9話 祭りとヤンキ―とコラ!オイ!
予定を変更して、先にブレイクとイルの話を。
ちょっとシリアスな感じになったかも。
では、どうぞ。
「あれも食べたいな」
「ちょっと待てやコラ!食べたいなら自分で買ってきやがれ!」
「お願い・・・?」
「こんなときだけ甘えた声出すな!」
俺ことブレイクは相棒であるイルとともに祭りに繰り出していた。
とは言え、いろんなものを強制的におごらされているのだが。
「ブレイクのバカ!もういい!自分で買ってくる!」
「なんで逆ギレしてんだ!?」
俺はため息をつきながら、拗ねたようにそっぽを向くイルを見つめた。
黒い長髪が風に揺れる。俺は思わず、見とれてしまっていた。
正直、俺の相棒は美人だ。それもかなりの美人だ。
だが相棒は相棒で、それ以上の何者でもない。
相手がこちらをどう思っていようと、俺はイルに恋愛感情は一切ない。・・・はずだ。
そこで言い切ることが出来ない自分が嫌になる。
自分はイルのことが大切だし、特別に思っている。
だが、それが恋愛感情ではない。と、思っている。
「はい」
そんなことを考えていた俺に白い饅頭が差し出された。
「いいのか?」
イルは深くうなずいた。
どうやら俺の分も買ってきてくれたようだ。
俺は饅頭を一口かじった。あんこの甘みが口いっぱいに広がる。
甘党な俺にピッタリな饅頭だと思った。
「うまいなコレ・・・ん?お前の分は?」
「売り切れた。それが最後の一個」
「はぁ!?お前が食べたかったのじゃないのか?」
「大丈夫!ブレイクがおいしそうに食べているのを見るだけで幸せだから」
「・・・」
この女は卑怯だ。というより女という生き物はみんな卑怯だ。
こんなことを言われて嬉しくない男がいるものか。
「言っておくが、俺はお前のことをなんとも思ってないからな」
俺は冷たく言い放った。
こうでもしないと、俺の決心が揺るいでしまいそうだからだ。
俺はもう二度と恋をしない。5年前そう決めた。
愛する女を目の前で失った。
半人前だった俺をかばうようにして、魔物に殺された。
俺の目の前で八つ裂きになり、あっという間に肉片となった。
俺は愛する女を見殺しにして逃げた。涙を流しながら、無様に走った。
俺はかろうじで逃げ切ったが、俺の心は死んでいた。
俺は未熟な自分に嫌気がさし訓練に明け暮れた。
心にぽっかりと穴を開けたまま、ただただ魔物と戦い続けた。
もう目の前で、好きな女を失うのは嫌だ。
だからイルには悪いがきっぱりと言い放ったのだ。
これで諦めてくれるように祈った。
「構わない」
イルが言った言葉は、俺の想像と180度違うものだった。
「あなたがどう思っていようと関係ない。私はあなたが好きなんだよ!オイ!」
なんだよ・・・それ。
「・・・けるな」
「え?」
「ふざけるなよっ!コラァァァ!!!」
俺は柄になく叫んだ。
そうじゃないと、自分のこの感情をどうしたらいいのか分からなかったからだ。
次回こそ、ダークプリンス編になると思われます。




