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第9話「神々の黄昏」

今回は特撮SFと言うよりも、ファンタジー小説

よりのお話になっています。

自分としても独立したエピソードとして最も

気に入っているかもしれません。

ご笑覧頂ければ幸いです。

「神々の黄昏」


防衛軍仏支部連絡員 アラン

ペット怪獣Jガー



#プロローグ ウルの少女


 ウル族の少女マーニは今年で海の10節を迎える。

 すなわち、もう十分成人として扱われる歳である。

 だが父であるヨルムはまだ彼女を海獅子狩りに連れて行こうとしない。それが少女には不満であった。

 ヨルムは若い頃南に下った経験があり、皆と違う考え方をする男だった。

 マーニの姉ヨククがその年の籤択に当たり、ガーに捧げられた時も一人里長に反意を説き3日の石刑を受けたものだ。

 そして周囲や少女の思惑と関係なく今年の籤択の日が近づいていた。



#海難事変


『この辺りの海、いつもこんなに荒れるのですか?』


 防衛隊日本支部所属小竹進は、日本から乗艦して来た海難調査船「あかつき丸」の船上で、防衛隊フランス支部の連絡員アランに慣れない英語で話しかけていた。


『いえ滅多にこう言う海況になる事は少ないのです。今日は時化っている方ですが、例の事案は凪いだ時にも頻発しているのです』

「それと小竹さん、私日本語も出来ますですよ」


「ああ、恐縮です」


「小竹、アランにお任せですね〜」

 小竹はこの青い目の男

大丈夫かと内心呟いていた。


「あ?あはは」


 北極にほど近いスカンジナビア半島の北方、バレンツ海ではこの数ヶ月で14隻の船舶が海難に遭っている海難事変が起きていた。

 事態を重く見たフランス防衛軍本部は、こうして海難対応に勝れた日本支部に調査協力を求めて来たのだった。


 防衛軍日本支部の誇るあかつき丸はヘリの離着陸出来る飛行甲板も備え、今そのスペースは座位の形でワイヤー固定された赤いロボットが1/3ほど占領していた。


「それでアランさん、これからの調査の進め方ですが?」

「ええ小竹さん、私の事はアランで結構ですね」


「ノルウェーでもフィンランドでもないバレンツシーの沿岸に小さな、日本語でいう自治領?邑?がありますのでそこをベイスキャンプに行動したいと思てますよ」


#ウルの村にて


「ねえ、あのトンガリは何」


 あかつき丸がバレンツ海を航行し、目的の自治領に接岸しようという時、いつものようにF01のコクピットに収まった少女が点字スクリーンに指を走らせながら質問を発した。

「あれか。何かの建造物?

いや待てよ、ちょっとセンシングしてみる」


「ユキコ、一見すると古い尖塔に見えるが<あれ>はどうやら非常に古い宇宙船のようだ、いわば逆さまに突き刺さったロケットだと思う」

「何でこんな所にそんなものが?

お父様一緒に来られたら大騒ぎだったろうなあ」と呟きながら少女はくすりと微笑んだ。

「ロケッ塔に?」

「バカ」


 上陸するとその小さな邑は先ほどの尖塔を中心にして小さな集落を形成していた。

 物珍しそうに集まってきた邑人達の中から40代前後と思われる簡素な衣装をまとった男が一人進み出てきた。その男の貫頭衣の裾から覗いた素足には、無数の傷があった。

「まれ人たちよウル族の地へようこそ。私はヨルム、南の言葉を話せるのは私だけなので里長に代わって話をする」


 ウル族を名乗った邑人達は、よく見ると少し変わった容貌をしていた。

 皆一様に切れ長の目に大きなオレンジ色の瞳、そして全員揃って青みがかった銀の直毛をしていた。


 ヨルムと名乗る男の歓迎の言に相反して、邑人達は防衛隊員に歓迎しているとは思えない視線を向けて来ていた。

 その中にあって一人の少女が、向ける目は一段と鋭く、その視線は、隊列の後方に控えているユキコに注がれていた。

 少女は呟く「ソール」

 その言葉を聞いて、邑人達からざわざわとした声が上がる。

 ヨルムが続けて

「まれ人よ、これはうちの娘が失礼した。この子はマーニ、ウル族の言葉で月を表す。先ほどの言葉は太陽を表す古い言葉です。この子がそちらの方に何か見たのでしょう。ウル族に受け継がれる依子の目で。」


