『エンテの贈り物』
モブが消失した広大なフロアには採掘スポットが所々発光している。手の届かない場所にさえそれは伺うことが出来た。
未だに炭鉱だった頃に取り付けられた光源も合わさり、さながらプラネタリウムの様相を醸し出している。
「きれい」
「ああ。また、来たいな」
そっとオリヒメに肩を抱き寄せられ、凭れるようにしてフロアを仰ぎ見る。うん、何も言わないで。分かってるから。なんで、オリヒメの方が男らしいのかな。
「さて、何時までも見ていないで発掘しないとな」
「うん。あと、宝箱もだよね」
発掘の最奥だったからか、ここが最前線と言われていいくらいに木箱が何ヵ所かに積み重なっている。半分以上は中身がないだろうけど、それでも数は多い。
「あとは、何ヵ所か草が生えているな」
草と言うよりは苔類が発光している。それは苔自体の発光と共に《採取》可能なスポットを報せる発光でもあった。普通は何種類かランダムで採れるはずだけど、種類が限定されているなら、その物体が見えるのかもしれない。
「リリは小さいし、高い場所はキツいでしょ。宝箱と《採取》をお願いね」
「むぅ、壊さないでね」
「はいはい」
どうして他人に小さいと言われるとムッとしまうのだろうか。
確かに高い場所の《採掘》も大変な上に、僕の方が時間が掛かるから適材適所なのかもしれないけと。でも、《採掘》成功率は僕の方が上なんだよ?
「時間も減って来てるし、がんばろ」
戦闘とこれからの回収でどれだけ時間が掛かるか不明だけど、エンテの小屋まで行く時間位は確保出来るとは思う。さすがに到着後の展開は分からないけど、キリの良いところまではいっておきたい。
「右から順にでいいかな」
オリヒメは直進し、中央から始めるみたいだけど効率悪そうだ。
僕は右端へ移動して、木箱の中身を回収しながら《採取》もしていく。相変わらず、植物系の生産技能はないので未鑑定だけども。
「……ロープ」
木箱から出たアイテムに手が止まる。なにか、嫌な事があったような気がするけど思い出せない。うん、何もなかった。変な事なんて何も起きなかった。
「いちお、回収しとこう。オリヒメに見つかっても危険だし」
何もなかったけど、オリヒメには渡したらいけないと思う。いたいけな女の子を変態さんの手から守れるのは、僕しかいない。なかば義務感から【ロープ】をインベントリに入れる。
その後も順調に回収していき、左端まで移動してしまう。
「リリー、終わったら手伝って」
あれから左に向けて《採掘》していたオリヒメが、少し離れた場所から声を投げ掛けてくる。ただインベントリに入れていくよりも時間が掛かる行為なので仕方がない。
「うん、右端からやるね」
右端までダッシュで移動して、【ピッケル】を取り出す。比較的大きいスポットに向けて打ち込む。そして、ひたすら無心で次々と《採掘》していく。本来なら周囲を警戒しながらやるのだが、ボス部屋だからモブは出ないと思う。正しくは、リポップするまで時間が掛かると願う。今出られたら、もう一度勝つのは不可能なので、なるべく手早く《採掘》していく。レベルも上がったからか、早さも成功率も上がっているが、失敗する時は失敗する。
「リリ、あと少し」
見れば、オリヒメがこちらに向かいながら《発掘》している。僕よりもペースは速い。でも、きっとかなり破壊しているだろうなと思う。すでに、【紅水晶】は必要数確保出来ているので、これは僕らの為の《採掘》でしかない。
それから更に三つを掘り出した所でオリヒメと合流する。うん、かなりの収穫量になった。なんか、技能レベルも上がったし、新しい技能まで修得したし。色んな意味で収穫出来たのは嬉しかった。
「一時間は経ってないね。リポップまで時間が掛かるのか、リポップすらないのか。ボス部屋から出てないからか、クエスト中だからか。検証はあとかな」
「だね。早くエンテに届けてあげよ」
「ええ」
お互い最後に周囲を見渡してから、ボス部屋から退出する。未だに手の届かない高さには無数の光が瞬いていた。
「念の為にセーフエリアを登録してから、ダッシュするわよ」
「ラジャー」
ボス戦前にも登録したけど、念の為に上書きするようにセーフエリアを通過してから、ダッシュして廃坑を駆け抜ける。
オリヒメの記憶に頼っての移動。マップ機能なんてない、ガチのプレイヤースキル頼りの攻略は僕には荷が重いかもしれない。
途中ゴーレムやグレイポゥなどのモブが現れたけど、二人の魔術と連撃によって然程立ち止まらずに廃坑を抜け出す。まだ、蜘蛛に苦手意識はあるけど悲鳴はあげてないよ?
