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招待の予定

『私はお母さんが有給とれたらだって。連続で取れるかわからないみたいだから、まだ招待の返事してない』


 アリスンとプリハ経由でのメールのやり取りはこれまでもしていたが、今日は運営から届いた一周年記念パーティーの招待状について話をしていた。


「うーん。僕も友達や従姉妹となら良いって言われたから、まだ予定ないけど」


 お母さんにパーティーへ行ってみたい事を伝えると、両親共に仕事だから無理だと言われた。ただ、誰かと一緒ならば行っても良いが、決して一人で行くのは反対だと強く言われた。


「いくら僕でも解ってるよ。一応……」


 学校で迷子になって樹に助けて貰った以外にも、小学生の時はショッピングモールで何度も迷子になりアナウンスされた。

 友達と出掛けていて、いつの間にかはぐれていたこともあった。

 プリハでも何度もあり、隠れ里を見つけたのは良い思い出だ。いや、レアモブに追いかけられたり、急遽レイドイベントがあったのは慌てたけど。

 そんな訳で、嫌でも方向音痴なのは認めざるおえない。不本意だけど。


『もし私も行けたらパーティー前に会う?』


 続けて来たメールに胸がドキッとなった。

 お互いにパーティー会場で会う可能性はあるけど、アリスンはいいのだろうか。

 行くということは、顔を見られる。リアルが知れる危険がある。

 リアルバレが嫌で招待を受けないプレイヤーも多いと思う。オフ会など出会いを求めるプレイヤーのほうが断然少ないはずなのだから。


『アリスンはいいの? 僕に会うこと心配じゃないの?』


 僕が何かする訳じゃないけど、アリスンはまだ小学生らしいから。パーティー会場なら複数の目がある、それでも小学生なら好奇の目で見られるはず。それなのに、僕と事前に会うかなんて。

 

『大丈夫。LiLiがヘタレ犬だし、何かあれば調教しなおす』

『や、冗談じゃなくて。怖くないの?』


 プリハの人格と違う人の方が多いと僕は思ってる。

 プリハの中の僕はリアルに縛られないでいられるから、ちょっと可笑しくなるけど、実際は変態と言われるような性格じゃない。

 他の人たちも、リアルとプリハじゃ違うはず。ロールしている人じゃなくても、柵から解き放たれていると思う。


『怖くないよ、だってLiLiだから』


 これは信頼されていると思っていいのかな。リアルと区別付いてないと心配したほうがいいのか。

 プリハで優しくても、リアルで暴力的な人はいるはず。みんな仮面を被っているはずなんだ。

 僕だって少し前まで男という仮面を被っていたんだから。


『LiLiのことは信頼してる。ヘタレで変態でバカだけど。優しいのは居て知ってるから』


 僕、貶されてる?

 いやいや、誉められているんだよね。


『ご主人さまにオネダリは多いけど、私のこと心配してくれてるのは知ってる。だから大丈夫』


 オネダリ……ああ踏んでとか叩いてとかの事かな。アリスンにして貰うと幸せになれるから仕方がない。他の人でも嬉しいけど。


『じゃあ、二人とも行けたら会ってみる?』

『うん。そしたら、首輪選んであげるね。お金ないから自分で買ってね』


 うわー、リアルでもアリスンから首輪着けてくれると思うと多幸感で嬉ションしちゃ……着替えよう。


『選んでくれるだけでも嬉しい!!』

『返信遅かったけど、もしかして漏らした? プリハだとすぐ嬉ションするけど、まさかね』


 バレてる!?


