13話 俺と暗殺者と逆境の決闘
ついに決着。
では、どうぞ。
―――情熱の龍よ、その無限の勇気を我が魂に刻め―――
「これが、逆境超覚醒だぁぁっっ!!!」
俺は吠えた。
ドン・ランも広刃のナイフを胸の前で構える。
「リューヤ!これを使えっ!」
ゴファさんが、持っていた護身用ナイフを地面を滑らせる。
俺の足元に滑ってきた護身用ナイフを拾い上げる。
包丁よりもさらに短いナイフ。
あくまで護身用だ。戦闘には不向きだろう。
「まぁ・・・木の棒よりはマシだな」
俺は装備していた木の棒を地面に置いた。
ドン・ランは鋭い目つきでこちらを睨んでいる。
「さあ。準備はいいか?」
ドン・ランが尋ねてくる。
「・・・ああ」
護身用ナイフを構えながら、俺は頷いた。
タンッ
地面を蹴る小さな音が聞こえたかと思うと、目にもとまらぬ速さで俺に接近してくる。
は、速すぎる・・・!!
ドン・ランの速さに、反応が出来ていない自分がいた。
あっという間に距離がなくなる。
俺は体重を後ろにかけて、無理やり1歩下がる。
ガキィッ
お互いの刃が交わる。
俺は一歩下がることで何とか受け止めることに成功していた。
どうゆうことかというと、少し距離をとることで相手のナイフの先っぽをナイフの中間部分で受け止めることができた。
そうすることで少しは力の差を埋めることができたのだ。
LV5の無職とLV42の暗殺者。
単純に考えたら、力の差は8倍以上だ。
小細工なしではまともに戦うことすらできないだろう。
カンッ キィン カァン
ナイフによる連撃をさっきのやり方で何とか受け止める。
とはいっても8倍以上の力の攻撃はすさまじいものだった。
受け止めるたびに手がしびれ、筋肉が悲鳴を上げている。
そういえば、超覚醒ってどのくらい能力がアップするんだろう?
普通の覚醒はHP・MP以外の全能力が1.5倍。HP・MPが50%回復という設定だったはず。
じゃあ、超覚醒は2倍くらいだろうか?
2倍といってもあまりうれしくない。だってLV10くらいの能力なわけだから・・・
カァァン
あ、ああっ!ついに俺の手からナイフがはじかれて後ろのほうへ飛んでいった。
「終わりだな」
ドン・ランはナイフを振りかぶり―――
「凍結の霰」
俺とドン・ランを霰が包みこむ。ドン・ランに一瞬の隙が生まれる。
俺はその間にナイフを拾い上げる。
「僅かな光」
ヒロが回復呪文を唱えてくれる。
ドン・ランは凍結の霰なんかもろともせず、俺に切り込んでくる。
俺はそれを何とか受け止める。
そのとき
「うおぉぉっっ!!鋼鉄の拳!」
キノシタ隊長がドン・ランを殴りつける。
あ・・・生きてたんだ・・・
ドレスはボロボロに破れ、体中血まみれ。
ピンクのドレスは赤く染まっていて、顔は痛みで歪んでいる。
それでも、キノシタ隊長は戦おうとしていた。
「紙一重」
ドン・ランは避けきれないと判断したのか、回避技でかわそうとしている。
「リューヤッ!今だぁっ!!」
ん・・・?今?あっ!そうかっ!
キノシタ隊長の攻撃を無理やり避ける為に、ドン・ランは大きく体勢を崩している。
言いかえれば、隙だらけ。
「いくぞぉぉっっ!!!」
俺はしっかりと踏み込み、ナイフを突き出す。
刺突。
俺のナイフはドン・ランの腹を突き刺す。
ドン・ランの腹から血が噴き出し、俺は返り血を浴びる。
俺の囚人服のような格好は赤く染まり、顔も生ぬるい液体がかかる。
ガキュュィィン
変な電子音が響き、俺が刺したナイフから白いエフェクトが出ている。
もしかして・・・?クリティカルヒットか?
クリティカルヒットの確率はLCKの差にもよるがだいたい1%ぐらいのはずだ。
今発動したのは、奇跡に近いだろう。
クリティカルヒットが発動したら自分の攻撃力を2倍に、相手の防御力を半分にして計算できる。
俺の攻撃力を10、ドン・ランの防御力を8倍の80とすると
クリティカルの場合は俺の攻撃力は20、ドン・ランの防御力は40となる。
つまり、一気に差が縮まるというわけだ。
しかも、今俺は逆境超覚醒のスキルが発動している。
本当に能力が2倍とかなら、えらいことだ。
どういうことか分かりますよね?
単純な計算上、俺の攻撃力は40、ドン・ランの防御力は40となっているのです。
つまり、ドン・ランとの攻撃力と防御力の差がほぼ0になっている。
「やったな」
キノシタ隊長が痛みにこらえて、笑みをつくる。
ドン・ランはその場に崩れ落ちた。
つぎで、1章は完結かなぁ