「ふう、レベルも上がったし楽になったね」
「ええ。ボスの取り巻きよりも散発的だしステも低いしね」
本当にこのクエストを始めてレベル上げの効率が早い。いまなら、イエロービーにも負けない自信がある。
廃坑入口のセーフエリアを登録してから『アナスル』へ戻る。まだ、二時間は余裕があるけど二人して駆け足で移動を行った。
「おう、帰ってきたか」
「ありがとうございました」
炭鉱長に挨拶を返す。これて、再び封鎖でもされたらあの廃坑にはもう入れない。だけど、ゴーレムが出てくる可能性があれば封鎖してもらわなければいけない。
「その顔は紅水晶を見つけたんだな」
「ええ、お陰さまで」
「良ければ売って欲しいが、そちらもそれを狙ってたんだし無理には言わねえ。んで、ゴーレムを発生させていた原因なり魔石なり見つけたか?」
そうだった。すっかり忘れていた。正式な依頼じゃないけど、ゴーレム出現の原因を調べることをお願いされていたんだった。
「ごめんなさい」
「魔石は見つけてないけど、ステンレスゴーレムていう親玉は倒したけど?」
「うむ、それで消えてくれればいいが……」
「えと、出てくる時は普通にゴーレム出て来てたけど」
僕の呟きにふたりが無言になる。
「やっぱり原因は魔石か?」
それからもゴーレムや廃坑について話してみたが、封鎖は続けるみたい。ただ、僕らは炭鉱長に話せばいつでも中に入れるようになった。
ゴーレムの駆逐と魔石の破壊がクエストとして発生した。魔石は長い時間をかけて鉱石に地中の魔力が蓄積して出来上がるものだそうだ。ただ眠っていることも多いが、中には今回のように魔物を発生させる原因にもなる。
魔石の流通は少ないが高価で取り引きされているけど、魔物を発生させた場合にはその魔石を破壊して被害の縮小を図るらしい。ゴーレム種は魔石を核として新たに精製することもあるみたいで、ステンレスゴーレムからドロップした核も魔石として分類するみたい。
「じゃ、頼んだぞ」
「時間ある時に来るわ」
「任せて!」
調査中の《採掘》は自由にして良いみたいだが、崩落に気を付けろと言われてゾッとした。下手に掘って崩れたら怖すぎる。ちなみに、木箱もまだあれば好きにしていいみたい。
始めに貸して貰った【ツルハシ】と【ピッケル】も餞別に貰うことができ、炭鉱長に別れを告げてからひとまず未鑑定品を鑑定し、配分後に首都へと転移する。
ドロップ品は分配せずに、木箱や《発掘》などの分配で僕が受け取ったのは以下の通り。
【鉄の槍】一本。【鉄の短剣】一本。【ツルハシ】三本。【ピッケル】五本。【スコップ】二本。【ロープ】一本。【釘】百本入り二箱。【紅水晶】三個。【銅鉱石】十三個。【鉄鉱石】十一個。【炭石】五十八個。【白石】十個。【光苔】二十一個。
かなりの収穫となった。さすが炭鉱街とあって、メインは【炭石】みたい。他に軟膏も木箱から出たけど…うん。腐ってました。塗ったらダメージ受ける毒に変わってたみたい。使わなくて良かった。
そして、鉱石よりも【ロープ】を死守出来なかった。変わりに鉱石をかなり貰ったけど、何に使うつもりなんだろ。
「はあ……」
「リリどうしたの?すぐに縛られなくて落ち込んでるの?」
「違うよ!」
「少し我慢してね。先に要件済ませてからしてあげるからね」
