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姫パーティは楽しくも楽じゃない  作者: 犬之 茜
名残し友への捧げ物
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ゴーレムと可愛い生き物

 自宅に帰って、自室に入ると机にスマフォが置いてあることに気が付いた。中学までは携帯を所持していなかったので、稀に持ち忘れる。

 そのスマフォを待ち受けにすると、メール着信が来ていた。僕のアドレスを知っているのは、両親と友人二人だけ。他には契約会社かゲーム機のハード経由の運営のみ。

 友人からのメールかと思い開いてみると、ゲーム運営からの問い合わせの返信だった。


「えーと、パーティー中にタイムリミットになった場合のアイテム所有権について」


 昨日寝る前に送った回答のようだ。相変わらず仕事が早い。中には無視する運営もいるのに、今の所きちんと返信をしてくれている。


「パーティー解散されない場合はそのまま保留。でも、タイムリミット中に解散したら消滅なんだ。ちゃんと分配しないと危ないね。ヘルプに記載してあったんだ」


 タイムリミットを設定した際のトラブルは色々想定され、事前の対策やテスト期間で改善をしている。今回の問い合わせはすでに対策されていたと言うこと。ヘルプなんて見てなかったから、ごめんなさい。攻略サイトの方が細かく書かれているのでヘルプを見ていなかった弊害が現れた。攻略サイトで軽く見てなかったのは、ヘルプの説明で充分だったからか、たんに見落としていたからか。

 きちんとヘルプにも目を通そうと、自分の浅はかさを反省しながら誓う。それにしても、こんなことにもきちんと返信してくれるなんて良運営さんだね。ありがとう。


「オリヒメとは九時に待ち合わせだから、先にお風呂入ってご飯食べなきゃ」


 疑問も解決したことだし、待ち合わせ迄に済ませることを済ませる。夕飯を両親と摂り、八時には自室に入る。樹から貰ったカードゲームのパックを開封し、楽しむと同時に公式と攻略サイトを検索してブックマークをしておく。デッキを組むにも、デザインの勉強をするにも参考にさせてもらう。

 公式アプリがスマフォにもあるようで、そちらもダウンロード。シリーズやジャンルを指定して、カードのシリアルを入力したら、そちらで組み合わせが見れる仕様らしい。VRソフトも安く販売しているみたいなので、おこずかいが入ったら買おうと思っていると九時間近になっていた。


「危ない。遅れるとこだったよ」


 小学生の女の子向けのカードなのに見てるだけで楽しいなんて。没頭して時間を忘れるなんて。

 慌ててカードを纏めて、ゲームを起動させログイン。


「ふう。間に合った」

「リリ、来たね」


 今日は既にオリヒメが来ていた。時間を有効にするために二人はギリギリに入っているので、そう待たせてはいないはずだけど、謝る。


「待たせたかな。ごめんね」

「待ってないって。私こそ、分割にしてごめんね」

「大丈夫。あと、運営から返信あったけど」

「リリも問い合わせしてくれたんだね。ヘルプなんて見ないから今度から見ないとね」


 どうやらオリヒメもヘルプより、攻略サイトをみる癖があるようだ。現代っ子は分からなかったら検索する癖が強いみたいで、ヘルプを見る人は少ないみたい。昨今は取り扱い説明書が付属しないのも原因だろう。


「とりあえず、暫くはパーティー解散ないからタイムリミット来ても大丈夫だけど注意しないとね」

「うん。ちゃんと時間見ないと」


 タイムリミット制限がやけに面倒だが、いままでの自己管理出来ないユーザーのしわ寄せがこういう形で現れたのだから、どうこう言えない。僕たちも没頭したら、時間なんて忘れる可能性は高いのだから。ゲームユーザーは被害者にはなり得ないだろう。誰もが経験していることだと思う。偏見だけど。


