お助けマンはknif(2)
龍『はじめまして』
knif『はじめまして。参加していいですか?』
龍『はい、よろしくお願いします』
knif『こちらこそ、よろしくお願いします』
ゼロ『はじめまして、よろしくお願いします』
knif『ゼロさん>はじめまして、よろしくお願いします』
どうやら、相手は常識のある人のようだ。子供だと『こん』『よろ』など文章を縮めて書いてくる。
今日だけはちゃんと挨拶をしてくれる人が来てくれることを望んでいたのだ。
だからこそ、重吾の方から『はじめまして』と文字を打ち込んだのだ。
「重吾から挨拶するって、珍しいな」
健太が話す。
「確認だよ」
「確認?」
「美香さんが最初の人って言ってただろ。だからって、最初の人が子供だったら、話にならないじゃないか」
「そういうことか。でも、ちゃんと挨拶してきたからって大人とも限らないぞ」
「それはこれからだよ」
二人がそんな会話をしているなど知るはずもなく、knifは二人と一緒にゲームに興じ始めた。
ワンゲームが終了するたびにチャットで感想を言い合ったり、他のサイトでのことを話したりする。
knifにしてみれば、本日この場限りの三人の会話なのだがら真剣に話すこともない、通り一遍の世間話程度である。
しかし、二人にとっては一言一言が大事な会話なのだ。
なぜなら、その一言で相手を判断しなければならないのだから。
これが例え神野美香が言った相手であっても、変な相手ならば相談を持ちかけることはできない。
蜜芽を助けたい一心で振った話が更なる犯罪に巻き込まれるということも考えられるからだ。
さすがに、今回の蜜芽のことがなかったら、二人ともここまで慎重にはならなかっただろう。
それもそのはずで、中学生の二人にはネットで知り合いになる友達に犯罪を犯すようなヤツがいるなどとは、考えたことも無かったからだ。
knifが大学生であることも分かった。
さすがに住所までは分からないが、自分たちと同じ県に住んでいることも分かった。性別は男性で、全くの凡人。
つまり、健太や重吾のように未来を予知したり、霊を見たりなどの特殊な能力とは全く別世界の人間だということだ。
『knifさんは、霊を信じますか?』
重吾が聞いてみると、意外にも『見たことは無いけど、信じますよ』と書かれてきた。
龍『見たことも無いのに信じられるんですか?』
knif『そう言われると困るけど、俺の友達に霊感が強いのがいるからね』
ゼロ『その人は、霊が見えるんですか?』
knif『うん、見えるらしいね』
ゼロ『霊の他に、特殊な能力があるんですか?』
knif『さぁ? 特殊な能力かどうか分からないけど、守護霊と話ができるって
言ってたな』
龍『それも信じてるんですか?』
knif『信じてるよ? 友達が言ってるんだから、疑う必要はないだろ』
ゼロ『もちろんです!!』
knifの文章から、少なからずムッとした感情を感じ取った健太が、焦ったのか猛スピードで文字を打ち込んだ。