「もう、やだよー」
「そういって、なんか満更じゃなさそうな顔してるのは誰かな」
「して、してないもんっ」
頭に乗せられた手を払いのけて、オリヒメの前を早足で歩いていく。
そしてそのままエンテの小屋へと入る。
「きたか。なんじゃ、顔が赤いぞ」
「へひゅっ、な、なんでもないよっ」
顔を見るなりエンテがそんなことを言ってきて、慌てて頬を隠す。
「ほら、他の人から見てもリリはエロい顔してるって」
「ち、ちがっ」
後から入ってきたオリヒメにもエンテの発言は聞こえたみたいで、すごく恥ずかしい。
「ああ、なんじゃ。……ああ、持ってきてくれたかの」
スルーしないで!余計落ち込みたくなるからっ。
「ええ、集めてきたわ」
「ふむ、ならこっちに来て貰えるかの」
二人して僕を置いて小屋を出ていく。
「置いてかないでよっ」
「ふふっ」
オリヒメが嫌な笑みを浮かべたが、今は無視だ無視。
「仲が良いの。こっちに入ってくれんか」
そう言って移動した先は、小屋の隣り。小屋よりも広いが、他の家よりもこじんまりしている感じの石造りの建物へ足を踏み入れる。
「工房?」
「ああ、全盛期の頃に使ってた場所とは違うがな。ここは一人立ちして名が売れるまで使ってた場所じゃ。あっちはもうないが、こちらは昔の知り合いが残してくれていたんじゃよ」
そう語るエンテの表情は懐かしさと哀愁を混ぜたような優しくも複雑な顔をしている。
工房を見ると物置として使われていたのか、隅に煩雑とした物が積み上げられている。工房の機能を最低限に整えただけの設備だと思えるくらいに物が少ない。まあ、鍛冶技能を取ってないし、鍛冶工房の中に入ったこともないんだけどね。
「じゃあ、ここに出してくれるかの」
「私が出すわ。ただ、私は紅水晶持ってないからお願いね」
僕もインベントリから【紅水晶】を取り出して机に置く。その机には今までに集めた素材や、見たこともない素材までならんでいた。
「ありがとう。依頼はこれで終わりじゃ」
「完成品見せて貰っても?」
「ああ。ただ、すぐにとはいかんがそれでいいなら」
「うんっ、いいよっ」
これで報酬を貰ってお仕舞いなんてしっくりこない。出来れば、防具を見せてもらいたいね。
「今から取りかかるから、明日の夕方に来てくれれば出来とるはずじゃ。報酬はその時に渡すとしようかの。頑張ってくれたし、何か付けたそうかの」
「いいの?」
ここで報酬を貰ったら報酬の追加は起きていたのかは不明だけど、元から内容が同じだとしても追加と言われて嬉しくなる。なにより、親友に贈る大切な品を拒まずに見せてくれると言ってくれたことが何よりも嬉しかった。
「ああ。じゃあ、明日来てくれるかの。儂は今から相手できんしの」
「邪魔しちゃ悪いから出ましょうか」
「おじいちゃん、ありがとうね。また、明日っ」
「ああ、また明日」
エンテに見送られて工房を出る。
「私は消耗品の補充と補修が必要か聞いてくるけど、リリはどうする?」
「んーと……」
「すぐに縛って欲しいならしてあげてもいいわよっ」
「僕は落ちるねっ!」
オリヒメの魔の手から逃れるように、ログアウトする。あ、待ち合わせ時間聞くの忘れた。
そして翌日の夕方四時にログインする。リアルと時間の流れが同じなので、この時間なら夕方と言えるはずだ。