「時間も惜しいし、さっそく行こうか」

「うん。中にもセーフエリアあれば良いけどね」


 いちいち入り口から攻略の再開は時間が勿体ない。戻らなくても、タイムリミットが来たら次回は再び登録エリアからなのだから。


「蜘蛛と鼠はパターン分かったから、速攻で片付けるよ。速足で攻略するつもりだけどいい?」

「大丈夫だよ。蜘蛛は苦手だけど、うん大丈夫」

「毎回叫びながらの戦闘だけど、そろそろ慣れようか」

「努力するよ」


 魔術を発動するのに叫んでばかりでもないけど、やっぱり生理的嫌悪で不意に現れるとパニクる。

 朝なんて挟み撃ちにされたあげく、糸で拘束までされたのだ。ネバネバしており、脱出所か行動を阻害されてほとんど動けなかった。幸い、魔術を発動するのに口さえ動けば良いのだから攻撃は出来たけど、もう喰らいたくない。暫くは糸の感触が残って不快感が消えなかった。

 オリヒメも戦闘中だったけど、絶対スクショを撮られたと思う。あのニヤけた顔はそういうことだ。


「リリ、いくよー」

「あっ、ごめん」


 午前のことを思い出していると、オリヒメはさっそくダンジョンへ入っていっていた。


「さて、左の攻略頑張るか」


 午前までに右側の攻略を終えたが、そちらは分岐が多いだけで深さはなかった。ということで、左がダンジョンの正解ルートなのだろう。きっとゴーレムもいるはずだ。

 それを踏まえてか、オリヒメは警戒を強めて左に向けて足を踏み出す。オリヒメの戦闘スイッチの切り替えは分かりやすい。だって、無意識に男口調になるのだから。

 ここまで来るのに、蜘蛛を二匹倒したけど口調や雰囲気は柔らかいものだった。フィールドよりも強いが、パターンを把握した上で対処できるレベルだから余裕があったのだろう。油断はしないけどね。


「たぶん、ゴーレムって言うだけあって物理防御が高いと思う。リリは何時でも魔術撃てるようにして」

「わかったよ」


 どのゲームでも、物理攻撃が通りにくく魔術に弱いという特性がゴーレムにはある。ミスリルゴーレムなんていたら、魔術も効きにくいと思うけどここにはいないと思う。いないといいな。こんな序盤に入れるダンジョンなのだから、もし出たら詰んでしまう自信がある。


「次は右に行こうか」


 暫く蜘蛛と鼠だけが出てくる。その間にも木箱の宝箱が四つ。相変わらず多いね。嬉しいけど。通路にも割合は少ないけど採掘スポットがある。ある程度慣れと、採掘レベルが上がった事で手のひらサイズなら二分位で掘れるようになった。


「ゴーレム」


 始めの行き止まりはハズレだったのか、宝箱はなく採掘スポットも一ヶ所のみだった。二つ目の行き止まりのここに来ると茶色い爛れたゴーレムがいた。


「マッドゴーレムだね」

「土だっけ。なら、風魔術有効かな」

「とりあえず、斬り着けて様子見をするよ」


 オリヒメが両手剣を構えて一足で接近する。マッドゴーレムは漸く右腕らしき部分を持ち上げるが、その腕を攻撃圏に入った剣で切り落とす。あっさりしすぎて、僕は茫然と見てしまっていた。


「ちっ!」


 だけど落ちた腕は泥となり、そのままマッドゴーレムに吸収され、右腕が再生される。

 素早さは愚鈍だけど、再生能力があって厄介な存在だった。その間も、反す刃で胴体を斬るもすぐさま再生。斬り落とすと再生まで時間は掛かるが、斬り傷程度ではすぐに再生するようだ。物理にはキツいモブだ。


「リリ!」

「《つむじ風》!」


 オリヒメの合図に、風の魔術を放つ。午前中にレベル3に上がった《つむじ風》は胴体を数分割にしてしまう。威力が上がったのと同時に、属性の相性が良すぎた。あっけなく光の残滓となり消えてしまった。


