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姫パーティは楽しくも楽じゃない  作者: 犬之 茜
始めてのVRMMORPG
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ステータスとアバター

 浮遊感が消失し眼を開けてみると、そこは小さな室内だった。

 一人分の木製家具が最小限に配置してあった。その中で布が垂れた何か縦長の家具があったが用途不明。それを確かめる前に自分のステータスなどを確認しようとキャラメイク時にされた簡易説明を思い出しながら左手の真ん中三本を立ててジグザグ……稲妻のマークに空を切る。

 すると目の前30cm先に半透明のメニューリストがポップする。

 今のがメニューリストを呼び出す動作であった。この他に音声で『メニューリスト』と言えば同様に呼び出すことが出来るらしい。

 そのメニューからアイコンをひとつずつタッチしていく。するとステータス及び装備欄がマルチタスクで浮かび上がる。

 マルチタスクで複数の画面が浮かび上がり便利だが、いくら半透明でもフィールドでは視界を塞ぐので使いどころを考えなくてはいけない感じだ。

 それより、不遇種族とされた獣人はどんな感じか気になり、画面に視線を注ぎ情報を読み取る。


~以下ステータスより~


『LiLi』

レベル1

成長率0

種族:獣人

階位:なし

生命力100

精神力50

攻撃力10

防御力10

 智力5

命中力7

素早さ7

器用さ5

  運5


~以下装備より~


武器:クロー

武器:クロー

 頭:なし

胴体:なし

 腕:なし

下肢:なし

 脚:なし

装飾:なし

装飾:なし

装飾:なし


「見事に初期ステに見た通りの武器だけど……防具なし?なら、今着ているのは」


 いつもより小さな手に感じる。その手でズボンを触ってみるとモフモフとした感触が伝わってくるのだが、これは防具ではないのだろうか。


「ん?装備欄にまだリンクあるんだ。えーと……ファッション?」


 頭:なし

胴体:獣人のシャツ

上着:なし

 腕:なし

下肢:獣人のハーフパンツ

 脚:草編みブーツ

装飾:なし

装飾:なし

収納:なし

下着:幼獣の秘布


「あー、そういえば見た目用の装備か。他のゲームにもあったね。獣人のって、仲間の抜け毛だと嫌だよ。で、下着ってなんろ?」


 確かにVRMMORPGなんだし、過去にもそんな物が存在したことも知識としては知っている。しかし、実際には必要なのかは疑問に思えてならない。

 たとえ女の子がスカート装備でパンツが見えたとしても─見るつもりは、まあないが─防具に附属したらいいのにと思ってしまう。

 取りあえずファッションアイテムを含めても種類が多いものだ。さすが、二世代前の物でもスパコンと最新型AIを中心にサーバーを強化してあるだけはあるな。

 あらためてシステムの細分化や種類の豊富さに驚かせられる。αから騒がれることがあるってものだ。

 それよりも、実際に今身に付けている物が合っているか確認しよう。表示が事実なら、防具をもっていないので今後の行動にも影響してくる。

 幸いにこの部屋はログイン用の部屋かは不明だが、他のプレイヤーなりNPCもいない。そもそも一人部屋なので誰もいない状態が普通なのかも知れない。

 ファッションの画面に指を伸ばし、【獣人のシャツ】をタップすると、装備の入れ替え欄が現れる。解除をタップするとシャツが消えた。


「えっ」


 シャツの下から表れた装備は白いモッサリした胸覆い……つまりブラだ。

 しかも今の子どもの、いや女の子みたいな高い声。声変わりがようやく終わった自分はここまで高くはない。友達よりは中性的な声だけど、明らかに違う。


「はは、いやいや。このブラみたいなのも声も獣人特有のかも知れないし……」


 慌てて【獣人のハーフパンツ】をタップする。ネーミングはカッコ悪いが、日本語に合わせた分かりやすい名前だ。数ヵ国語に翻訳される予定のこのゲームはその言語での分かりやすいネームが付けられるらしい。