エンテの小屋まで行くが、エンテはおろかオリヒメの姿もなかった。
「工房かな?」
隣の工房に向かうと中にエンテの姿を認めた。
「こんにちは。おじいちゃん、出来たかな」
「きたか。ありがとうな。念願の物が出来たわ。これであいつに報いる事が出来たとは思わんがな」
「おじいちゃん……」
しんみりしそうになった所で、エンテが僕の頭を乱暴に撫でてくる。うー、視界が揺れるっ。
「一人いないが、早速見るかい?」
「うんっ」
まだオリヒメが来てないようだけど、見るくらいなら別にいいよね。
「お披露目するかの」
昨日素材を置いた場所には、布に隠された物が嫌でも視界に入っており、ずっと気になっていた。
その布をエンテがスッと取り払う。
「…………きれい」
華美な装飾はないが、薄く発光している白い鎧がそこに鎮座していた。アクセントに赤い宝石が着いてるけど、【紅水晶】だろうか。
優しい雰囲気を秘めた親愛の防具はなんだか、神々しくさえある。
「まだ腕が鈍ってなくて良かったわい。見た目に反して軽いんじゃぞ。防御力は言うまでもなく、火属性無効に体力回復の効果まであるんじゃ」
エンテは自分の出来映えを見て欲しいのか色々と説明してくれる。
こっそりと僕に鎧まで着せてくれた。いたずらっ子のように笑いながら。ただ、鎧に着られた感がハンパなかったけど。説明にあったように見た目に反して軽かったけど、それはステンレスゴーレムの核がそう言う効果があるみたい。
エンテがなんで出現を知っているのか不明だけど、深く考えない方がいいのだろうか。
「どうじゃ、すごいじゃろ」
「うんっ」
鎧を脱がせてもらい、再び机に鎮座した鎧をエンテは嬉しそうに撫でていると工房にオリヒメが入ってきた。
「ちはー」
「ああ、いらっしゃい」
「お姉ちゃん、こんにちは」
時間は五時。一時間も話していたみたいだ。
「おー、それが完成品なんだね。格好いいね!」
オリヒメからは格好良く見える鎧に、エンテは再び柔和な笑みを浮かべて僕よりもかなり軽く説明をしている。
「さて、暗くなる前にあいつに届けてやるかの」
オリヒメに軽い説明をしたのは、時間が押していたからみたい。日本の春先ならもうすぐ暗くなってくる。この首都ならば、七時くらいに日が暮れるので季節まではリンクしてないみたい。
「どこ行くの?」
「あやつの墓じゃよ。そうは言っても何も入っていないんじゃがな」
この首都の墓地はここからそう離れていない。外周沿いな上に墓地も近いので、この近辺は住民はあまり住もうとしないみたい。そのお陰で、小屋と工房も残っていたのかもしれない。
「本来なら小高い丘にでも作りたかったが、いくら空でも荒らされたくはなかったしの」
三人で会話しながら墓地へと向かい、奥のこじんまりとした墓碑へとやって来る。
「ここは旅の途中に死んだ物を弔うための場所じゃ。みんな遺体すら戻らなかった者たちの魂を弔う為に建てた墓碑じゃ」
周りには家族の墓地を始め、身元不明や引き取り手のいない無縁墓地などもあるが、ここはそのどちらともない人たちの墓地みたい。その親友は家族が居なかったのかな。
「って、ちょっ」
「なんじゃ」
エンテが墓碑の前に設置してある蓋を開けた。棺か何かを容れる場所じゃないの?