「リリ、チートだね」

「いやいや、相性いいだけだしっ!」


 接近にしても種族補正でスピードに差がある上に、風と土の相性によりマッドゴーレムが脅威にならない。獣人には有利だが、他の種族領のこのダンジョンはどうなのだろう。


「これなら攻略が楽だね。宝箱と採掘を回収して、早く回ろうか」

「うん。マッドだけならいいんだけど」


 宝箱を開けて、二人分かれて採掘を行う。

 マッドゴーレムだけならば楽だが、ゴーレムにも種類がある。このダンジョンにどれだけの種類がいるのか不明だけど、マッド程度ならNPCだけでも片が付きそう。


「そろそろ【紅水晶】も採れていいと思うけどな」

「レアアイテムなら、なかなか採れないよね。《採掘》レベルも心配だし」


 レベルが低くければ鉱石が破壊されるみたいだ。慎重に掘っているのに、何回か破壊してしまったので、そう考える。【銅鉱石】にしてもレベル2以上が適正レベルと思える。昨日よりも採れているので、そう推測する。ただ、場所を移動しているので採れる種類が違うだけかもしれないけど。


「失敗しても熟練度は入るみたいだし。てか、失敗したレア度高い方が貰えるんでしょ。レベル2になるの早いし」

「どうなんだろ」


 ゲームによっては、鍛冶などでも自分の熟練度以上の品を作れば経験値が多いのもある。その分失敗するが。《採掘》もそういう感じなのだろうか。それならば、このゲームにおいても生産系はそういう傾向だと思われる。生産は始め儲かるどころか赤字なのはどのゲームも同じなようだ。

 生産などのあれこれを二人で話ながらも、マッドゴーレムを倒していく。奥に行くにつれ、蜘蛛と鼠は減り、ゴーレムが増えて来た。


「《つむじ風》」


 魔術の熟練度が溜まり易くて美味しい。他の魔術も店売りを待つしかないのかな。

 マッドゴーレムが消えると、オリヒメが剣を構えた。


「違うゴーレムだ!」


 マッドゴーレムの背後には灰色のゴツゴツしたゴーレムが立っていた。ゆっくり近付いて両腕を持ち上げる。


「ロックゴーレム?」

「せいっ!」


 ロックゴーレムも動きは鈍い。オリヒメは通常攻撃を一撃入れて背後に回る。


「《インパクトアタック》。リリ!」

「うん!……《つむじ風》」


 通常攻撃はほとんど削れず、バックアタックによる業もスタンはさせられたがダメージの通りが悪かった。マッドゴーレムよりも硬いのは明らか。

 間髪入れずに放った魔術のダメージは通っているが、マッドゴーレムのように切断まではいかない。


「リリは距離を取れ」

「う、うんっ」


 そこにスタンから回復したゴーレムの振り下ろし攻撃。バックステップによりダメージはなかったが、攻撃場所が陥没していた。直撃したら、どれだけ喰らうか想像し背筋が凍る。ミンチになる想像しか出来なかった。


「うう、うぇ」

「リリっ」

「大丈夫」


 首を振り、嫌なものを忘れる。


「リリは魔術を可能な限り早く放って。ヘイトはそっちに行くと思うけど、私がスタンさせるからっ」

「うんっ」


 業によるスタンもレジストされる事があるので、僕も避けることも視野に入れて魔術を紡ぐ。

 本当に獣人じゃなかったら、ゴーレムの愚鈍な動きもキツいかもしれない。


「《つむじ風》」


 業と魔術を交互に放ち、魔術三発を当てた所でロックゴーレムは消滅。

 ロックゴーレムは2m近い身長で、マッドゴーレムよりも大きい為にこの坑道では満足な攻撃を行えなかったのは救いだ。人間でさえ、二人並んでの戦闘がしずらいのにゴツいゴーレムは一体だけでも行動に制限される。一体ずつ相手にしたらいいので、このダンジョンはまだ親切。レベル的にフィールドよりも強いモブばかりだけどね。