 少し緊張感に包まれる中、空気を読まない男、

青い目の連絡員の英語が炸裂する

「は~い、皆さん笑顔になって~

私達がここに来たのは、この辺で艦船、えーとお船がいっぱい沈んじゃって、その訳を調べに来たのですよ。さ~て、チョコもチューインガムもいっぱいありますから、安心してください~」


 この青い目の発言に、小竹は「おいおいお前はリビングストンか?」とスカンジナビア半島を代表する探検家の名前で内心突っ込みを入れていた。


 案の定、住民たちの雰囲気が良くなる事などひとつも無く、彼らはお互いに隣の邑人と小声で何かを囁きはじめ、また幾人かの視線はユキ子その人に注がれていた。

 ユキ子の胸ポケットから彼女にだけ聞こえるささやき声がした。

「どうも妙な雰囲気だ、気をつけた方がいい⋯」


「そう、今日は我々がテントを張るスペースをお貸しいただけますか〜ね?」

 青い目男が空気を読む気配は微塵も無かった。


 夜も更け草木も眠りについた頃ウル族の里長の家に数人の男たちが集まり円座で話し合いをしていた。

「ヨルクお前は今年も籤択の必要は無いと申すか」

「でその<まれ人>の娘が約束の巫女だというのだな」

「よもや貴様の<月>が籤択に当たる事を懸念してたばかりを申しているのでは無かろうな」

「いや里長、我らもマーニがその娘をソールと呼ぶのをはっきりと聞いたぞ」

「ソールだと!間違いないのか?それが真で有れば5年は籤択が要らぬのでは無いか!」

「これは僥倖ぞ」

「今晩のうちに寄せの香を炊け、なに籤択に値するかどうかはガー様に捧げてみれば分かるのだからな⋯」

夜はさらに更けていく


#拉致


 ぼんやりとした意識が徐々に覚醒してくる。少女は自分が布のようなものでくるまれ担ぎ上げられながら運ばれているのに気づいた。猿ぐつわは噛まされてなかった彼女は自分を担ぎ上げている見知った男に声をかける

「ヨルムさん?これって⋯」


「香から目覚めたか太陽の子よ。私も一人の人の親なのだ月を救うため許せ」


「え?太陽?月?私これからどうなるんですか?」


「⋯贄だ」


「贄って生贄?」


「あわわわ、マン、聞こえてる

助けに来れない?」胸ポケットに話しかける少女


「意外と余裕だねユキコ

だがちょっと残念なお知らせだ

あの例の尖塔が妨害してるらしく

君の話は聞こえるが、位置が分からない、何か周囲に目印になるものは無いか?」

「ええと、ええと杉の木ぃ〜」

「それはこの半島に数万本はあるよ」


「お前ら留守番の私を差し置いて楽しそうだな」


「お父様ややこしくなるから会話に割り込んで来ないで〜」


 意味の分からぬ会話の応酬にややあきれ気味の担ぎ手の手によって、少女はいつの間にか岸壁にポッカリと開いた洞穴に担ぎ込まれていた。

 そして、ここで神特製通信箱の電波が途切れた。


「おーいユキコ」


「「こっちでは何がなんだか分っからんぞ。ダンナ様オ嬢様何カ有ッタカ」」


「何も無いですよ、タエ姫」

「ポッ」


行けUマンユキ子を救うのだ!



