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姫パーティは楽しくも楽じゃない  作者: 犬之 茜
生産と借金生活、時々メイン
33/123

ゼメス先生による公開授業

 部活見学より帰って来るなり、汗を掻いたのもありお風呂を沸かし入浴を済ませた。

 髪を乾かし、スキンケアを行っていると樹からメールが届き見てみると昨日の一件についてだったので気になって開いてみると。


「タイトルがリリ続報って…」


 まだ僕というかLiLiを熱心に追ってたんだね。本当に付き合い方変えないといけないかな。


「……えっ。なに、リリ所持属性って」


 昨日僕が捕まって檻に容れられているスクショも添付されている。どうやら、あの場にいたプレイヤーがイベントと思ってサイトにスクショと共に投稿したものらしく、内容も住民から聴いたのかきちんと和解までの流れが樹により簡潔に纏められている。今回はエイワによる干渉はないみたい。

 この件を持って、プレイヤーのマナーについての議論もなされているみたい。僕以外にも不法侵入などでトラブルが起こっており、人間領では「犯罪者」、エルフ領では「悪憑き」と呼ばれているらしい。


「そんなことより。プレイヤーによって付けられた属性ってなに。二つ名命名実行会てなに」


 まだ僕の二つ名とかはないみたいだけど、不穏な属性が羅列されていた。


『露出狂』…人前で脱いで快感を覚える者。

『幼女』…イエスロリータ。世界の宝。

『獣耳』…モフモフprpr。ただし、男は断る。

『庇護欲』…護りたい。ただ、それだけ。

『百合』…美しい女性同士の花。

『害獣(回避)』…マナー違反をしたが、和解した者。

『お漏らしっ娘』…聖水ありがとうございます。

『ドM』…困難のなかで笑える不屈の精神。

『泣き虫』…よく泣いている者。


「なんなのこれ。スクショで皆に粗相見られちゃったし、檻から出して貰った時に笑ったからってドMって!戦闘以外の事ばかりだし!」


 樹に問い質したい。でも、これってネットでの僕の評価だよね。それを樹に怒っても意味ないし、そもそも聴いたら怖いことになりそう。

 それよりも、書き込みから削除されても記憶には残るよね。『露出狂』ってそういう事だよね。それに、変態多すぎっ!


「はあ、はあ。つい叫んじゃった。……なんか、あの世界って変態しかいないような気がする」


 オリヒメや樹を始め、二つ名命名実行会とか。僕は変態じゃないよ。


「ご飯食べて、ログインしよ」


 今日は三時間くらいしか出来ないかな。変なプレイヤーにだけは捕まらない様にしなきゃ。



     ***



 眼を覚ますと、見慣れない部屋。


「ゼメスの家だっけ」


 昨日の色々な出来事と共に、最後にお仕置きをされた事や服を脱がされた事を思いだし、恥ずかしくなってくる。最近、徐々に男性に対して変な感情が湧くような気がするけど、気のせいだよね。

 同性でも恥ずかしくなるもんね。中学の修学旅行でお風呂に入った時も恥ずかしかったし。変じゃないよね。


「えと、時間ないんだった。今日はどうしよう」


 出来れば生産を覚えたいけど、ノエンさん一家に教えて貰えるのかな?昨日の今日だし無理かな。

 客間から出ると、ちょうど隣の部屋からゼメスが出てきた。広場ばかりにいないんだね。でも、チュートリアル受けたい人はどうするんだろ。第二第三のゼメスがいるのかな。なにそれ、怖い。


「なんだ、俺を見るなりひきつった顔して」

「べ、べつにっ。三人のゼメスからお尻ペンペンされるなんて考えてないからっ」


 そんなことされたら、壊れちゃう。ただでさえゼメスのは大きくてごつくて、強いのに。三人なんて無理だよ。

 昨日の一件でさん付けは止めたけど、ゼメスはそれについては何も言わなかった。


「…………なに?可哀想な目で見て」

「いや。なんでもない」


 そこで視線を逸らされるといたたまれないんだけど。


「あ、時間ないんだった。ゼメス、僕はノエンさんとこで農業教えて貰えるかな?」

「ああ。そのことなら大丈夫だろ」

「よかったー。なら、行ってくるよ!」

「まて」

「ぐえっ」


 襟引っ張らないで!伸びたらどうするの?


