11話 俺と技と勇者の第六感
2章いよいよクライマックスへ・・・
では、どうぞ。
全員で一斉に駆け出す。
俺も銅の剣を引き抜いて飛び出す。
っていうか、よく魔物に気づいたな・・・
散々、鈍いって言われている俺が・・・
勇者の第六感か?
そんなことを思いつつ足を動かす。
カエルとの距離は50メートルくらい。
あ、そういえば。
勇者に転職した時に、技を覚えたんだった。
技。それはこの世界においてFATを消費する代わりに
普通の人間にはできない行動ができる。
俺は、技の発動のキーワードを口にしてみる。
「高速移動」
その時、俺の体は一瞬にして5メートルほど前進していた。
「「「な、なっ」」」
覚醒部隊のメンバーから驚きの声が上がる。
そりゃそうだろう。並走していた奴が、いきなり前に出たのだから。
これで、俺はみんなより、少し前を走ることになる。
カエルは奇声をあげて、戦闘態勢に入る。
すると、カエルのうち1匹が口を膨らませる。
そして、紫色のゼリー状の液体を吐き出した。
これは・・・もしかしなくても毒液だろう。
俺たちめがけて毒液が飛んでくる。
結構、飛んでくるものだな・・・
後ろで立ち止まる音が聞こえる。
もちろん毒液をよけるためだろう。
「お、おいっ!何やってんだ!」
ヒロの声が聞こえる。
ヒロがこんなに慌ててるのは、俺が飛んでくる毒液に向かって走り続けているからだ。
目の前に毒液が迫る。
鼻を刺す強烈な臭いがする。
俺は毒液を全身で受け―――
「高速移動」
―――る前に、回避技でよける。
ビチャッ
毒液が地面に着弾する音が聞こえる。
そして、もう一度カエルに目を戻すと、もう10mくらいまで迫っていた。
2匹のカエルは毒弾発射準備OK!
こんな近距離では高速移動でも避けにくい。
そんなときは・・・
「高速舞踊」
小刻みに高速移動するこの技。
適当に何度も高速移動することで毒液を見事回避。
そして―――
「高速移動」
―――一瞬でカエルの前に移動し、銅剣で切りつける。
この技は回避だけでなく、攻撃にも応用できるのだ。
「二度切り」
俺の剣が光輝き、瞬時に二度フロッグを切りつける。
二度切りは戦士系の職業の初期技だ。
たいして、すごい技ではない。
まぁ、何はともあれ、合計三回切られたフロッグはゴールドになっている。
そんな時、勇者の第六感(勝手に命名)が働く。
背後にフロッグの気配!
「高速舞踊」
俺は小刻みに移動しつつ、フロッグを切りつける。
フロッグはメグちゃんの言うとおり、紫の体液をまき散らしながら死んでいった。
「ハァハァ・・・」
慣れない動きをしたせいで、俺の体が悲鳴をあげていた。
勇者の第六感すごいな・・・!
これでもう鈍いなんて言わせないぞ!
「すごい動きだな!」
「さすが勇者さんふらんしすこ!」
「お兄ちゃん!すごいですぅ!」
「フッ・・・この俺が褒めてやるのだ。嬉しく思いたまえ」
「・・・賞賛」
ようやく到着した覚醒部隊のメンバー。
それぞれ、俺に言葉をかけてくれる。
しかし、俺にとってそんなことはどうでもよかった。
スゴイ・・・スゴイ・・・!スゴイ!スゴイっ!!
俺は自分の力にしばし酔いしれた。
さすが勇者だぜ!フリーターの時とはまるで違う!
体の動きから、剣術まで・・・すべてが桁違いだ!
「ハァハァ・・・やったぞぉぉっっ!!」
俺は雄叫びをあげた。
「よし、このへんで休憩するか」
キノシタ隊長の号令のもと、俺たちはリュックサックを降ろして
近くにあった気に、それぞれもたれかかった。
「すごいな・・・あの動き。尋常じゃなかったぞ」
「だろ?だろ!」
「あんまり、調子に乗るなって・・・」
俺とヒロはギルドでもらった水筒を口にする。
大きな木の木陰に腰を降ろし、歩き疲れた体を癒す。
俺が最初いた森とあまり風景は変わらない。
快晴の日光が照りつけ、とても苦しいが
木陰では涼しく感じられる。
ふー疲れたな・・・
あと10分くらい休んでいたい・・・
そんなひと時の休息は見事にぶち壊されることとなる。
〈ギィガガガァァッッ!!〉
「っ!!!」
「ん?どうした?」
勇者の第六感が何かを感じ取った。
「何か来るっ!!」
「「「?」」」
俺が叫ぶと、静まり返る一同。
「嵐の前の静けさ、というやつか?」とダークプリンスがつぶやくが、完全無視。
しばしの沈黙―――
―――そして静寂を破る物音。
バキッッ!!メキキキィィッッ!
木が折れ、倒れる音。
その瞬間、みんなは一斉に身構える。
俺も銅の剣に手をかける。
明るく照らされるひなたに大きな影が差す。
2メートルは余裕で超える巨体。
黄色とオレンジのまだら模様。
腕が大きく肥大し、生々しい手のひらが見える。
ヌメヌメの体液に覆われた巨体は、その不気味さを際立たせていた。
一言で言えば、超巨大なカエル。
エリアボス―――その地域において、強大に進化を遂げた個体。
その出現率はかなり低い代わりに、その強さは並ではない。
攻撃方法や弱点なども変化している。
まぁ・・・なにが言いたいのかというと、ヤバイってことだ。
「ギィガガガァァッッ!!!」
鼓膜を破るような奇声が響き渡る。
俺の勇者の第六感が逃げろと告げている。
さぁ!頑張れ勇者よ!ボス戦だ!




