるように綺麗で覇気のある技を繰り出していく。プレイヤースキルだね。空手かなんかかな?


「こんな感じだね。わかった?」

「うん」


 プレイヤースキルだってことは分かったよ。筋肉の流れは当然?不明でした。


「マナー違反だけど、何か習ってたの?」

「まあね。空手と、この数年は合気道もね。だから慣れた素手を武器にしているんだよね」

「そうなんだ」


 さすがに型なんてマネ出来ないけど、確りと手足だけで攻撃が通っていた。業を使用しないで通常攻撃だけで撃破していたし。


「やってみるよ」


 周囲を《臭気探知》を使い、少ない群れを探す。ドロップ品からも匂いを覚えられて良かった。近くにフィールラットが二匹いる。

 癖でクローとか使わない様にゆっくりと近付いていく。すると、気配に気が付いたラットが襲ってきた。


「はあっ!」


 蹴りはそこそこしていたのでタイミングを放ち一匹を蹴り上げる。


「せいっ」


 もう一匹には殴り掛かるが当たらなかった。それでもなんとか体勢を整えて、蹴りと回避中心にモブを倒す事に成功。


「はあ、はあ」


 殴る間隔は掴めるけど、ついクローを使おうとしてしまう。そのせいで命中率が落ちている。


「リリっちは獣だし、人間みたいにするのは難しい?」

「まだ人間だもん!」

「まだ、ね。この調子なら掌底とかも厳しいかな。蹴り主体で百匹いく?」

「手も使うよ」


 まだ人間だって証明してやるんだから!


「はああ!」

「次で九十に行くよ」


 あれから三時間と少し。イエロービーと、四匹以上だと三匹になるまでヴィーナスが排除してくれている。

 慣れないのと、移動しながらでこんなに時間が掛かった。だけど、殴る動作にも慣れてきて効率は上がった。修得したら《獣走》とも合わせてみたいけど、ここで失敗する訳には行かない。

 連続撃破が条件かは不明だけど、やるなら連続撃破を目指したい。


「やーっ」

「リリっちが言うと、なんか力抜けるんだよね」


 それから五匹を倒した所で、《格闘》を修得した旨が簡易ログと共に効果音が知らせてくれた。どうやら連続撃破は条件じゃなかったみたい。


「修得したよ」

「さすがリリっち。後で動きの評価も付けて動画渡すね」

「うん、ありがとう」


 僕の動きが素人すぎたからか、ヴィーナスが指導してくれる話しとなった。戦闘の様子を録画して、各動作の評価を付けて貰う様になった。ヴィーナスだから、裸なのも気にならない。今後活用出来るか分からないけど、武道を習っているヴィーナスの評価は聞いて損はないしね。


「それでクローとかは一回で修得だけど、なんで百回も撃破なんだろう」

「んー、たぶんだけど。《格闘》は全種族で修得できるからじゃない?クローは獣人限定だしね」

「確かに獣人の初期武器だもんね」


 チュートリアル以降にクローを使う人はほとんどいないらしいけど、逆に言えば獣人は一回は使用して修得していることになる。チュートリアルを受けていない人もいるけどね。

 村の中で完結するお使いクエストで資金を集めれば武器も購入できることだしね。


「リリっちも修得したし、水浴びしてから技能について情報交換しよう」

「うんっ」


 僕の間引き以外にヴィーナスは単独で近くのモブを狩っていたので、ドロップ品がかなり貯まっている。これも売りに行けたらいいな。防具の新調したいし、耐久度も気になる。


「リリっち?」

「今行くよ!」


 水浴びを終えて、草原に寝転がる。ヴィーナスじゃないけど、裸で草原に寝るのが気持ちよすぎる。また、寝ないようにしなきゃ。


『条件を満たしました。階位【ヌーディスト】を授かりました』


「え………ヌーディスト?」

「ん?リリっち、もしかして階位ゲットした?」

「なんで分かるの!」

「アタシも持ってるから」


 あー、理解。僕が貰うならヴィーナスは当然だよね。


「ソロなら役立つってか、チートだから。悦んでいいよ」


【ヌーディスト】:ファッション装備を含み、未装備状態時に全ステータス二.五倍(小数切り上げ)。ただし、状態異常耐性減少(小)


「…………チートっぽいね。使いにくいけど」


 状態異常耐性減少がなかったらチートすぎる。あっても小減少だし。完全ソロ向きかつ、無人じゃないと無理だね。


「それじゃ、階位も貰った事だし。技能の情報交換しよう。もちろん、言える範囲でね」

「うん、わかった」

「アタシから言うね。まずは、《腕力強化》だけどこれは腕立て……だいたい千回くらいすると修得ね。内容は、腕力を使う動作にプラス補正」


 《脚力強化》があったから対があるとは思ったけど、こんなにすぐ判明するとは思わなかった。

 ちなみに、サイト上で公開されているのは《攻撃力上昇》と《智力上昇》、それと《命中率上昇》の三つで、これらの修得条件も日課に組み込んでいる。《智力上昇》は【絵本】などを一定時間読むこと。《命中率上昇》は的当てで、【白石】など消失することを覚悟で木などを狙って千回当てる鬼畜仕様。当たらないとカウントしないって憶測まであるから、かなり時間が掛かる。それをもう覚えている人がいることに驚く。


