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4話  俺とヘアバンドと恋愛フラグ

鈍感なりゅーやくんが頑張ります。

応援してあげてください・・・!


では、どうぞ。

「遅い・・・」


俺は待っている。何をかって?

タミアさんをだよ・・・


女の子のフロと買い物は長いって聞いたことあるけど、こんなに長いとは・・・

俺とヒロは銭湯の前でもう20分ぐらい待っている。


目の前にある雑貨屋で時間を潰していたが、一通り見終えたし・・・

今は2時ごろ。だいぶ腹も減ってきた。


その時・・・


「すみませんっ!遅くなりました・・・」


やっとタミアさんが銭湯から出てきた。


「え、えっと・・・待ちました?」


お、おおっ!これは夢にまで見た展開じゃないか?

「ごめーん。待ったー?」「いいや。俺も今来たとこ」の展開だ!

ヒャッホー!!いくぜ!佐藤竜也っ!!


「いいや。俺も今来たところ」


「おい、リューヤ・・・それじゃおかしいだろ・・・」


え?おかしい?

 ① 俺たちは銭湯へ向かった

 ② 俺はフロから上がったがタミアさんが出てこない。

 ③ 「え、えっと・・・待ちました?」

 ④ 「いいや。俺も今来たところ」


「しまったぁぁっっ!!」








「今日は楽しかったです。ありがとうございます」


「いいえ。こちらこそ」


時は夕方。銭湯に入ったあと、ご飯を食べたり剣を買いに行ったりした。

そうしたらいつの間にか空が薄暗くなっていた、ということだ。


メルタン市の二番区の大通り。

中央役所を正面に見るこの場所は、都市で最も活気のあるところだ。


「では、この辺で」


タミアさんはいったん中央役所に戻るらしい。

タミアさんが手を振りながらどんどん離れていく。

そして、手を振るのをやめて歩いていく。


だいぶ人通りが少なくなった大通り。

それでもかなり混雑しているのだが。


あ、そう言えば。忘れるところだった。


「あ、待って!タミアさん!」


俺は力の限り叫ぶ。

俺の呼びかけにタミアさんが振り返る。

俺は走ってタミアさんに近ずいていく。


「どうしたんですか?」


「こ、これっ!似合うかなって思って」


そう言いながら俺は、リュックサックから黄色いヘアバンドを取り出した。

なんの変哲もない黄色いヘアバンド。

銭湯の前でタミアさんを待っている間に雑貨屋で購入したものだ。


実は『防具屋イロボ』の試着室でタミアさんと目があった時、

その透き通った黄色い瞳に、吸い込まれるように見とれていた自分がいた。

純粋な黄色い瞳。この世界にこれ以上美しいものなんてないんじゃなかとさえ思った。


そして今、俺はその黄色い瞳と見つめあっている。


やばい・・・火が付きそうなくらい顔が熱い。

タミアさんも顔を真っ赤にしていた。


「きょ、今日1日お世話になったし、なにかお礼できないかなって」


「あ、あああありがとうございます!た、大切にしますね!」


勇気を振り絞ったように、タミアさんは言った。


「うん」


俺はタミアさんにヘアバンドを手渡す。


「ありがとうございます!」


タミアさんは何度も頭を下げると、恥ずかしさを振り払うように走っていった。


ふう。緊張した・・・


「ヨウヨウテメエ」


ん?ヒロの声が聞こえたので振り返る。

目を虚ろにして、ゾンビのように手をだらんと下げ、こちらに近ずいてくる。


「お、おいっ!大丈夫か!?」


「俺の前で恋愛フラグ立ててんじゃねぇーぞコノヤロッッ!!!」


俺は真っ暗になるまで、狂戦士と化したヒロに追いかけられる羽目になった。








「お!いらっしゃいっ!って君たちか!」


俺たちは無駄に元気のいい宿屋に帰ってきた。

そして借りていた部屋に戻る。


腐った畳の嫌な臭いがプンと伝わってくる。


「狭っ!臭っ!怖っ!」


ヒロが単語を叫んでいる。

まったくそのとおりだ。


3畳しかない超狭い部屋は荷物を置くと座るのがやっとな広さになってしまう。

どうやって寝るんだこれ・・・


「なぁ、明日時間があったら違う宿を探さないか・・・?」


「ああ」


この『宿屋コノヤロー』は飯なし、風呂なし、トイレなしの設備最悪の宿屋だ。

その代わり1晩1ゴールドという破格の値段なのだが、さすがに・・・

腐った畳。シミだらけの天井。ボロボロの壁。

廃墟なんじゃないかと疑いたくなるような感じだ。

これで、ゾンビなんかが出てきたらお化け屋敷の完成だ。


「おにぎりでも食うか?」


ヒロがさっき買ったおにぎりをリュックサックから取り出した。


「ありがとう」


二つのおにぎりを受け取る。

のりが巻かれただけのおにぎり。特に具が入ってるわけではない。

でも、お腹がすいた俺には美味しく感じられた。













「ロット?」


俺を呼ぶ声が聞こえる。

ここは帝国の上級兵士の集合借家だ。

ん?この声は帝王様のパシリ野郎の声じゃないか?


「ロット・・・お、ここにおったか」


「なんだよ?」


案の定、ブタだった。

ブタは王宮魔法使いの帝国幹部だ。

それは表向きの話で、実際は帝王様のパシリになっている。


そんなブタは俺の態度が気に入らなかったようで、眉間にしわを寄せた。


「なんだその態度は?仮にも上司だぞ?」


「あーはいはい」


パシリ野郎に威厳もクソもないっての・・・

眉間にしわを寄せられても怖くないし。

っていうか何しに来たんだよ?


「ったく・・・せっかくいい話を持ってきてやったとい―――


「詳しく聞かせてくれ」


それを早く言え。


「帝王様からバルバ民国のメルタン市を壊滅させろとの命令を受けた」


メルタン市・・・たしかバルバ民国最大の都市だったはずだよな?

バルバ民国の首都は『バルバ王都』だが、もっとも栄えているのはメルタン市だ。

アメリカのニューヨークみたいな感じと思ってもらえればいい。

『バルバ王都』の方が兵力が充実しているから攻め落とすのは大変だ。

しかし「メルタン市を落とせば民国は滅びる」と言われているほどだ。

それならメルタン市落とした方が手っ取り早い。


「それで、メルタン市に兵を送ることになった。

 そこでお前をその兵団の隊長をやってもらいたい」


「なんだよ、それ。めんどくさいなぁ」


「これが成功すればドン・ランに代わり幹部に昇格させ―――


「任してくれ」


俺はなんて現金なやつなのだろう。




2月1日。サブタイトルの一斉変更。

ただの気分転換です。

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