１５話 俺と抜刀と最後の力
さぁ！決着だぁっ！！
どうぞっ！
木の陰から見覚えのある、ヤクザコンビが現れた。
ヒロも気づいたらしく、声を上げる。
「あ！お前たちは！・・・・・・・・・誰だっけ？」
「「なめとんのか、オラァァ！！」」
よくあるやり取り。俺はちゃんと覚えているよ。
青髪のモヒカン頭の男がブレイクで、
黒髪のロングヘアーの女がイルだ。
戦闘の音や声を聞いて駆けつけてきたのだろう。
正直ありがたい。
「のんきなボケかましてんじゃねーぞ！ボケ！」
「起き上がってくるぞ！オイ！」
そう言われて見てみると、ギガノフロッグは器用に体をひねらせて起き上がる。
フゥと息をつく。
俺の体はすでに限界を迎えていた。
連続の高速移動は確実に俺の体力を削っていっていた。
「フッ・・・疲れたのなら下がっていろ」
気が付くと、ダークプリンスが俺の横に立っていた。
そうしたいけど、ダークプリンスに言われると腹が立つ・・・
「大丈夫だ」
やせ我慢をしてみる。
汗だらだらで、大丈夫と言っても説得力はないけど・・・
ギガノフロッグは起き上がり、こちらを睨む。
「魔物の唄！！」
ダークプリンスが攻撃を引き受けるべく、技を唱える。
っていうか、そんな技があるなら最初から使ってくれよ。
俺とメグちゃん、ブレイクの三人が一斉に駆け出す。
その時、俺はブレイクを見てあることに気がついた
ブレイクは刀を納刀したまま、刀のつかに手をおいて走っていた。
よく見たら、鞘の中から光が漏れている。
なんだ？あれは・・・
ギガノフロッグは大きく手を振り上げる。
そして、その手を俺とブレイクに向かって振り下ろす。
「高速移動！」
俺は技を使って避ける。
ブレイクは横っ飛びだけでそれをかわした。
す、すごい・・・
あの動きは今の俺には真似ができない。
あういう動きができるようになれば、技を極力使わずに済む。
そんなことを考えているうちにギガノフロッグとの距離は数メートル。
タンッッ
ブレイクは地面を強く蹴り、瞬時に距離を詰める。
そして、技を唱えながら刀を一気に引き抜いた。
「抜刀斬り！！！」
鞘の中に溜められていた力が一気に解放される。
光り輝く日本刀がギガノフロッグの腹を切り裂く。
ガキュュィィン
へんな電子音が聞こえてきて、白いエフェクトが発生する。
クリティカルヒットだろう。
「ギャャァァオォォォ！！！」
耳を裂くような奇声が空間に響き渡る。
ギガノフロッグは見たことのない量の体液を撒き散らしながら
奇声を何度もあげ苦しんでいる。
〈ギガノフロッグ ２４２／１０７８〉
おぉスゴイ効いてる。
そんなことを考えていると、ブレイクが俺の近くに来た。
「何ボーとしてんだ！コラ！今がチャンスだろうがぁ！」
「っていうかさっきの技すごいな。見直したぜ」
「な、なっ！バカ野郎！コラ！」
「どんな技なんだ？」
「ダメージは通常攻撃と同じだがクリティカル率が１００％の技だ、コラ！」
何それ・・・そのチート技！
「その代わり、納刀している時しか使えないし
一度で大量のＦＡＴを消費するから連発できねぇ！コラ！」
何それ・・・使い勝手悪すぎだろ！
ギガノフロッグは右腕で腹部を押さえながら跳躍する。
着地と同時に地響きが起こる。
ギガノフロッグの体が少し小さくなる。
もちろん本当に小さくなっているわけではない。
つまりは逃げて行っているわけだ。
「追いかけるぞ！まだ動けるやつはついてこい！コラ！」
なんでアイツが仕切ってんだ？
まぁ、いいか。
ブレイクが駆け出すのに合わせて俺も飛び出す。
追うのは、ブレイク、俺、イル、メグちゃん、ヒロの５人だ。
ギガノフロッグの動きは鈍いものの、体がでかいため一歩が大きい。
俺たちも全力で走っているのだが、なかなか追いつけない。
走って追いつけないのなら・・・！
「高速移動！高速移動！」
俺は連続で高速移動する。
俺の筋肉が悲鳴をあげていた。足がちぎれそうな激痛に襲われる。
俺は何度も高速移動を唱える。
ぐんぐんと距離は縮まっていく。
それに伴って、俺の体は機能を失っていくのがよくわかった。
そして―――ついに追いついた。
俺はギガノフロッグの前に回り込み、最後の力を振り絞る。
足に力を込める。足からブチブチと子気味良い音が聞こえてくる。
俺は空中に浮いていた。
正確にはジャンプしているだけだが。
だが俺の体は信じられないくらい宙に浮き上がっていた。
３メートル近いギガノフロッグの体の頭まで飛び上がっている。
俺は足が動かないことを噛み締めつつ、銅の剣を握り締めた
右手を前に突き出す。
銅の剣はギガノフロッグの左目に突き刺さっていた。
ギョォォエエェェェェ！！！
ギガノフロッグの奇声を間近で聞きながら、俺の体は
重力に逆らうことなく落下していく。
受身をとろうかと考えたが、止めた。というよりできない。
全身がピクリとも動かない。
あぁこれが過労状態か・・・
ＦＡＴが１００％になると動けなくなるんだっけ？
俺・・・今度こそ死ぬのかな？
俺の体は地面に叩きつけられる予定だった。
が、その前に―――
「うおぉぉぉぉっっ！！！」
何かが俺の体と地面の間に滑り込んでくる。
俺はその何かの上に不時着する。
「・・・っぐぅ―――おぉぉ」
下から相棒の声が聞こえてくる。
俺は人生をまだまだ続けられるみたいだ―――
次で２章も完結かな？
