ましゅまろ始動②
さて、一応の班決めと役割分担。そして特産品になるものを決定した。
「じゃあ、開拓するのに区画計画もするってことで良い?」
箱庭ゲームなどはやったことがあるが、本格的な知識などない。ここも皆の力が必要。
一人で出来ることなんて少ないよね。
「チビ、もっと自信持って言いな。あんたは長なんだからね。それで、区画を考えて開拓したほうが後から大変な思いもせずに済むしねぇ」
思い付くままに開拓したら、それこそ混沌として何処に何があるか解りづらいし、里自体が迷路になったら不便で仕方ないもんね。
「そうだね、皆の意見聞かせて」
改めて今の里と言うか僕の土地はこうなっている。
上流となる北側に氾濫防止の堤防となる幅五十メートルもの高台を土地の端まである長さ一キロ。
それに添うように五百メートル×七百メートルが放牧地。川側に防風林? 防水林? となるように根を張り土壌を支える役割を期待して果樹園。
厩舎の側となる場所に鍛治用の石造りの建物と本拠地となる木造二階の家。併設して露天風呂。川側にも露天風呂。余っている場所に買い取りで余った草花を花壇に植えている。
家の南側を薬草園にして川側を温室と毒草園。東屋を中間に建てて眺められるようにしている。
薬草園の一部を観賞用の花壇と中央に慰霊碑。毒草園は薬草園の半分もないので、余っている場所に温室があって畑も隣に作られている。畑は家畜用の物も分けて栽培中。牧草だけだと、栄養が不安だったし、買い取りで家畜用の麦やトウモロコシがあったからね。
庭の一部は原っぱで僕やペットたちの遊び場。ドッグランとも言う。
「孤児院は建てるのよね」
先ずは里になるきっかけとなった孤児たちの生活の場。何時までも僕の家だと手狭だし、増える可能性もあるからね。
これについては棟梁とも話していた。
「うん、それは僕の家の前の土地を少し譲って建物と畑。あとは遊び場を作る予定だよ」
プレイヤーが持っている土地。売却は可能だが、一部譲渡が不明だったのでそれだけは棟梁に聞いていた。答えは可能。無料で譲渡や一部の販売。貸地なども可能だが、余った土地持ちのみの当然の権利。街中で建物だけ購入した場合は土地は借地、土地も購入していたら、部屋の一部の貸部屋など結構設定が細かいのを知った。
それから話し合いは紛糾した。
それぞれ思うことを話して、利便性や実用性を考慮して。こういうのは皆好きなのかな。自分たちの街作りだから真剣だが、楽しそう。
決まったことは上流となる北側の高台を伸ばして里を見下ろせる展望台の建設。
特産品用に放牧地と厩舎を拡充して、縫製工場や寮や他の生産工房の生産区に。職人向けの飲食店も近場に作る予定。
里長の家の近くに孤児院と畑。遊び場は住民も利用出来るように広い運動公園に。孤児院の中に治療院も併設して、工房の人達も来てもいいが孤児院運営が優先となる。
孤児院向かいに『神癒隊』ギルドハウス、孤児院横に『Fair Maiden』のギルドハウス。運動公園周囲にその他プレイヤー向けの販売地。
慰霊碑に僕の社を建てて《守護獣》信仰にもなるようにされた。
慰霊碑前に転移装置を置く予定。その目先に大広場として待ち合いスポットに。僕の要望で広場中央に混浴露天風呂。別に裸見られたいとかじゃないよ。里の特産の一つである温泉の宣伝用に。もちろん脱衣場など作って入れるようにも。間欠泉があれば、それが露天風呂代わりになるけど。ちなみに僕の家の露天風呂は混浴だし、ペットも一緒に入れるようになっている。
広場を囲むように行政施設とダンジョン入り口、医療施設に一等地用の商店が入れる土地、その先に大通り。行政施設の裏手に『神護隊』のギルドハウス。
行政施設は戸籍登録、土地販売と管理。和風の部屋に僕の像を置いてここでも《守護獣》の信仰を促すと共に、僕の製作した薬品をここでのみ売るようになる。地域限定のLiLiブランド。
ダンジョンの入り口は成長と共に増やせるが管理は大変になるらしい。先ずは手の開いた大工の皆さんやギルドメンバーで成長させていく。
大通り入り口は屋台や露店の為に開けておく。
大通りから運動公園までが商業区。宿屋や中小の商店。
大通りから南側が居住区。小さな公園も幾つかと大通り近くに学校が出来るように土地の確保。
居住区の南や川側は畑とする。
各区に井戸と公衆浴場となる温泉をつくる。温泉ははっきり言えばプレイヤー向けだからね。獣人は熱いお湯が苦手で水風呂が基本で、ぬるま湯に入るのが三割弱らしい。獣人用に薬湯を流行らせたい。冷泉は出ないよね、近場で泉質変わらないと思うし。
「それじゃあ、これで区画整理しながら開拓していこう」
いくら三ギルドが手伝ってくれるとしても、何れだけ掛かるかは解らない。
計画であって、主要施設などを建てるのにも時間は掛かるし、先ずは自分たちの生活を整えて試行錯誤していかなきゃならない。
これから動き出す『ましゅまろの里』に不安は大きいけど、楽しみも大きい。
僕は一人じゃなく、みんなと楽しく暮らせる里になるように頑張っていかないといけない。名ばかりの長でもいいけど、それは皆が望んでいないし、こうして皆の笑顔とやる気を見て自分なりに頑張っていきたい。子どもたちがいつも笑顔でいられるように。僕が僕としていられるように。