「じゃ、僕からは《腕力強化》の対になる《脚力強化》だね」

「ごめん、それも修得してるよ」

「…………ごめんなさい」

「謝らないで!」


 平等性を持って交互に言う風に決めたのに、いきなりダブった。


「じゃ、獣系で」

「ごめん、リリっち。アタシは動物になるつもりはないよ」

「…………じゃあ、なんで栗鼠になったのー!」


 情報を断られるなんて思わなかった。使わなくても聞くだけでもいいじゃん。何のための情報交換なんだよー!


「獣人は可愛いからだよ。リリっちみたいな癒しがいたしね。栗鼠はランダムだね」

「獣人の中の種属は知ってるよー」

「あと、獣系を聞いたら後戻り出来そうにないしね。リリっちみたいに、その魔物と交配したくないし」


 「出来るんでしょ?」と、ゼメスが説明していたことを気にしているみたいだった。


「分かんないよ!実際まだしたことないもん!」

「あー、うん。でも、用心したほうがいいしね。他のプレイヤーもそう言ってるし」

「むー。しないもん」


 頭撫でて慰められて、余計に悲しくなってくる。


「はははっ。じゃあ、《気配遮断》は?」

「知らないっ!」

「そう怒らないで」

「怒ってないよ。その技能しらないから」

「あ、そっち」


 自分でも、今の言い方は紛らわしいと思う。


「あー、でもこれなんて言えば良いんだろ」

「どういうこと?気付かれないようにしたらいいんだよね」

「そうなんだけどね。そのまんま気配を消すって感じ。気付かれないように、さらに注意するって感じ?リリっちは気付かれないようにはどうしてる?」

「んと、大回りして背後を襲ったり、背中向けていたら一気に奇襲したりかな。それで《バックアタック強化》覚えたし」

「背後からばっかりなんだね」

「気付かれないのって、それしかないし」

「リリっちはあんまり暗殺系は似合わないね」

「暗殺……」

「簡単なのだと風下から徐々に近づいたり、物陰に隠れながら近づいたりして、さらに殺気や闘気って言う物を消す感じだね」

「忍者?」

「そうだね」


 そう言い、笑顔で頭を撫でられると小さい子にするような動作に感じられて恥ずかしくなる。


「リリっちは戦おうって気分で襲ったりしてる?」

「うん。普通だよね」


 そう思わなかったら攻撃しないし。


「間違えてはないよ。でも、その気配が相手に伝わるんだよね。武道を習っているとなんとなく分かるかもだけど。だから、戦おうって思ったら一度深呼吸して気持ちを収めてから、今日のご飯何にしようって気分で行けばいいよ」

「ご飯……」


 食べる前提で襲えばいいのかな?


「リリっちが考えてる事が分かってしまう。えと、別に食べ物じゃなくても、明日なにしようとかでもいいから。いきなり無心は大変だし」

「ヴィーナスはお姉ちゃん属性があると思う」


 なんだか小さい子に言い聞かせるような説明だし。それでも難しいけど。


「リリっちが妹属性だから、自然にそう思うんじゃないかな」

「そう、なのかな」


 妹かどうかは議論の余地があると思うけど、僕が思ったようにヴィーナスもそう思ったのかな。


「じゃあ、質問タイムにするかな。リリっちが修得してるのは生産と獣系だと思うし」

「そんなこと…………ない、はず。たぶん」

「自信ないんだ」


 他の技能もあるけど、どれもヴィーナスが修得してそうな気がする。


「じゃあ、えと投擲系の技能ってどうするの?僕は短剣投げていたら業を覚えたけど」

「《投擲術》?サイトにある《命中率上昇》のやり方で覚えるよ。だいたい二百回くらいで。ただ、戦闘中か戦闘外かで判定されるらしいけど」

「そうなんだ。ありがとう」

「短剣の業は《投擲術》の劣化版?いや、短剣は武器だしな」


 どうやらヴィーナスが気になったようなんで、《スローイング》のことを説明する。やっぱり、短剣かアイテムかで違うみたい。

 《投擲術》は石や木などのアイテム限定みたい。《スローイング》みたいに投げても消失しないってことはなく、外しても消失するようだ。《投擲術》はステータスと技能依存でダメージ判定が出るみたい。こっちのほうが劣化版に属するかもしれないけど、結局はやりよう。そのうち覚えよう。


「あ、僕のほうから一つ。《詠唱速度上昇》があるよ」


 これはヴィーナスは知らなかったようなので、それの説明を行う。これで、情報の対価はだいたい釣り合うかな?

 情報交換を終えてからは、時間一杯まで二人で小川の向こう側での狩りに勤しんだ。今度は睡眠にならなかったよ。ヴィーナスに叩かれて目を覚ましたくらいだよ。

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