深夜会議(1)
時計が深夜三時を回っても、三人の会議は終わることがなかった。
神野実香が共通の友人であることから、話はとんとん拍子に進み、裕也が自分たちの住む地域から離れていないことも分かった。
「そんな近くに住んでたのかぁ。マジ、びっくりだよなー」
完全ため口に発展しているのは健太だ。
「これで遠方だったら、どうにもお手上げでしたね」
冷静に、それでいてどことなく距離が縮まった感じの重吾である。
「一応免許もあるから、車が必要なら出すよ」
中学生にため口で話されてもたしなめることもないのだから、話しやすい事この上ない。
「それで、何か手がかりになりそうなことはないかなぁ?」
腕を組んで目をつぶりながら、考えているのか寝ているのか分からない重吾が、その質問に答えた。
「それが……相手の車はピンクで車体にシールが貼ってあったのと、ナンバーがこの辺でよく見る漢字がついていたんです」
「え! ナンバーって、ナンバープレートのことかよ!」
ナンバープレートの話は聞いてなかったと、健太がいきり立つ。
「この話の流れからしたら、ナンバーがナンバープレート以外のはずないだろう。変なヤツだな」
「そうじゃねーよ! オレはナンバープレートのことは聞いてないって言ってるんだよ」
「言ってないから、当たり前だ」
健太がいきり立てばたつほど、重吾が冷静になる。その冷静さが余計に腹立たしい。
「ナンバープレートなんて、ものすごく大事なヒントじゃないか!」
「例えヒントになったところで、漢字だけしか分からないんだから、ヒントにもな
らないだろう。それに今言ったんだから、同じじゃないか」
「……うー……。そうだけど、うー……」
やたら悔しそうな健太だ。
「すごいな。そんなことまで分かるのか。他にはないかな」
「後は……犯人は、ひとりが小太りで……二人いました。一人は運転してた」
「へぇ……。その犯人の容姿は分かるかい?」
「それがぼやけてて……。蜜芽がびっくりしてるからだと思うんですが。蜜芽の見ている映像が流れてるんで」
「流れるってどういうことだよ」
これも始めて聞いた話だと、面白くなさそうに口を挟む健太である。
「流れるって言うのは……健太、顔を左右に振ってみろよ」
言われて、左右に顔を振る。
「どうだ? 景色がしっかり見えるか?」
「そりゃぁ、多少はぼけるけど」
「それがもっとハイスピードになった感じだよ」
そう言われて納得したような、してないような表情の健太である。
「はぁ~。すごいなぁ。本当に君たちはすごいねぇ」
裕也が驚いたように言うが、当の重吾にしてみれば当たり前のことなのだ。
「健太もおかしな夢を見てるそうですよ」
「おかしな夢? どんな夢だい?」
「今回のことと関係があるかどうか分からないよ」
急に話を振られた健太はしどろもどろだ。
「接点があるかどうかは分からないだろうけど、それでもいいんじゃないかな。どんな小さなことでもかまわないと思うよ」
「そうだよ。一週間も見続けてるんだから、自分でも何かあるって言ってたじゃないか」
二人に迫られる形で、『意味がないとかって笑うなよ』と前置きをして話し出した。




