せみの話
「先輩」
「何?」
「先輩ってやっぱ、もう子孫のこしたんすか?」
「まだだよ馬鹿、そんな簡単なもんじゃねぇんだよ」
「やっぱそうっすよねー良かったー」
「まぁどうせすぐに可愛いメス見つけてやるけどな」
「まだあと七日もありますもんね先輩!」
「そうだよ。分かったらもっと鳴けっ!鳴かねえとメスは寄ってこねえぞ!」
「了解っす先輩!」
ミーンミンミンミンミィィィィィィィ・・・・・
俺はセミ
卵としてこの世に生まれてから1年かけて幼虫になり
そこからさらに2年間、土の中で暮らしていた。
そして今日の朝、俺はそろそろ成虫になる頃かと思い、地上に出てきて羽を広げた
そこで出会ったのがやつだ。俺よりほんの一時間ほど遅れて成虫になったらしい。
そして彼もそうだが、セミは一週間しか生きられないと思っているセミが多い
実質、鳥や虫に食われることが多いから、平均したらそのくらいになるのかもしれない
でも特に何の事故もなく生活していれば、二週間、長くて三週間ほど生きていられる。
間違った噂は、幼虫たちの中で伝統のように受け継がれる。
「先輩、なんでセミって地上に出てから一週間しか生きられないんすかね」
「一週間で十分だからだろ、子孫を残すためには。」
「そうなんすか。でもやっぱもっと生きたいっすよね」
こういうやつには、むしろ寿命は一週間だと信じていたほうが幸せなのかもしれない
「ちょっと向こうの木見に行きましょうよ!」
「いいけど、飛んでる時は鳥に気をつけろよ」
「大丈夫っすよ、この辺で鳥見かけませんでした」
「ならいいか」
そう言って俺とこいつは隣の木に飛び立った
「やばい、飛ぶのめっちゃ楽しいっすね先輩!」
「そうだな、ほんと地上に出てきてよかったと思うぜ」
そして木にとまると、やつが呟いた
「先輩・・・これなんすか」
クモの巣に引っかかっていた
「動くな!クモの巣だ!」
「え?やばいんすか?ちょ、助けてくださいよぉおお!!」
「黙れ!動くな!クモが来る!」
近くにいたクモは糸の振動を感じ、少しずつやつに近づいてきている
「先輩!先輩!どうすればいいんすか!」
しばらくするとやつの形は残っていなかった
セミの命の重さは、他の動物に比べて
はるかに軽いのかもしれない。