「何時だと思っている」

「えーと、……八時だね」

「やっぱり一般常識が欠けているな。はあ、先に勉強だな。農家は朝が早く九時過ぎには寝るらしいから、向こうには迷惑だ」

「うぐ」


 確かに正論だ。一昨日もそう思ったから散歩に出たのだから。


「勉強?」

「ああ。怠けたらお仕置きだ」

「壊れちゃうよ」

「なんだ?」

「なんでもないよっ」


 学校で勉強して、ここでも勉強なんて。この世界のルールは覚えたいけど、勉強ばかりは嫌だよ。


「ほら、部屋に入れ。このまま外に出すとまたトラブルを起こしそうだから、さっそく教えてやる」


 そのまま客間に連れ戻された。えと、常識覚えるまで軟禁ですか?


「さて、何から教えるか。LiLiは十歳以下……いや、五歳並の常識しかないからな」

「なに、僕が五歳児並って言いたいの?」

「そうだが。他人の敷地に入ったり、夜中に訪れるなんて非常識だと五歳児なら親から習う常識だからな」

「うっ」


 日本でも常識なのかな。うん、親から習うよね。そう考えると僕って非常識すぎるよね。


「それではそこの辺りから教えるか」

「あ、待って」


 僕以外にも犯罪を犯した人がいるんだよね。この世界がもう一つのリアルと思っても、どこかでゲーム感覚があった。それは他のプレイヤーもだと思う。

 そこまで考えて、ゼメスに待って貰いフレンドリストを開く。


「良かった。今日はログインしてる」


 フレンドの中で結局親しいのはオリヒメのみ。なら、オリヒメにも聞いて貰った方が良いと思いコールをするとすぐに繋がった。

 フレンドなど一対一の通信ならば、向こうの映像も同時に映る。今もオリヒメの後ろでは街並みとプレイヤーなどが行き交っており、雑踏が聴こえる。


「どうしたの?お漏らしっ娘のリリちゃん」

「うっ…」


 すでに属性とか調べてるんだね。からかわれる前に話を進めよう。ゼメスを待たせるのも悪いし。


「僕の事、知ってる?」

「ええ、害獣になりかけた事でしょ。まさか、別れてすぐにトラブル起こすとは思わなかったけどね」

「うん、ごめん」

「私に謝るなら、村人に謝りなよ。和解したとしても、ここからが勝負なんだから」

「解ってる。それでね、オリヒメにも聞いて貰いたいかなって」

「何をって、背後にいるのはチュートリアルのゼメス?」

「そうだよ。それで、この世界のルールを学ぶことになってオリヒメにも教えた方が良いかなって。僕以外にもトラブル起きてるみたいだし」


 決してオリヒメの性格を疑っている訳じゃないけど、こういう重要事項は共有した方が良いよね。


「そういう事ね。なら、五分待って。一回ログアウトするから」

「うん?」

「チャット越しでも録画出来るからね。中継した方が良いかな?一応、録画映像加工して要点も纏めてサイトに載せようかと思ってるけど。リリはどうする?」

「そっか、他のプレイヤーにも共有するんだね」


 オリヒメとの共有しか考えてなかったけど、他のプレイヤーにも共有するほうが良いよね。


「うーん。録画して纏めるのはして欲しいけど、すぐにもトラブル回避するなら中継もした方がいいよね」

「リリがそういうなら中継するけど。名前バレるけど大丈夫?」

「あ、そっか。でも、一昨日の一件が広まってるなら、こういう流れも理解されやすいよね」


 ただルールを学ぶ動画よりも、一昨日の一件を絡ませた方がトラブルを起こしたらどうなるか理解してくれるはず。もう僕の名前が一部に広まってるなら、その方が良いよね。あまり有名にはなりたくないけど、必要経費だ。


「解ったわ。複数サイトにスレッド建てて中継をリンクさせるから、やっぱり十分は待って。害獣や犯罪者のスレッドにもリンク貼るから。ついでに録画もするね。名前が広まる覚悟はしてね。じゃ、また」

「えっ」


 名前が広まる覚悟ってなに?オリヒメの手際の良さよりも、そっちの方が気になるよ。


「どうした、LiLi」

「あ、ごめんなさい。十分だけ待って貰えるかな」

「構わないが」


 ゼメスにはチャットの音声も映像も見えないから理解出来ないよね。説明しずらいけど。

 あ、チャットのカメラ設定はデフォルトだからずっと僕の顔を映すんだった。中継なら、それは厳しいよね。カメラ設定で出来たかな。えーと、チャットカメラ設定。肩越し、俯瞰、どっちがいいかな。肩越しかー。ゼメスを写しっぱなしもプレイヤー敬遠するかな。ランダムがあるからこれでいいかな。