「そんなことよりもっ!」


 消失した下肢装備の下から表れたのは、ブラらしきものとセットなのか白いモッサリしたパンツだった。分かりにくいが、前面がスッキリしてるような気もしないでもない。

 恐る恐る下着をタップ。いくら一人部屋だとしても、いきなり全裸になってみるとは思わなかった。

 だけど、そんなことより確かめなければならないことがあった。


 「え、う、そ。…………えー!」


 思わず叫んでしまった。それは可愛い悲鳴でしかなかった。

 あるかないか判りづらい膨らみの胸。スッキリとスベスベな股関。よくここまで再現出来るなと思う決め細やかでモチッと瑞々しい肌。

 どうみても女の子だった。

 服が消えて(くすぐ)ったさで髪に触ると肩甲骨まである橙のサラサラな髪。

 全裸でテンパって部屋をグルグルしていると、先程の布が垂れた家具が足に当たった。


「もう、それどころじゃないけど」


 女の子の身体に興味が無いわけではない。だけど、今はそんな気分でもない。

 どうしよう。と、思いながらも布を捲ると、それは姿見だった。

 恐らく、始めてログインして完成した自分のアバターを視るために設置されたものだろう。

 それが悲しい現実を突き付けてくる。どう見ようと可愛い女の子でしかない。黄の瞳は大きく、日本のアニメが影響しているのが解る。

 なんとなく視点が低い気がするが、鏡を見るに小学生の女の子くらいか。いや、小六でもリアルの自分と同じくらいの女の子もいるだろう。

 ハードの生体データの幾つかを利用されているので、身長は下限一杯に下がったのだろうか。その差は10cmだったか。だが、問題は身長よりも性別だ。


「なんで……脳波読んだんだよね」


 女の子の瞳には涙が浮かんでいる。

 それもそうだろう。自分の頭は男ではなく女と認識していたと言われているのだ。

 リアルとの齟齬(そご)を大きく歪ませないように色々な規約がある。その中で、脳波利用の性別は変更など出来ない。リアルがバーチャルに引っ張られないように制限が多いのだ。

 性別以外にも性格などの指向性や脳波による精神年齢の反映がある。このゲームはそれらも取得している。もちろん、それらは大量のデータを解析し、統計を出したものに自分の脳波がどの種類に近いかを当てはめただけなので、未だに正確な情報とはならないが、かなり近いデータではあった。

 アバターとなった女の子はどう見ても小学生。他に比較対象がこの部屋にはいないが、頑張れば中学年くらいにも見えなくもない。獣の耳と尻尾以外は人間素体の一部からクレームが来そうな獣風女の子。

 それは性格や精神年齢も本来よりも低いことを示唆していた。

 一応は年頃の男の子なのだ。もうすぐ高校生なのだ。そのショックはデカイ。友達のアバターは年相応の男性だったのだから、なおさらだった。


 女の子が泣いた。そして世界から消えた。


「ログアウト」


 小さく音声入力でそう言い残し。

 

 この日、優理はログインしなかった。変わりに泣く泣く運営に問い合わせのメールを送った。


~以外データ及び視点からの情報~


『LiLi』


種族:獣人(左垂れ耳の犬型)

身長:144(リアルから-10)

体重:32(身長に合わせてのランダム)

年齢:10前後(見た目のみでゲーム設定にはない)

性別:女性(脳波による確定)

容姿:幼い(脳波によるアバター傾向)


『LiLi』


レベル1

成長率0

種族:獣人

階位:なし

生命力100

精神力50

攻撃力10

防御力10

 智力5

命中力7

素早さ7

器用さ5

  運5


~以下戦闘装備~


武器:クロー

武器:クロー

 頭:なし

胴体:なし

 腕:なし

下肢:なし

 脚:なし

装飾:なし

装飾:なし

装飾:なし


~ファッション装備~


 頭:なし

胴体:獣人のシャツ

上着:なし

 腕:なし

下肢:獣人のハーフパンツ

 脚:草編みブーツ

装飾:なし(戦闘装備に反映)

装飾:なし(戦闘装備に反映)

収納:なし(戦闘装備に反映)

下着:幼獣の秘布

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