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姫パーティは楽しくも楽じゃない  作者: 犬之 茜
名残し友への捧げ物
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オリヒメ

「はぁー、つかれた」


 ため息と共に私はベッドへ倒れる。

 今日も大学の講義を終え、片道五十分を掛けて実家に帰ってきた。

 こんなんじゃ、一人暮らしなんてできないな。


「少しリリでも補給して癒されよう」


 養護教諭になる為なら講義だってしっかり聞くけど、疲れるものは疲れる。こう言う時はリリを弄って癒されるのがここ数日の日課になっていたけど、とうとう昨日パーティーを解散した。このままだと文字通り襲っていただろうし頃合いだったけど、最近はリリにセクハラしても拒絶がないくらいには調教出来ていただけにパーティー解散の反動が大きい。


「リリのアルバムとかムービーで癒されても、後から虚しいけどね」


 部屋は乱雑としており、テキストやコミックに紛れて女子小学生向けのファッション誌が散らばっている。今まではそれでなんとか気を紛らわせていたのに、リリと出会ってからは自分の欲望が抑えられなくなってきていることを自覚している。


「可愛いのが悪い」


 手にしたアルバム。リリのスクショをプリントした物を眺めながら精神疲労を回復することが、これからは日課になるだろうなと思い出と共にアルバムを捲る。

 私が『プリズムハーツ・カルテット』を始めたきっかけは正しく女の子と出会うことが目的だった。

 だけど遠目に見るだけで、なかなか声を掛ける切っ掛けが見つからなかった。パーティーを募ろうとしても、まずは自分が相手を守れる位には強くなろうと思ってソロ活動でレベル上げをしている間に、目ぼしい女の子はパーティーを組んでいた。獣人はただでさえ人口が少ないのに、中学生以下とくに小学生なんてほとんどいない。年上には興味がないしね。

 ハードで十万以上はする値段にソフトを合わせて十二万はするのだから尚更だ。複数アカウントは作れるけど、一ハードに対して一端末でしかアクセス出来ないのが問題だけど、五感同期に混線を避ける為なら仕方がないんだよね。ただでさえ、技術確保出来ても倫理観から製品にならなかったのだから。

 それなのに獣人を選んだ訳。偏に女の子には人気だって理由でしかない。それだけ、むさい男が少なくて小さい女の子を見つけやすいと思ったのに、どういう訳か同じ理由の男性プレイヤーがちらほらいた。幸い、女の子は女の子で固まるのが多いし、私が見つけた数人の小さい女の子たちも男性プレイヤーとは組んでないみたいだから良かったんだけど。でも、私自身との接触もないまま寂しくソロで活動をしていた。

 そんな折、迷子の仔犬を拾った。うん、あれは運命的だと言えるのかは不明だったね。なんせ、泣いていた理由が井戸水だし。残念系女の子との出会いがリリとのこの数日の充足した時間の始まりだった。

 初めは小学生だと思って、理由付けて全裸にさせて良い思いを二回も堪能したら運営から警告が来てびっくり。でも、行為自体は合意の上だったからセーフらしいことに舞い上がった。ただ、街中で風紀を乱すとしてログイン時間の短縮を科されたけど、私としてはリリと同じ時間に入っていたから問題ではなかった。

 それよりショックだったのは、小学生じゃなく中学生になると言う事実。でも、数日前まで小学生だったと思えば許容範囲。それよりも、言動や行動が中学生らしくないから私としては救いだった。残念属性のせいかもしれないけど。


「それにしても無防備すぎだよね」


 アルバムの写真はあどけない表情が多い。何気ない姿の他にも私を萌え殺すような仕草なども多く収められている。全裸にしての治療行為や公衆浴場での場面、嬉ション時や緊縛の姿などの特種なのも混じっている。そのうちの幾つかはA4サイズでプリントしてラミネート加工までしている。夜中にコンビニでさらに大きなサイズでプリントした物は壁に飾ってある。

 ここで自分に言い訳すると、私は変質者でもストーカーでもない。アイドル好きがするようなものだ。

 上に二人の兄がいるせいで私の周りはあまり可愛い物がなかった。ぬいぐるみなど買って貰ったけど、兄たちの物量には霞んでしまう。両親も初めての女の子として可愛いものを買ってくれていたけど、そこはしがないサラリーマン家庭。食欲が旺盛な兄たちの食費やよく泥だらけ傷だらけにする兄たちにも出費はかさばる。それに、私も混ざるようになれば可愛い物より丈夫な物を買い与えるようになった。

 それも私が中学生となり、私も少しばかり女の子らしく振る舞おうとしたけど、幼少から培った男言葉と活発さで可愛い物とはほぼ無縁。それでも憧れが強くなり、いつしか夢は可愛い女の子にも向けられるようになった。自分には可愛い物が似合わないと言う思い込みから、そうなったと自己分析をするけど、今もスカートよりズボン派だし、フリルよりシックな物を選ぶ自分に嫌気を感じる。ようは、自分がなれなかったものを押し付けるような浅はかな思考。まあ、押し付けるのではなくて見る分にはいいよね。

 それがいつしか日常からの幼女観察であり、子供向け番組の視聴でもある。そんな中、通称『プリハ』が販売されると知って、高校の時にバイトで貯めたお金を使い始めた。リリと出会ったのは、そんな私にとっての奇跡だったのかもしれない。大げさだけど、そう思う。いや、運命的を否定して奇跡というのも変だけど。だって、リアルじゃショートカットでボーイッシュな出で立ちの自分には女の子との出会いなんてない。ゲーム初期はまずは強くなろうと戦闘とクエスト消化に費やしていた。そんな中、行き詰まったクエストを前にどうしようか考えながら街を歩いていた所にリリが現れたのだから。

 それも昨日でお仕舞い。今日からは別々に行動するつもり。いつまでも私の都合に合わせるのも可哀想だし、これから学校が始まればリリだってリアルに時間が割かれるはずだしね。

 チャットでも会話は出来るのだし、いつかギルドが実装されることを願って、他の女の子を見つけることもしたい。

 ああ、でもリリは手に入れたいな。なんだろ、こんなドキドキすることなんてなかったのに。これが、恋なのだろうか。私って、女の子にしか興味が向かなかったし初恋すら経験ないけど。

 リリってどこ住みなんだろう。もちろん、聞くのはルール違反だけど。千葉県の近くだったらいつかオフ会したいな。やばい、会いたくなってきた。

 リリなら、嫌な顔しないでまたパーティー組んでくれるかもしれないけど、昨日の今日だし。お姉ちゃんの威厳が崩れるのもな。

 とりあえずチャットして、新しい女の子を探す旅にしようか。目指せハーレムギルド。


『オリヒメ』

本名:姫川(ヒメカワ)愛莉(アイリ)

(パーティー解散時点)

武器:両手剣

種族:獣人・黒猫

階位:なし

タイプ:前衛


技能

【武器技能】

《クローLv1》《片手剣Lv1》《両手剣Lv3》《盾Lv1》《斧Lv1》

【魔術技能】

 風属性:《つむじ風Lv1》

【補助技能】

《クリティカル(低)》《バックアタック強化(小)》《聴覚強化》《跳躍》《気配察知》

【生産技能】

《彫金Lv1》《採掘Lv2》

【特種技能】

《束縛術Lv2》

【常時技能】

設定数(2/5)《勘》《攻撃力増加(小)》


備考:ソロ。攻撃極振り。

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