1.まずは三人です(1)
「『最近の子供は!』とかって、良く親が言うんだよね」
イヤホンを耳に挿し、マイクに向かって話しているのは柿崎健太、スポーツ大好きな中学二年生である。
目の前には親のお下がりのパソコンが置かれ、画面にはゲームが映し出されている。
右手でマウスを動かしながら、クリックを繰り返す。
その素早さは、さすが若者というところだろう。
「ああ、よく言うよね。うちも言うよ、それ。テレビを見ては『最近の子供はぁ』とか、自分の子供を見ては『最近の子供はぁ』って」
笑いながら返事をしてきたのは矢野原蜜芽。健太の幼馴染である。
そして、蜜芽の目の前には、健太同様パソコンが置かれている。
映し出されているのは、ゲームではなく《つぶやきサイト》のようだ。
文字を読みながら、会話をしているのだ。
大人からしたら、『それで話の内容が分かるのか?』と疑いたくなるが、そこは若さなのだろう。
蜜芽からすれば、『右脳と左脳がいっぺんに動いてるんだから、私ってテンサーイ!』というところらしい。
「うちの親は言わないなぁ。逆におばあちゃんが『最近の親は』って、オレの母さんに向かって言ってるね」
そう言ってきたのは、やはり幼馴染の大沢重吾である。
三人は同じ団地の隣同士で、幼い頃から一緒に数々のいたずらを楽しみ、一緒にお風呂に入った仲なのだ。
ただし、幼稚園の年少までの話だが。
小学校も一緒に通い、中学生となった今も毎朝一緒に登校するほどの仲良しだ。
こうなると、恋の花が咲きそうなものだが、残念なことに蜜芽が男勝りなために、ありえない設定である。
いつだったか蜜芽に、『好きな男性のタイプは?』と質問したところ、自分のことは棚に上げて、『超イケメンのセバスチャン!』と応えたものだがら、見事に健太と重吾に爆笑されたのだった。
という健太の理想の女性は、
「オレの姫は、可憐でおしとやかで、いつでも笑顔で、明るくて綺麗で、ドレスの似合う人がいいな」
と言う。これまた、現実離れしている。
「じゃぁ、重吾はどんな人がいいの?」
興味津々という目を向ける健太と蜜芽に向かって、重吾は薄ら笑いを浮かべてこう応えた。
「オレは知性的で物静かで読書が好きで、動物が好きな頭のいい人がいいな。バカな女と話していても疲れるだけだからね」
最後の一言が蜜芽の怒りをかうことになろうとは、全く考えが及ばなかった重吾は、腕組みをしてどんなもんだといいたげに口元を歪めて笑った。
それから数日間、『女子の敵!』と言うことで重吾が謝罪するまで口をきいてもらえなかったのだが。
もちろん、こんなエピソードなど今となっては笑い話だ。




