2話 俺と装備と黄色い瞳
シリアスは一切ないです。
コメディーとちょっぴり恋愛を・・・
では、どうぞ。
さて・・・どうしたものか・・・
みんなの手にはハンバーガーが1個ずつ。
そして、ヒロの手にはさらにゴマ団子似た食べ物―――炭酸団子が握られている。
見た目はただのゴマ団子だ。手のひらに乗る、普通のサイズ。
問題は味だが・・・
ちなみにみんなが持っているハンバーガーは普通のハンバーガーだ。
あふれる肉汁が食欲をそそり、新鮮そうな野菜が挟まれている。
ケチャップが豪快にかけられ、とてもいい匂いがしている。
しかも、出来たてのアツアツときているのだ。
「ハンバーガーから先に食べるか」
ヒロがそう言って、ハンバーガーにがぶり付いた。
野菜の新鮮そうな音と肉汁が飛び散る音が聞こえる。
「う、うめぇっ!!」
ヒロが唇に付いたケチャップを舐めながら、歓喜の声を上げる。
俺もかぶりつく。
口の中に肉汁が広がる。
野菜のシャキシャキの食感がたまらない。
ケチャップの量もちょうど良い。
「う、うめぇ~」
やばい!うますぎるっ!
俺はどんどんかぶりつき、その度に幸せな味が口中に広がる。
3人ともあっさりと完食してしまった。
「美味しかったですね!」
タミアさんと二人でうなずきあう。
「あー美味しかったなぁ。じゃあ・・・これを食べますか!」
そう言ってヒロは、炭酸団子を口に放り込んだ。
モグモグ
「うん。おいしいよ。ハチミツみた―――
シュワシュワシュワ
ヒロの口の中から音が聞こえる。
「ん、んー!!」
ヒロは必死に口を押さえて吐き出さないようにしている。
そしてやっとの思いで飲み込んだ。
「あー!!死ぬかと思った!」
俺とタミアさんは、苦しむヒロを見て爆笑した。
炭酸団子とは『泡』の魔法をかけた団子だったらしい・・・
軽い食事を終えた俺たちは、大通りから路地へと曲がり歩いていく。
何度も細い路地を曲がっていく。
大通りの活気とは裏腹に、とても静かな住宅街だった。
混雑していた大通りとは違い、人通りも少ない。
レンガ造りの家の間を抜けていく。
「どこに向かってるんですか?」
「『イロボ』という防具店です。古くて小さな店で知名度は低いですけど、良い店ですよ」
俺たちはどんどん狭い道を歩いていく。
そして、一つの店にたどりついた。
他のレンガ造りの家とは異なり、木造の建物だった。
言われなければ、店だときずかないどころか、人が住んでいるかすらわからないような建物だった。
タミアさんがドアを開けて、店の中に入っていく。
俺たちも続いて、中に入っていく。
店の中は狭苦しかった。
ただでさえ小さいのに、所狭しと鎧やら服やらが並べられていた。
そして店の奥から、腰の曲がったおばあちゃんが出てきた。
しわだらけの顔に白髪の髪。
たぶん、70歳くらいだろう。
「いらっしゃ―――あら、タミアちゃん」
「こんにちは。ボストンさん。この二人は私の友人です」
タミアさんが挨拶をする。
俺たちも「どうも」と頭を下げる。
「そうかね・・・タミアちゃんも年頃だもんねぇ・・・」
「え、えっと・・・!違うんですよ!」
タミアさんが顔を真っ赤にして、弁解している。
「ほ、本当に違うんですよ!そういう関係じゃないんですよっ!」
「ははは。そうかい。そうかい」
ボストンさんとタミアさんがそんなやり取りをしている。
結局なんの話だったんだ?
俺がポカンとしていると、ヒロがあきれたように言ってきた。
「お前って・・・けっこう鈍いんだな」
「?」
俺が鈍い?たしかに運動神経は鈍いけど・・・?
「で、今日はなんの用だい?」
ボストンさんが真面目な顔になって、話題を変えてきた。
「鎧が欲しいなって思って」
俺は血だらけになった自分の服をひっぱりながら答えた。
「で、どんなのがいいんだい?」
「うーん。安くて、軽いやつでいいです」
ボストンさんは少し考えた様子で、白髪頭をかいたがすぐに店の奥に消えていった。
そして、1分もしないうちに戻ってきた。
「こんなのはどうかね?最近流行ってるみたいだけど」
最近流行ってる鎧か・・・どんなのだろう?
できればカッコいいやつがいいな。勇者っぽいやつ。
俺はワクワクしながら、ボストンさんを見た。
ボストンさんの手には黒いドレスが―――
「却下!!」
「ごめんね・・・ピンクはなくなったんだよ」
「色の問題じゃないですよっ!性別が違うからっ!」
「え?男の人も買っていくよ?」
「それは変態だけだぁっ!!」
俺は試着室にいる。
「まったく・・・」
ボストンさんがまともなものを持ってこないので、結局自分で選んだ。
籠手は腕を守る上に剣を振った時の腕の負担を軽減するらしい。
レッドグリーヴ。赤い塗装がされた、籠手。
比較的安価なもので、防御力はそんなに高くない。
ないよりましというぐらいだ。
どうせなら、色を統一感を出したいじゃん?
コンポジット・アーマー。チェインメイルの上から皮革製のバンドが付いた鉄板で覆ったものだ。
その鉄板が赤く塗装がされているのだ。チェインメイルはもちろん銀色。
鉄板は胴、肘、脛、膝についている。関節を守る意味もあるようだ。
防御力はそこそこだが、何より軽いのだ。機動力を重視した選択だ。
ちなみに兜は装備していない。
「これでいいのかな・・・?」
付け方があっているかが、不安だ。
小学生のころに剣道をちらっとやっていたから、防具の付け方は分かっているはずだ。
俺は試着室のカーテンを少し開けて、首だけを外に出した。
すると、黄色い瞳がこちらを見つめていた。
「何やってんのタミアさん?」
「え、え、ええっ!!リューヤ君っ!?そ、そのっ!ち、違うんですよ!?」
何をそんなに慌ててるのだろう?
「えっと・・・似合ってる?」
俺はカーテンを開き、タミアさんに鎧を見せた。
「べ、別にのぞこうとしてたわけじゃ―――って、え?」
彼女は何を言ってるんだろう・・・
「だから、この格好似合ってるかな?」
「は、はい!すごく似合っていて・・・その、すごく・・・」
「すごく・・・なに?」
タミアさんは顔を赤らめて、うつむきながら小さくつぶやいた。
「そ、その・・・すごくカッコいいです・・・」
1月27日。12話、13話の超覚醒のシーンを少し変更しました。
こだわってみたので見てくれたらうれしいです。




