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里名付けと今後

『住民の定住が確定しました。定住数により"里"に認定しました。里の名前を決めて下さい』

『"里"となった為、土地の一部開拓が可能となりました。詳しくは土地販売人に確認して下さい』


 そんなインフォメーションが流れた。

 つい、間抜けな声が漏れたけど誰も気にしない。いや、恥ずかしいから気付かなくていいけど。


「里って、隠れ里みたいな……訳じゃないよね。えーと、どうしよう」


 とりあえず皆には家や周囲の確認に行って貰った矢先だったので、今は僕一人。少し離れた場所には何人かいるが、呟きを聞かれる距離じゃない。

 どうしたらいいのか解らず、インフォメーションのログを眺めて土地販売人の文字に目がいった。


「土地の販売って、たしか棟梁だったよね」


 棟梁は今この土地にいる。これは、偶然なのか必然なのか、出来すぎなことのように穿って見てしまう。

 確かに棟梁はあちこちに赴いて建築仕事をしているけど、今は首都とこの地のダンジョンの二ヶ所を拠点にしているのだから。


「それでも、聞いてみなきゃだよね」


 里についても、開拓やその開拓地の購入費用など不明な事が多い。

 だけど、それも急いで決めないといけない事も多いので少なからずパニックになってきている。

 戦闘と救出が思ったよりも長引いたので、プリハ時間で残り一時間半程で強制ログアウトになってしまう。やることが多いのに、許された時間は短い。短すぎる。夏休み含めて今まではフルログインすることなんてほとんどなかったのに。

 とりあえずは棟梁に話を聞かないと始まらないので、捜すとすぐに見つかった。


「棟梁」

「おう、嬢ちゃん。移住者おめでとう。ま、ここからが大変だろうがな」


 家を出てすぐに棟梁と移民の一人となった大工のラニアが立っていた。


「リリ嬢。棟梁から独立が許されました。これからよろしくお願いします」


 ラニアは晴れて独立を許されたみたいで良かった。これからを考えると大工が住むのは助かる。


「うん、これからよろしくね。それで、里になるの?」

「ああ、個人だけの土地じゃなく住民が増えるならな。まだ里として、しっかり認められてねえ。これから転移装置を設けて、住民が増えて開拓してようやく村として地図に載るようになるな」

「そ、そうなんだ」


 里や村の定義がいまいち解ってないけど、プリハでの規定があるんだね。


「先ずは今来た人たちの生活を安定させたらいい。それから開拓するなり、そのまま里としてひっそりといくかだな」


 これからを考えるなら開拓は必要だと思う。プレイヤーや大人の住民だけならスローライフも有りだと思うけど、孤児はこれから大人になっていく。それなら、様々な事ができる環境が必要になってくる。さらに、これからも孤児が出たら受け入れることも決めたんだから、土地は足らなくなる。


「開拓はしていくつもりだよ。孤児をこれからも受け入れると思うし」

「リリ嬢、必要なことは言ってください。この地に住むんですから協力します」

「俺も仕事としてだが手は貸すぞ。ま、ダンジョンを使わせて貰うんだ。若手の実地研修も兼ねて格安で請け負ってやれる」


 すぐに家は必要だろ? と棟梁は僕の頭を撫でてくる。いつものダンジョン狂いの暴走棟梁じゃなく、初めにあった頃の頼もしさが見られた。


「お願いします」


 それから話をして、開拓は棟梁を含めた大工も手を貸す事は可能だが、人件費などが発生する。移民たちだけなら個別に相談が必要。同じ土地に住むから、開拓は住民にも関わる事業だけどタダ働きは不興を買うので、話し合いが必要。

 開拓後の土地の売買は棟梁が管理や相談も出来るが、最終的な権限は里長の僕の許可が必要。

 そう里長になるらしい。


「なんにせよ、先ずは里の名前が必要だな。改名なんて大変だし、混乱を生むからよく考えた方がいいんだがな」


 じっくり考えたい。だけど時間がない。

 細かい事は名前を決めないと進められないらしく、なにかと名前を決めてからと言われる。

 リアルで翌日に回したいけど、住民のことを考えるとやはり少しでも先に決めたい。思考がグルグルと周り軽いパニックのまま、やってしまった。


『里の名前が決定しました。これよりLiLiの里から、゛ましゅまろ゛の里になります。

※里の改名には課金アイテムが必要となります』


 パニックになって、甘いものを食べて落ち着きたいと思った。真っ先にマシュマロが頭に浮かび、何を思ったかそのまま平仮名で里の名前にしてしまった。改名って課金が必要なんだね。うん、変えられそうにないや。


「嬢ちゃんみたいに、可愛い名前にしたんだな。ああ、もう里長なんだから、これからはLiLiとちゃんと呼ばなきゃならんな」

「別に嬢ちゃんのままでもいいよ」


 もっとマシな名前もあるのに、ましゅまろって。いや、マシュマロ好きだけども!


「開拓もだが、その後を考えて計画した方がいいな」


 棟梁とラニアによって、まず優先度を設けていく。


・住民の生活の維持。衣食住の安定供給と向上。

・里の法律作り。

・首都から離れているので、転移装置の設置。簡易転移装置(ポータル)よりも大きな物。

・開拓計画と特産品の検討

・開拓と人手の確保。

・区画整理と家屋建築。護岸補強。

・土地の譲渡、販売。


 他にもあるけど、目立つ流れはこんなものかな。

 開拓しないと畑など拡げられないし、人がいなければ兵士などもいない。今は、孤児を中心とした最低限の人しかいないのだから。

 法律もあって、転移装置か街道整備をして、孤児院以外の住民─プレイヤーハウスを除く─が住んで仕事や役割を経て里から村となり、マップに反映される。

 パニックっていたせいで、結局そう話せなかったが大筋は決まった。これを他の人たちにも話して、みんなで開拓計画をしていかないといけない。

 まずは日常生活の担当をしっかりと決めよう。

 大雑把な役割わあるけど、これからは共に暮らすのだから決め事も確認しないとね。

 とりあえず、あと少しで強制ログアウトになるから急いで数日はキンリーたちに任せるしかない。畑など入って大丈夫な場所と調薬室や薬草園など入られたら困る場所を説明してしまおう。

 あとは、見守り隊の神慰隊と神護隊にオリヒメたちにメールしておこう。

 明日にでも各ギルド含めて住民たちと会議だ。

 ログアウトしたら、自分なりに考えてもみなきゃ。里長なんてやれるか不安だけど、孤児の責任は取ると決めたんだ。やれることをやろう。

 今日から゛ましゅまろ゛の里の始まりだ。

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