番外編「再訪のM」
最終話二部作に続くエピソードになります。
出来れば、本編をお読みになってからの方が内容がピンと来ると思います。
「再訪のM」
Mラス
坂元幕僚長
#プロローグ
その男には少年の頃、心に秘した出来事があった。
だが、ひたすら心の奥底に「その出来事」を押し込めようとするあまり
時折脳裏に浮かぶ断片的なイメージ「河原、夕焼け」そして「M」という言葉だけを残し、少年はその記憶を忘れ、大人になっていく。
そして、今彼は…
「奥、奥参謀は居るか?」
「は、坂元幕僚長」
「関谷のやつに依頼した件は今どうなっている」
茶の調度で統一された執務室で軍服に身を包んだ男が居丈高そのものの声をあげる。
「それにつきましては、例の細胞の件も含め順調だと聞いております…
どうされましたか幕僚長?お顔の色が優れませんが」
「何でもない、いつもの頭痛だ」
額に汗を滲ませながら重厚なテーブルに手を付きつつ独白する男。
『時々見えるこの映像は何なのだ、夕焼けの河原、Mと言う響きと黒い影、
そして地球を…くれ。だと
いやいやいくら何でも荒唐無稽過ぎる!』
「もういいお前は参謀室に戻れ、奥
俺は少し出てくる」
「は、了解です」
敬礼しながら、坂元の執務室から出て来た奥と呼ばれた参謀は
「幕僚長は、またいつもの所か?」
独り言を呟きつつ、呼び出しに訪れているパイロット父娘の待つ彼の部屋に戻って行った。
#河原にて
『ここだ、この河原で一体何が?』
坂元は、逢魔が時と呼ばれる夕暮れに記憶の断片が残る河原に訪れていた。
だが<その場所>を訪れても、彼の頭痛はいつもの様には治まらず、むしろ強さを増していった。更には金属を響かす様な耳鳴りさえ伴うように思えた。
「ぐうっ」
彼の苦悶がピークに達したと思われたまさにその時、河原の何もない空中にすうっと<切れ目>が入る。そして何も存在しないはずの空間に、切れ目から吹き出した黒い粒が、渦を巻き集まりみるみる固まりを作っていく。その黒い陰影は、あろうことか、坂元の頭に直接響く声で語りかけてきたのだ。いつも脳裏に浮かぶあの声で…
「おや、もしかして君…」
#再来のM
「ふむ、久しぶりにこのパスを通って地球に来てみれば」
「あの時真っ白だった魂が、良い感じに汚れ育っているじゃないか」
「だからこの星の人間は面白い、魂の色が変わるなんて珍しい生き物だ」
微動だにできない坂元。
『身体が動かん、それに、こいつは何を言ってるんだ、魂だと、俺の?』
「僕はMラス、覚えているかな?そうそう、君にはちょっとだけ踊ってもらおう」
「で、君ソルプラズマって知ってる?君達はあれの小さいのを自分たちで作ったんだろ?正直感心したよ」
「実は僕には、この星にお気に入りの存在がいてね、彼らが起こす茶番をもう少し見物したいので、君にちょっと力を貸して欲しいんだ」
「大丈夫、君は何も考え無くて良い、その時が来れば身体が勝手に動く様に<仕込んで>おくよ」
「では頼んだよ、とは言っても今回も君は覚えて居られないだろうけど」
呆然とする坂元の前でMラスと名乗った影は少しずつ輪郭がぼやけ
跡形もなく消えていた。
「ん?もう、夜か。こんな河原で俺は何をしていたんだっけ?」
あれだけ頑固だった頭痛もすっかり癒え、坂元幕僚長は帰路についた。
#エピローグ
神家の食卓
食卓に乗った銀の小箱と話をしているユキ子、ちょっとだけ行儀悪く、ほうじ茶で、お煎餅を齧りながら。
「むぐむぐ、ほれってあの※水漏れ騒ぎの時の、Mなんとかっていう難しいことを言う人のこと?」
「まあそう。少し前に奴が高次元パスを通った気配が有って、すぐ消えたんだ。
何を企んでいたかは不明」
「消えちゃったなら大丈夫なんじゃない?」
「なあ、お二人さん。父さんも、会話に入れてくれん?ちと寂しいよ」
「ダンナ様は、タエガ相手シテイテヤル」
「「そうして貰ってて」」
「そんなあ、そのシンクロ具合、父さんちょっとグレちゃうよ」
「邪魔シナイ」
FIN?
※本編第7話「決戦、海底要塞!」Mラス登場の回のこと
最終話二部作に続くエピソードになります。幕僚長がなぜ、あそこまで水爆ミサイルの発射にこだわったのか
自分なりに消化したエピソードでした。
では、また遠くないうちにお会いしましょう。