「私はスタンメインがいいかな。行き止まりは坑道よりも広い所あるから、二体以上には注意しないとね」

「これ、二体同時はキツいんじゃないかな」


 一体でも、討伐に時間が掛かる。しかも、行き止まりのように広ければ攻撃のバリエーションは増える可能性がある。

 今の所、振り下ろしと両腕の挟み撃ちと掴み攻撃が確認できた。どれも動作が緩慢なので避けるのは問題ないが、二体以上だとこれだけでも死角を突かれる恐れがある。


「リリは余裕でしょ。私以上に速いし」

「頑張るよ」


 オリヒメも補正のお陰か回避には問題ない。でないと、攻撃をすり抜けてバックを取ることなんて出来ない。


「とりあえず、二体以上でたらその時に」

「結構行き当たりばったりだよね」

「冒険はいつも行き当たりばったりだ。その方が面白い」

「否定できないや」


 最初から最後まで対処方が分かっているのは詰まらないと思う。だから、必要最低限にしか攻略サイトも見ていないのだし。

 でも、対処を考えるのを放棄するのはダメだよね。オリヒメの言うことも一理あるけど、僕はイメージトレーニングだけでもしておこう。オリヒメほど脳筋じゃ……いたっ。


「リリ?」

「叩いて、グリグリしないでー」


 痛い痛い。少しLF減ってるし!


「だって、リリ変な事考えてたでしょ」

「そ、そんなこと、ないよ?」

「うん、考えてたんだね」

「って、なに揉んでくるのっ!」


 頭グリグリの刑から胸揉みの刑に変わった。


「ほら、答えなさい。ん?それとも続けて欲しいのかな?」

「ちが、や、ごめんなさい」

「んんー?なに、考えていたのかな」


 オリヒメの悪ふざけがエスカレートしていく。同性でも、セクハラコードに引っ掛からないの?

 このままじゃいけないと思い、思っていたことを答える。


「んん、のうきんって、いたーい!」

「リリがそんなこと思ってたなんてお姉ちゃん悲しい」

「ごめんなさいごめんなさい。もう考えません。ごめんなさい」


 何されているかなんて、答えられないよ。痛い事から開放されたくて、ひたすら謝ると漸く胸から手が離れた。


「はあ、はあ、ごめん、なさい」

「病み付きになりそう」


 僕をいたぶって病み付きになるなんて…もう考えないようにしよう。

 そんなやり取りをしていたら次の行き止まりに到着した。


「ふわ、可愛い」


 そこには、一匹の灰色をした毛玉がピョンピョンと跳ねていた。大きさはかなり小さい。両手の平に乗りそうな大きさ。


「毛玉だね」

「モフモフだよ。可愛いよねっ。飼いたいよ」


 モフモフは正業と、オリヒメに虐められていたことなんてもう忘れた。だって、モフモフだよ?テイムが出来たらいいのに。このゲームにはあるのかな?


「リリがまた残念な子に」

「お姉ちゃんは、モフモフきらい?」

「うっ」


 たぶん、僕が潤んだ上目遣いで見つめたからだろう。顔を紅くして、背けた。


「反則でしょ」

「ん?」

「好きさ。飼いたいくらいに」


 えーと、僕をジット見つめて告白してくれたけど、あの可愛い毛玉のことだよね?


