一周年パーティーと……
「うわぁー」
すでに多くの人たちが歓談しているフロアに、大型モニターに映されているプリハの歴代PVが流れている。
会話の邪魔にならない程度のテーマ曲のBGMと、POPやタペストリーが展示されている。
スーツ姿もいれば、コスプレをしている人、ラフな格好でカメラを撮影したりメモしているのは取材記者か。
「大人ばっか」
「僕たちくらいの人、いないね」
「んー、あの人らは?」
従姉妹が指差す方向を見れば、年齢や服装がバラバラな男女が楽しそうに会話をしている。
よく見れば招待客の中でもプレイヤーは目印に服のどこかに貼るロゴステッカーが集団からは見えている。
「遅れてすいません。招待プレイヤーの方たちでしょうか? 広報部の山下と言います。まだ時間前なので少々お待ちください。他のプレイヤーの方はあちらに集まっておられます。向かって右側に各種ドリンクが設けられておりますので、お好きなドリンクをお選びください」
僕らより少し年上くらいの女性があわててこちらに来て、説明してくれた。
やはり、あの集団がプレイヤーたちのようだ。
案内された集団へと挨拶をすると、至って普通な人たちであった。
逆に僕やアリスンに注目が集まり、記者たちも集まる自体になったが、ようやくパーティー開始のお知らせにて一度解散。そう、一度解散なので、あとからインタビューがあるらしい。
開発部長の簡潔な開会の挨拶よりも、部長さんがあまり寝てなさそうなイメージの方が記憶に残る時間。
一周年を迎えられたのは皆さんのお陰であり、これからは同盟システムやレギオン実装、二つ名の正式導入などを短い挨拶に混ぜて終わった。
「それでは、各コーナーにて実装予定の紹介及び試遊が行えます。プレイヤーの皆さんには是非体験をし、感想をお聞かせください」
二つ名は特定クエストやイベント報酬をステータスや行動解析、プレイヤー投票などから得られ、組み合わせることが可能な称号システムと同じだが組み合わせはランダム。さらに住民たちにも認知される。
それによって特殊イベントや住民の反応変化なども発生するとのこと。
同盟システムは、ギルド同士が手を取り合い、同盟間でのオークションや大型クエスト、同盟同士の戦闘、レギオン戦への参戦等が可能となる。
レギオン戦はレイド戦よりも大規模となったバトルシステム。レギオン専用ダンジョンも実装される予定らしい。
「お楽しみのところすいません。LiLi様、アリスン様。広報の樋口と言います」
他のプレイヤーと交流したり、記者からインタビューされながら楽しんでいると、プリハの広報担当の人が話しかけてきた。
「少しご相談がありますので、あちらの個別ブースへ来て頂いても宜しいでしょうか?」
「はあ」
「うん」
何の事かわからないが、プリハの会社からの相談ならと、アリスンと顔を見合せてから応じる。従姉妹は保護者枠として、何故か僕らの撮影に専念している。危害があれば、割って入ると思っている。
「改めてお時間頂きありがとうございます。
お時間も限られているので、単刀直入に。
現在人気プレイヤーのフィギュア計画があり、LiLi様及びアリスン様のフィギュア化も視野にいれているので、それの許可を考えて頂けないでしょうか。
また、お二人が可愛いとの声が多く、広報での起用。もちろん、本人都合もありますので、お二人の行動パターンを学習したAIがお二人を模したアバターでの宣伝活動ですね。これの許可も考えて頂けたら。
さらに、LiLi様にはもう一点。LiLi様の子犬状態のお尻が恋愛成就に繋がると噂がありまして。これをモチーフにしたキーホルダーやぬいぐるみ、壁紙などの商品化への許可も頂けたらと、ご相談させて頂きました」
そう言って、子犬の時の僕のお尻が映ったタブレットを見せてくれる。
橙色の被毛が主体だけど、お尻は白毛。それが、尻尾と足の付け根の橙色の被毛により、ハート型になってるプリっとした白いお尻。
さらにズームされると、お尻の穴も被毛によってハートに見える。
「あ、これ知ってる」
そうアリスンにより、僕のお尻の形は有名らしいことを初めて知ることになった。
だからみんなお尻をスクショで撮ったり、若い住民の女性が拝んだりしてたんだね。みんなお尻フェチじゃなかったんだ。
「少し考えさせてください」
結局この後アリスンや家族とも話し合い、すべて許可することにしたけど、フィギュアが換装式で一部が盛り上がったとか、僕のAIが露出癖があって矯正が大変とかの話は聞いたが、それはまた別の話。
その後も交流や、記者にリードや尻尾の事を取材されたりしたが、概ね楽しい時間となった。
「これにて一周年記念パーティーを終了したいと思います。このパーティーに来て頂きありがとうございます。プリズム・ハート・カルテットは今後も様々なコンテンツやイベントを企画し、皆様が楽しめるように努めて参ります。改めて、本日はありがとうございました」
プリハと出会って一年。村を作ったり、アリスンとのペットライフを楽しんだり、リアルだと自分の性に誤魔化さなくてよくなったり、様々な事があった。
高校二年からは、女子生徒として生活を送る。
プリハでも、すでに同盟の打診も多く、村から町へと規模拡大しそうでもある。
なにより、アリスンが僕の手やリードを引いて隣に居てくれる。
これからも、リアルでも、プリハでも楽しいことが待っている。
大好きなアリスンと楽しんで行こう。