『じゃあ、また行けるかメールするね』

『え、本当に漏らしたの? LiLiってリアルでもそうなんだ。もし会えても大丈夫そうだね。プリハの感じみたいだし』


 完全に悟られてる。安心してくれるのはいいけど、ここで否定するとさらに引かれそうだし。


『もう寝るよ。会えたら楽しみにしてて』

『うん。おやすみ、またね』


 楽しみにって、首輪ちゃんと選んでくれるのかな。本当に楽しみだから、絶対に行かなきゃ。

 うーん、樹はプリハしてるけど招待受けてないよね。確か、アンケートで選ばれたプレイヤーのみだから。あとは抽選だけど、まだ受付期間だから予定はないはず。

 樹か……もしアリスンに会ったらを考えると無いね。

 僕にまでクリスマスプレゼントに何時もしてる尻尾の色違いを贈る変態だから。いや、尻尾は嬉しいんだけどね。

 今日の尻尾は白色。他に黒、茶、グレー、ピンクと五種類もある。ピンクは類似商品だけど、同じく脳波リンクで動く挿入型。

僕にこんなの贈る樹は変態だと思う。他は部員がクリスマスプレゼントでくれたけど、みんな変態だ。よく買えたね。

 そんな訳で気分に合わせて尻尾をセレクトしている。耳は学園祭にした一種類のみだけど、さすがに普段はしていない。少し重いし。


「樹がダメなら満……は彼女優先だし、プリハも1ヶ月以上ログインしてないらしいし」


 彼女が出来てから部活が少し疎かになったみたいだけど、再び真剣に取り組んでいるみたい。それからは僕と会うことも本当に減った。


「樹とはたまに会うみたいなのに」


 樹が言うには僕と会ってるのを見られたら浮気と思われるからと冗談を言っていたけど、さすがに無いよね。


「従姉妹は……聞いてみよう」


 僕の服を作ってくれたり、下着やジーンズなどパンツに尻尾穴を作ってくれたくらいだし。最近は服の作成だけじゃなく、チョーカーやブレスレットなどアクセサリーも作成してプレゼントしてくれる。

 モデルも慣れてきたけど、くれる量に対してモデルだけなのは悪いとは思っている。

 そこに東京に一緒に行こうと誘っていいのか。

 服飾の専門学校も春休みに入っているみたいだけど、僕の用事に付き合わせるのもな。


「アリスンと会ったり、パーティーには入れないと思うし」


 一緒に行っても、一人にさせる時間が多い。

 いくら姉のような存在で、僕を溺愛してる感じがしてもね。


「でも、一人で行けないし」


 迷子以前に電車、とくに地下鉄やバスに乗った経験が少ない。田舎だから、親の車か自転車が主だったし。友達の家に行くにも、中学までの友人は自転車で行ける範囲で、高校からは友達と一緒にしか電車やバスに乗ったことがない。

 料金は電子決済でよくても、乗り換えや時刻表の見方が一切不明なんだよね。


「一応、聞くだけ聞いてみよう」


 従姉妹とは良く会うけど、メールはたまにしかしない。今回は用件が用件だから緊張してしまう。


『いいよ。優ちゃんとデートだね!』


 即返信が届いた。しかも、長文。

 

『予定なら二泊三日なんだね。それなら行けるよ。ホテルだよね、同じ部屋に泊まろうね。新作用意するから、着てね! オフ会するんだよね。アリスンって、前に言ってた優ちゃんの飼い主さんだよね。会ってみたい! 着せ替えたい!! いいよね!? 邪魔しないから。あ、そうそう。近々優ちゃんの里に向かうね。始めて二ヶ月ほどレベルと技能育てたから、優ちゃんの力になるね。あ、パーティーは保護者枠ないの? 未成年も参加なら、保護者枠ないかな。あったら参加出来るのに! 問い合わせてみて。あー、はやくお泊まりデートしたい』


 二分もせずに返ってきた長文に、このテンションの高さ。

 お願いする以上はと、ちゃんと細かく伝えたらアリスンに会ってみたいと書かれていた。

 お正月の時にプリハを始めたと教えて貰って驚いたけど、プリハでも小人領で服飾の技能を育てているらしい。すでに僕用の装備を作製しているけど、技能レベルが低くて納得していないと愚痴を聞いている。

 だから僕が犬として生活しており、アリスンが飼い主であることや、里を作り今は村長だと言うことも知っているし、人化時もほとんど服を着ないことも知っている。


「とりあえずOKでいいんだよね」


 お泊まりデートって、従姉妹の部屋に泊まることもあるし、なんなら今でも一緒にお風呂入るのに。僕を昔から妹として見てくれているけど、変わらず強烈な愛情を向けてくれている。たまにそのテンションに疲れるけど、僕も従姉妹のことは好きだ。

 この旅行で少しでも恩を返せたらいいな。

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