 カメラ設定をしている間に、ゼメスが飲み物を持ってきてくれた。牛乳みたいだ。

 そうこうしていると、オリヒメからのチャットがメロディーとアイコンで着信を報せ、すぐに繋ぐ。


「リリ、準備はいい?」

「うん、いいよ」

「それじゃ、始めるから。……はい」

「えと、ゼメス。お願いしてもいいかな?」


 カメラを気にして、緊張しながら授業を始めて貰う。


「やっとか。では、五歳児並のLiLiにも解りやすく説明を始める」

「ぶっ」


 いきなり名前呼んだよ。しかも、五歳児並を強調してきやがった。あ、今普段の言葉遣いじゃなかった。


「まずは基本からだな。常識として、家を訪れるなら朝の八時から夜七時まで。それ以外は基本迷惑だ」


 なんか常識って単語が強く強調された。


「許可なく畑なり含めて侵入すると軽犯罪だ。そこから盗みを行えば害獣として処分されることもあるのは知ってるな」

「うん。処分てどんなのかな」


 あの時、住民が怖いことを叫んでいたけど。もう一度聞く必要はあるよね。


「害獣になれば、専用の服を着て檻に収用されるのは経験通りだ。首都とアネサスに限っては収用所があるがな。有罪と分かれば、牙を抜き、爪を剥ぐ。尻尾を切断。内容によって変わるがな。それでも解放されない場合は、調教して死ぬまで使役動物として扱われる。それでも足りなければ、即刻殺処分だな。使役とどっちがマシかは想像に任せる」


 えーと、それなら僕ってかなり酷い状況だったのかな?過激な発言は被害が多かった農家だけど、それだけ生活を脅かされていたんだもんね。収穫がなければ、生活が苦しくなるのだし。そこに僕が捕まれば、怒りの矛先は一気に集まるよね。八つ当たりだとしても、責められない。


「他には恐喝や殺害、詐欺や不法占拠。他にも色々あるが、理解は出来るか?それとも難しいか?」

「わかるよっ!ダメだと思うのがダメなんだよね」

「…………はあ。本当に五歳児並の表現だな」

「あう」


 そう何度も繰り返さなくてもいいのに。


「次に何を教えるべきかな。獣人については当然知ってるよな」

「えーと、獣な人だよね」

「…………三歳児並だったのか」


 泣きたい。なに、その残念過ぎて関わりたくないって表情は。


「獣人は俺ら完全な獣より進化した者と、お前ら人科と混じったダブルがいる。あいつらは獣人やエルフにも種を残すほど強力な繁殖能力があって、かつて存在したオークなんてのより質が悪い」


 えと、僕らって獣人と人間のハーフだったんだ。だから人間ぽいコスプレ獣人なんだね。

 それにオークて絶滅したのかな?


「話が逸れたな。かつての大戦で獣人とプレイヤー(ダブル)は力を合わせて以来共存していたが、それまでは対立していた。獣人が人科と結ばれるか強引に種を残さない限りはお前らが生まれる事なんてなかったのに、人科に近づいたお前らを迫害したのは獣人だ。大戦時に和解はしたが、未だに忌避感を抱く者もいる」


 なんかプレイヤーがどんな存在か知る重要なこと話してるけど、これは僕一人の手には余るね。


「そして、獣人もまたかつてはそれぞれ争っていた」

「えーと、どういうこと?」

「今の獣人達をみて何か分からんか?」

「んと、たくさんいる。あと、いろんな動物の種類がいる」

「そうだ。動物扱いは獣人の矜持から止めて貰いたいがあっている。かつて、それぞれの種属で争っていた。お前らが生まれる前にな」

「それって、ゼメスみたいな猿系や族長みたいな猫系とか?」


 ライオンは猫系でいいよね?獅子なら猫に見えないけど。


「ああ。細かく分けるとさらに多いが、基本はそんな感じで集まって暮らしていたらしいな。どうしてか分かるか?」

「わかんないよ」

「どんだけマセテいても知らないか」

「むー、どういうことかな?」

「集まった科でしか繁殖出来ないからだ。ただし、先ほども述べたように人科は関係なく種を残してくる。やつらは奴隷文化なんて作っていたし、単なる労働源や吐き溜めとして見ていたがな」