#少女と孤独の巨獣


 まだ夜明け前、暗いはずのその洞窟には不思議な光が満ちていた


 中心に有る小高い台座にユキ子は男たちの手でそっと座らされ左腕が鎖輪で固定される


 男たちが衣擦れも残さず消えていくと、少女と闇だけが残った


 少女が台座の目の前に広がる小さな湖を見つめていると、水面がゆっくりと持ち上がり<それ>が姿を現した。

 とがったライオンの顔にアザラシの体。5mは優に超える巨躯に凶悪そのもの様な顔つきをしていたその生き物は意外なほど可愛い声で鳴いた」

「くぅん」

目にハンデのあるユキ子にとって声こそが相対する相手の判断材料であった。


「貴方お名前は」


 少女の脳裏に、いつかこんな光景が有ったなと少し暖かな記憶が蘇る


 何故か言葉が通じたと思われる<怪物>は

無理やり絞り出すような声を発する

「ジェォイガー」


「うんうんよく出来たねえ

そっかジェイガー君って言うのか」


目を瞑って端から聞けば少女と子犬の会話にしか聞こえなかっただろう。

「この香りは何?お花?」

少女の目が闇であったことは幸いだったかもしれない

洞穴の隅には、鎖で繋がれているため、逃げる事も能わず、最後は

餓死したと思われる少女たちのほぼミイラ化した遺骸が綺麗に並んでいたのだ。それぞれの遺体は、綺麗に花で覆われる様に眠りについていた。

その表情に苦しみは無かった。


「君泣いているの?寂しいの?」


うなだれていた凶悪な顔面の怪獣は凶悪な鼻づらをユキ子の手にそっと擦り付けてくる。

残光の中、その2つの影はまるで、一枚の絵画の様であった。


#神々の黄昏


 贄の少女の様子を伺いに来たウル族の男たちは先の光景を目撃した。


「まさか?本物の巫女。だが恐れ多いが御命絶たせていただく」


  「「ソーール、ソーール、ソーール」」

 

