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順調な里開拓

 学園祭も終わり1ヶ月。

 リアルではあれから学校とお風呂以外では寝るときも首輪をしている。相変わらず安心感が半端ない。

 初めは四足歩行の練習時のみ尻尾を生やしていたけど、練習後にコンビニへ行ったり散歩したりで生える時間も次第に延びて、休日では朝から夜のお風呂までは生えっぱなしになった。

 学校では学園祭以降に普段話さなかった女子たちからも話しかけられるようになったが、よく頭を撫でられたり、「お手っ」と言われてお手をしたりとクラスのペット的な雰囲気になってきている。それと言うのも、休日に首輪や尻尾をした状態で出歩いているのを目撃されたり、桜たちと遊ぶときに頭をよく撫でられたり、自分では気付かなかったが癖で食べる前に匂いを嗅ぐ姿が動物的だったりと、順調に犬らしくなってきているのを周知されているから。公園で四足歩行の練習はもう休日の風景になってきてるしね。


「はい、これにも目を通しとくれ」


 現実逃避も紙の束と一緒に浴びせられる一言で呼び戻される。


「ちょっと休憩、させて。ね?」


 ハロウィンと学園祭であまりログインできなかったプリハ。

 その間も住民やプレイヤーの頑張りで里は拡充して、住民も増えてきている。

 独立を目指す職人や、働き口や新天地を求める人。

 独創的で周囲との孤立や軋轢で居場所がない芸術家。

 貧しい親子や孤児となった子ども。

 プレイヤーや口コミで獣人領以外からも住民が移住するようになった。

 ただし種族差別や偏見がプリハ世界の根幹にあるので、そういうものがない人物だけ他領からやって来ている。

 獣人が多いが、ここはプリハで珍しく他種族が交わって暮らす地域になってきている。そこはやはりプレイヤーの存在が大きい。

 時間をかけて、一番遠い小人領からもプレイヤーに混ざって住民が僅かなりとも移住するくらいには、職人の街と言う特色も出てきている。

 使役系の住民もここは周囲に気兼ねなく運動させられる場所として、マイノリティな方々も片身を狭くする必要がない場所として、この里の方向性に合った住民が訪れるようになった。

 職人の個性はマイノリティに近いのもあって、尊重と放置と言う微妙な距離感で連携も取れている。

 資金を出しあって大型転移装置(サークル)も設置し、街道も徐々に整備しているので、さらに大きくなってきている。


「ファルさん……ファル先生に子どもがいたことにビックリしたしなー」


 薬師のファルは【製薬】の技能を授けるキーパーソン。自堕落そうにも見える、一見モテ無さそうな鼠の獣人男性だった。

 それが今回、その息子を名乗るディックが先生の手紙持参でやって来た。今では【製薬】部門の顧問で趣味の薬草研究の傍らに薬草園の管理も行ってくれている。

 住民の繋がりやプレイヤーの口コミでそういう風にこの1ヶ月、代表となる人物が決定して整備・開発・生産などが行われている。

 

「代表たちの名前と里所属……大臣みたいなものと考えていいのかな」


 基本は個人・団体での活動だが、どの街も自助組織として各街にも所属団体として職業事などに別れ、代表などはある程度街からも運営に関わる。この『ましゅまろの里』はさらにその特色が強くなりそう。現在決まってきている書類に目を通す。


『以下の人物を里運営の相談役及び自助組織代表として任命する。


【建築】:ラニア/獣人男性/初期移民団の一員で里の骨子にも携わる。この1ヶ月で【美術】を修得し、さらに腕が上達。次は【ダンジョンマイスター】を目指すとの情報あり。


【農林業】:ランファ/エルフ女性/エレメンタラーの住民で仲良くなったプレイヤーのエレメンタラーの女性と移住。現在、そのプレイヤーと恋人同士として同棲している。


【製薬】:ディック/獣人男性/薬師ファルの息子でその腕は確か。薬草研究が趣味で、里所有の薬草園(LiLiの個人資産でもある)の管理人にも起用される。研究に没頭すると餓死の危険あり!!


【装備】:アルカとケミナ/小人女性の双子/【鍛治】・【彫金】・【魔装】・【裁縫】のいずれも修得している。小さい女の子が大好きな変態姉妹。露出装備の製作において右に出る者がいない。


【料理】:ヴェレーノ/人間女性/新たな食材を求め各領を放浪していた熟女。LiLiの【ドジっ子】による料理の噂を丁度訪れていた時に聞いて研究材料としてやって来た。LiLi食材の事を知りいつか調理したいと思っている。


以上、人格に多少の問題が散見されるが技術が著しく高く、コミュニケーション能力・管理能力も高い人材。

また、警備部門を移民増加に伴い新設し募集中。以下の人物を警備部長として任命する。


【警備】:キケルス/獣人男性/初期移民団体の一員。孤児に護身術やサバイバル術を教える傍ら最初期より里の警備に尽力してくれた常識人。


また、各部門補佐の任命は代表が執り行う。

運営に関する文官の発掘を継続中。』


 要約するとこんな感じで僕がいない間に決まっていた。いや、ログインしない状態が数日続いているのに、急激な移民増員で早く決めないといけなかったから仕方ないんだけどね。僕が不在時の全権はキンリーに委譲してるし。だけどね?


「すっごく、身の危険を感じる」


 とくに装備関連と料理。双子からは献上品として線と点で作られたビキニアーマーが贈られている。胸の先っちょの直径三センチくらいの金縁赤地の円環型の胸当てと下の線に沿った白のパールのティーバッグに腰に透け透けな白のパレオ。このパレオもお尻の半分も隠れないし、腰の後ろにしかない。


「こんなの、ドキドキしちゃうよ」


 え、嫌じゃないよ。嬉しいけど、素直にそう言うとね。いや、ドMなのはプレイヤーには周知されてきているみたいだけど、まさか住民までとは。そう、僕だってこの1ヶ月でドMなのは自認したよ。首輪に尻尾生やして安心感に包まれるからね。犬扱いも素直に嬉しいし。

 でもね、オリヒメと同等の性的な視線でいつも双子からは見られてるからね。オリヒメと協定を結んでるともキンリーが言ってたし。そのキンリーにしたって、ログインしないで仕事放棄していた腹いせなのか、ヴェレーノにLiLi食材について教えたらしい。

 本人は逸材を率いれるための取り引きとか言っていたけど。それからは、食材として見られてるからね。味見されたけど、流石に包丁もって捌こうとするのは、ね?


「たしかに、僕が食材になった料理には興味あるけど」


 死んだら食べられないじゃない。デスペナ受けても料理ってのこるのかな?

 そもそも【蜜体】の影響は人化時だけだけども、それは体液のみなのか。肉や内臓に骨や血までに及ぶのか。興味はあるけど、進んで死ぬのはね。アリスンも【蜜体】の階位を授かってるけど、他人には味あわせたくない。ペットの特権だもん。

 影響のない犬妖精時も仔犬化では犬鍋、正常時の仔牛サイズは純然たる肉やホルモンとして見られてるからね。いつか捌かれそう。


「性的な危険と食材的な危険。キンリー、絶対楽しんでる」


 他の代表も一癖も二癖もある。唯一まともそうなのが警備部長のキケルスのみって。

 それでも皆リーダーの資質もあるらしいし。

 ある意味、この里の特徴にピッタリの人材だ。よく見つけたと思いながら資料に承認をサインする。

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