 結構人間との溝って深いんだね。そりゃ、奴隷扱いしてくる人間なんて敵だけど。


「種属も少なく、さらに拐われている中でお互いに争う愚かさを当時の属長達は気づいて、共存への道を築いた。ああ、LiLi。お前は先祖返りになったから、犬科の魔物とも繁殖出来るはずだ」


 なんて答えたら良いのかな?始めの話が飛ぶくらいの爆弾が投下された気がするんだけど。なに、魔物と繁殖って。


「なんだ、魔物との繁殖が気になるのか?」

「いや、大丈夫だよっ!」


 なんか聞いたら危ない匂いがするよ。


「そうか?では、一般的なルールと獣人の歴史は教えたが……種属の特性はまだだったな」

「特性?」

「身体の作りが違うんだ。例えば、お前なら犬としての特性で鼻が利くだろう」

「うん」

「俺は猿の特性として手先が器用だ。兎なら、尻尾を武器として扱えない。そうやって特性が異なる。それぞれの長所と短所を補って、先の大戦でも渡り合った。だから、まずは自分の身体を知って、特性を理解して伸ばすのが強くなる近道だ。不慣れでも、根気よくやれば覚えることも出来るだろうが」


 それって、種族や科によって成長のプラス補正があるって事だよね。とくに獣人はそれが顕著に細分化されてるってことかな。


「なんとなく解ったよ」

「そうか、理解出来るか不安だったが。理解出来たなら良い」


 ひょっとして馬鹿にされてる?してるよね。


「ゼメスの説明が解りやすかったからだよ。ただの変態じゃなかったんだね」


 馬鹿にされたから、これくらいの反撃はいいよね?まだ、昨日脱がされた事を覚えてるんだからね。


「…………LiLi」

「な、なにかな」


 なんか怒ってる?昨日と同じ眼をしてるんだけど。あれ?軽い反撃だったんだけど。


「あれくらいの仕置きじゃダメだったようだな」

「えーと、あのね。まずは座ろうよ」


 ゆっくり幽鬼の様に立ち上がるゼメスが怖すぎる。僕も立って逃げようとして、焦ったら椅子ごと後方に倒れて頭を強打した。


「人を怒らせる悪い子供には仕置きをして理解させる方法が獣人にはあることを教えてなかったな。実践してみようか。まずは軽く昨日の倍で」

「ごめんなさい。あの、昨日実践されたし。あれ以上されたらお尻壊れちゃうから。だからね、遠慮したいかなーて」


 倒れていた所を捕まえられ、片膝の上に乗せられた。お尻ペンペンの姿勢に抵抗する間もなくされる。


「ふむ、反省はしていないか」

「あだっ!」


 バチーンとワンピース越しに叩かれる。

 キンリーならパンツまで下げて叩いてくるけど、ゼメスはそこまではしない。ただ威力が半端ない。昨日よりもだ。


「ご、ごめん、なさ、あうっ」

「口先だけの謝罪は余計に怒らせることを学ぶ事だな」

「びゃい、こっ、こころから、ばうっ、だよ!ごめん、なさい」

「また繰り返さないように、しっかりと身体に覚えさせないとな」


 昨日よりも強く叩かれて、十発程度で悲鳴しか上がらなくなった。痛すぎるけど、まだ赦してくれない。

 十五発でたぶん昨日と同じ数だけどまだ終わらない。

 二十五発で、粗相したようだけど涙と悲鳴しか出てこない。

 三十発。昨日の倍だけど、その威力は落ちない。

 四十発、まだまだ終わらないみたい。もう、痛みで麻痺してきた。悲鳴も呼気に混じるのみ。

 五十発。キンリーが行う最低数に達した。涎も垂れるのを始めて知った。

 五十一発、1段と強い一撃に鳴いてしまう。そして、お仕置きが終わった。


「LiLi、床を掃除しておくように。俺は汚れた足を洗ってくるから、それまでにしておけよ。してなかったら、分かるな」

「…………は、い」


 最後に怒気を込めて怒る必要ないじゃん。痛みがよく分からなくなったけど、身体が思う様に動かない。あ、痙攣してるみたい。

 だけど、これ以上のお仕置きも怖いので這いながら置いていった布を掴み、床を拭く。

 濡れエフェクトで透けてるし、不快だし泣きながら掃除をした。

 中継はここで終わったが、オリヒメの録画ではこの後に裸にされてゼメスに身体を拭かれるLiLiが映っていたとかいないとか。

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