 ヨルムを除く男達は2つの影に対し平伏していたが、彼一人は必死の形相を浮かべ腰に差した山刀を少女に向けようとした、まさにその時、聞きなれた言葉が洞窟内に響く


 一つは男の声、一つは少女の声で

「それまでだ、ヨルムさん!」


「もう、止して父さん、」


「マーニ、お、お前?その言葉」

 娘は父にあこがれていた。学んでいたのだ。たった一人で、

南の言葉を。父と並びたい一心で。


「小竹さん、来てくれたんだ。」

「おお。このマーニさんの案内でね。

そうそう洞窟の外まで送って来てくれて外で待機してくれているF01の中の人の伝言です」

「玉座に座ってしるしを探せって、ユキ子さんならわかるだろうって」


「?玉座に」

再び台座に腰かけると、ひじ掛け付近を触り突起を見つけるユキ子

「これは、点字?少し違う?4、3、1、2」

指先で、突起を押していく

 すると、洞窟の天井に、スクリーンの様な四角形が浮かび上がる。

そこには、少しノイズが載っているものの、左右にゆっくり動く

人型がくっきりと写し出されていた。オレンジ色の瞳、少し青みがかった銀色の髪

 首をもたげ頭上の光る四角形に見入る、ジェイガーと呼ばれた怪物


 そして空間自体が振動する。 空気振動を通し、

 あたり全体に<意味が伝わった>


<意味>には記録してから、長い年限が過ぎたためか、幾つか綻びが生じていた。


「ジェイガー *する、ジェイガ*」

「お前を置いて去った私たちを許して」

「私たちの星が突然**したので、急ぎ*らざるを得なくなったの」

「決して、お前を**た訳じゃあないの」

「私たちが迎えに行くまで寂しいかもしれないけれど、それまで

よい子で待っていてくれる? 愛するジェイガァ」


 次の瞬間<空間を伝わる意味>と光る四角形は突然消失した。


 それを確認したのか、怪物は「くうん」と短い鳴き声を上げる


 静けさが辺りを包みしばらくした頃、怪物にゆっくりと変化が表れていた。

 その身体の表面を小さな光の粒が覆い始める。それは徐々に光の奔流に変化していった。光の奔流は天井に向かって流れ、そして消えた。


 事態の急な展開に硬直していたヨルムがまた山刀を構え動き出す

「やはり、ソール、そなたにも皆にも消えてもらう」


「もう止して、父さんいやヨルム」

 娘の声に、ヨルムが動きを止めた時、

 それまで、居たのかどうか、分からないほどの存在感だった、

青い目のフランス人連絡員が口を開く。


「はい、皆さん止まって~。私も便乗させて貰ってきました。

「ねえねえ、ウルの人、そこまでやられると困るな〜あ、我々が

 今まで貴方方をお目溢していたのは外向きには人畜無害だと

上が考えていたからですよ〜お」

「私達もまさか上位存在に放置された生き物が自分と似たような船舶にじゃれついていたなんて考えてもいませんでしたがね。

まあJガー氏ももう消えちゃいましたしね。安心召されいって感じでしょうか〜ね」


 ユキ子がその姿に向かって、呼びかける。

「アランさん?」


「それとお目溢ししているのは貴方方をも同じですよ神健人の娘ユキ子さん、そして箱の人。

私の名前はアラン・バルタン。貴方の様にこの星を愛してやまない一人ですよ〜お ふふふ」


 青い目の男の影が震える様に、徐々にボケていく。その姿は、まるで。

 そして直後、防衛軍連絡係の男は忽然と姿を消した。

幾人かの人々を残して記憶ごと。記録ごと。


#そして伝説へ


 ウル族の少女マーニは、太陽と呼ばれた少女の手を両手でしっかりと握りしめていた。そしてこの2日で更に流暢になった南の言葉で

「本当にありがとう、ユキ」

「あなた達のおかげで私たちウル族は呪いから本当の意味で解放された。ユキ私の*になってくれる?」

 帰り道はF01に乗って帰ると自分を通した少女は太陽を思わせる明るいオレンジ色のスーツに着替えを終え、月と呼ばれた少女の手を握り返す。

「もちろんよマニ、いえ次の里長さん。ずっと友達」そして向かい合った少女の額を人差し指でそっとツンとつつく。

「これってウル族の、もうユキには敵わないなあ」

「これマーニ、ソール様に失礼だぞ」

「本当は塔の前に設置するソール様とトール神様の像の建立式にはご招待したいのですが、皆さんもお忙しいでしょうし」


空気を2番目に読まない男のひと言が

「いやあ、こんなに美味い魚介類が食べられるんなら毎週だって来ちゃいますよ」

「「小隊長らしいや」」

「うるせえんだよ、お前らだって俺よりよっぽど食ってたじゃねえか」

「だってなあ、なあ」


防衛軍日本支部の誇る海難調査船あかつき丸220トンはバレンツ海に向かって出港する。

「「さいなら〜さいなら〜」」


見送る月と呼ばれた少女の目にはうっすら光る輝きが見えた。


「ああ、なんて気持ちのいい連中だったんだろう」


涙をぬぐった少女は、あかつき丸の上空を飛ぶ巨大な赤い人型に目を向けると


「またいつか会おうねユキ。私の*」


#エピローグ


神家の食卓

「ああ、全然帰って来んなあ」

「通信装置もずっと双方向で

閉じてるし」

「寂しいよぉ、ユキコおお」


「ダンナ様、イクツニナッタ?」


FIN


蛇足の蛇足 冬コミ用冊子用おまけ


「ねえねえマンさん、あの玉座の仕掛けどうやって分かったのぉ」


「えい!教えなさいよグリグリグリぃ」


「よしなさいユキコ、ユキコさん計器類をグリグリしない!くすぐったいから」


「簡単な事さ初歩だよ。やや特徴は薄れていたが、ウル族の人たちにはプロキオン人の特徴が現れていた。プロキオン人といえば触覚に頼って巨大文明を築いた偉大な種族なのさ。彼らが家族以外に大事な秘密を隠すときに、椅子の肘に簡単な暗号彫りで隠すんだって知ってたからね。」


「なあんだそんな理由?」


「そう推理の種なんて明かしてみれば意外に簡単なものなのだよ」

「ふっふっふっ」


「んもう、バカ。そこ調子に乗らない!」


「アイサー・ボス」


FIN




今回はユキ子を含むキャラクターが自分達で

動き出すという貴重な経験をしながら書いて

いました。ほぼ自動書記に近い状態を経験した

のは初めてでした。

その熱が残ってしいその日のうちに書き上げた

のが次話「ウルの少女」です

お愉しみ頂ければ幸いです。では今日は2話同時

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