「えと、グレイポゥて名前なんだ。ポゥだけなら可愛いのに」


 再度グレイポゥに向き直る。未だにピョンピョン跳ねていて癒される。モフりたいです。


「さて、狩りましょう」

「え?」

「モブは狩らないと。それに、依頼品をあれが泥するかもしれないし」


 未だにエンテからの依頼品は一つも手に入れていない。一つは鉱石だと判明しているが、他の二つは不明のまま。だからって、可愛いのを狩るなんて。


「反対だよっ。だって、毛玉だよ。モフモフなんだよっ」

「残念度が上がってない?」


 オリヒメが引いていても、こちらは退けない。世界の宝なんだから。癒しのモフモフは。


「お姉ちゃん、どうしても狩るって言うなら僕を倒して行けばいいよっ」


 例え敵対したとしても。まあ、ここまで言って今更退くのもカッコ悪いし。


「分かったよ。私の負けだよ」

「本当?」

「ええ。あ、リリ。後ろ手に組んで見てくれる?」

「なんで?まあ、狩らないのならそれくらいは」


 後ろ手に組んでみると、オリヒメが背後に回って手を何かしている。なんか、細いもので段々動かなくなる。


「ん?お姉ちゃん?」


 腕が拘束された。それを知った時には遅かった。そのまま、身体をどんどん縛られ立つことも出来なくなった。それは午前中に分配してオリヒメが手に入れた【ロープ】だった。最後に口に何かを押し込まれた。


「ふーっ!」

「こんな形でアレな縛りをするとは思わなかったわ。魔術は厄介だから封じたけど、これはこれで」


 スクショを何枚も撮られる。癒しのグレイポゥが近くにいる状態で、こんな事をされるなんてシュールすぎる。


「ふーっ!んんー!」

「ごめんね。次は優しく縛ってあげるからね」


 そう言い、オリヒメがグレイポゥに剣を向ける。狩るつもりだと思い、叫ぶが声にならない。

 今の自分がPKをされてもおかしくない状況だとまで考えが浮かばない。


「シッ!ちっ!はああ!」


 僕のうめき声を背にオリヒメが剣を薙ぐがグレイポゥは華麗に躱す。

 いけー。ポゥ。負けるな。心で声援を送る。


「くそっ。毛玉のくせに速い」


 回避のみのグレイポゥにオリヒメが段々と苛ついて来たのか、動きが大振りになってくる。


「っくう」


 緩慢になったのを確認したのかどうか。回避のみだったグレイポゥがオリヒメに飛び付いた。攻撃力なんて皆無に見えたのに、その毛玉が栗や雲丹のように毛を逆立ててオリヒメを刺してした。細い針を何本も刺さったような状態で、LFが一割も減り、さらに継続ダメージを与えていた。


「毛玉!」


 振り払う前に、グレイポゥは針と化した毛を抜き柔軟な毛となり、その身を守る。攻守で毛の性質が替わるみたいだ。


「《ソルソニック》」


 午前中に修得した範囲業をオリヒメが放ち、それが直撃した。


「ん!」


 そのまま光の残滓となり消滅。モフモフが。


「ふぅ。小さいし、素早いし。やりにくい。お、炭毯の毛ドロップ」


 どうやらエンテの望むドロップはこの可愛いモフモフからの入手みたいだ。なんて、残酷な運命なんだろ。


「リリ、回復してくれる?」

「ふーっ!」


 未だに縛られ、猿轡をされているので威嚇する。だって、オリヒメがすっごく悪戯な眼をしているんだもん。それに回復をするなんて癪だし。


「そかそか。リリは縛られてるのが好きなんだね」


 そう言い、軟膏を取り出してお腹の傷痕に塗りつける。じわじわと回復するのを僕も確認する。


「さて、どうしようかな。このまま解いたら野性化したリリに噛み付かれそうだし。よし、抵抗出来ない位に体力を奪えばいいのか」

「グルルゥ」


 身の危険を感じる。パッシブスキルの《勘》が最大規模で警鐘を鳴らしているような気がする。


「じゃ、野生化したワンコの調教と行きますか」


 そこからは地獄だった。筆舌のしようがないくらいに。なんで警告がでないのかと恨みながら、オリヒメの手から逃げようとするが、逃げれる訳もなく。


「ふう、私も疲れた。リリ?」

「…………」


 息も絶え絶えに虚ろな瞳で世界を見る。世界はこんなにも暗くて気持ちいいのかと思いながら、タイムリミットがきた。

 リアルに戻っても、感覚が先程のままなのか疲れてそのまま眠りに落ちた。

 そして、夢でもオリヒメに良いようにされてしまった。

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