「知らんのか。御供えはこの中に入れるんじゃ。外に置いて置いたら盗まれるしの」
ゾンビとかになって蘇ることを避ける為に、遺体は火葬するみたいだが、他の墓地の御供えも献花以外は中に入れるみたいだと説明される。すると、対象の魂に直接届くらしい。
「ほら、あやつに届いたみたいじゃ」
中に鎧を入れてから説明してくれた後に、再び蓋を開けると中は空になっていた。蓋の中は広そうだけど、何処かに穴があるわけでもなく、本当に鎧が消えた。
「ああ、これで少しは赦してくれるかの」
エンテは墓碑に向かって頭を垂れる。
一陣の風が吹き抜けた。
「ありがとう」
その風が親友のように、エンテは謝辞を述べる。眼にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「付き合わせてしまってすまんな。小屋に戻ろうか」
「うん」
「ええ」
エンテを筆頭にオリヒメ、僕の順で墓碑に背を向けて歩き出す。僕も歩こうとし、風が撫でた。
──ありがとう。
「えっ!?」
「リリ?」
ホラーじゃないんだし、そんな現象は起きないはず。きっと気のせいだよね。
「あ、なんでもないよ」
だから僕も二人を追って墓地を後にする。
何事もなくエンテの小屋まで辿り着いたが、道中はみんなして無言だった。
「さて、頑張ってくれたお礼をせんとな」
「どんな報酬かしら」
「頑張ったから、かなり期待したいけど」
連続クエストというか、連続お使いというか。でも、大変だったので期待したい。
「お金はそうないがの」
まず受け取ったのは、五千リゼのお金。
「これは修理して貰った鞄じゃ。五十個まで物を容れられる」
次に貰ったのは、茶色のリュックのようなもの。革製のようで、丸みのあるフォルムで可愛い。バンドを外して上部の蓋を持ち上げるタイプみたいだ。
「次は迷ったが、お前さんたちならいいじゃろう。まあ、集められそうな素材を書いたから劣化版みたいで申し訳ないがの」
渡された紙切れはレシピ。正確に言えば使用素材だけが書かれたもの。内容は僕らが集めた素材以外に幾つか書かれていた。エンテの話から、先程の鎧よりも能力は低いが、入手しやすい代替品が書かれているみたい。これを元にオリジナルも作れるはず。
「最後に頑張ってくれたしな。急遽作って貰ったから、期待はしないでくれの」
最後に渡されたのはセーラーワンピースとでも言うのか。ワンピースにセーラー服の特徴を追加したような服。ただし、ノースリーブ。色は淡黄緑色。襟は白色で襟にあるラインは淡黄緑色。小さいタイは檸檬色。スカートのラインは白色。左胸にワンポイントの風のようなデザインと葉っぱ。可愛いけど、僕男だよ?
「私は似合わないだろうけど、リリ着てみて」
「え、でも…」
「ほら、早く早く」
他の報酬そっちのけでオリヒメが急かしてくる。こうなったら、しつこい。
「うー、少しだけだよ?」
観念して装備を見るが表示されない。もしかしてと、ファッションアイテムを見ると【新緑のセーラー】とあった。これじゃ、ファッションで見えませんでしたとは言えない。
「はぁ、もういいや」
なかば自棄にファッションアイテムを選択。すると、今までの衣服からワンピースへと変わった。
「か、かわいい。リリ、お持ち帰りしていい?」
「へっ、だ、だめっ」
すでに高速でオリヒメがスクショを撮っているのを尻目に、自分の姿を見下ろす。
腋が思いっきり露出してるよ。それに、スカート短くないかな?膝上15センチくらいじゃないかな。マンガみたいにスースーするって感じはなく、開放感はあるけど。
「リリ、クルッと勢いよく回ってみて」
「え?うん」
しばらく撮影会なんだろうなと思いながら、指示に従ってターンを決める。
「見えたっ!」
「へ?あ、やっ!」
まさか、パンチラを狙ったの?最低‼
なんだか、エンテは微笑ましそうに僕らを見て止めてくれないし。
「よし、次は縛ってみようか」
「ダメ‼」
「なら、その姿のままいてくれる?」
「うん、分かったから縛らないで」
「ふふ、分かったよ」
あれ、なんだか流されてる?
「ふむ、どうやら気に入って貰えたようじゃな」
「ええ。素敵なお礼ね」
なんで二人で笑いあってるのかな。
「さて、お礼はこれくらいじゃが、またいつでも遊びに来ていいんじゃよ。こんな老いぼれで良いならじゃが」
「そんな、おじいちゃんさえ良かったら遊びに来るよっ」
「そうか、嬉しいの」
「……尻尾でスカートは捲れ上がらない仕様なのか。尻尾穴が開いてる感じなんだね」
「っ、なに覗いてくるのっ」
「ほほ、楽しそうでなによりじゃな」
こうして、エンテからの依頼はこれで最後締まらずに終わった。
ちなみに、報酬で貰った鞄はランドセルみたいだとオリヒメに指摘されてからそうとしか見えなくなった。もちろんランドセル装備のスクショも撮られた。羽根つき帽子がいいアクセントになったとかいまさら誉められたし。
『LiLi』
レベル25
成長率87
種族:獣人
階位:なし
生命力610
精神力200
攻撃力80
防御力78
智力40
命中力74
素早さ79
器用さ40
運18