先輩
一眠りして熱が下がったアスカと、ドキドキしすぎて熱が何なのか分からなくなったスグルは保健室を後にした。
「本当にご迷惑をお掛けして!」
アスカは平謝りである。
「いいよいいよ、アスカさんの寝顔が見れただけで得した気分だよ」
スグルは手を振る。
「スグル君は教室戻る?」
「ううん、僕は帰るよ。まだ熱ある気がする…」
結局眠れていない。
おでこにキスした事を思い出してしまった。
「そうだね、顔が赤い気がする」
アスカがスグルの顔を覗き込む。
「へ?あぁ、でしょ?」
「あれ?岸さんじゃないか」
後ろから声がした。
振り向くと背の高い筋肉質な男が手を振っている。
「秦先輩」
剣道部主将の秦ツヨシが近づいて来た。
彼は、かつての教育係だった騎士の先輩に顔が似ていて、ちょっと苦手である。
「相変わらず美しいねー。男と2人で歩いてるなんて珍しい。君は?」
スグルに視線をうつす。
「同級生の石見です。」
無難に挨拶するスグル。
「ふぅん。岸さんと仲良いんだね?」
秦はスグルを睨んでいる。
「秦先輩、スグル君は体調が悪いので今から帰宅するんです」
アスカは秦に説明する。
何だか騎士が王子に楯突いているようで焦る。
「そうか、呼び止めて悪かったねー。岸さんはクラスへ行くの?」
「えぇ。」
「じゃあ一緒に行こうかなあ」
秦がアスカの手を取る。
ひぃ!やめてくれ、騎士時代のあの地獄の稽古を思い出してしまう!
「勝手に女性の手を取るなんてどうかと思います。」
スグルが秦の手を払いのけ、アスカの前に立つ。
「ふぅん。まあ、いいや。じゃあね岸さん」
秦は手を振って去って行った。
「スグル君…あの」
「あ!勝手にすみません。アスカさんが嫌がってる気がして…じゃあ、僕はこれで」
アスカはスグルの服の裾を掴む。
「…!アスカさん?」
スグルが驚いて振り向く。
「あの!ありがとうございます…」
小さい声でお礼を言うアスカ。
「うん、全然!」
自宅までの帰り道、スグルはため息をついた。
急に呼び止められてびっくりした…まだドキドキしてる。
あの子、すごい美人で何でもできる超人だと思ってたのに…反応が可愛すぎて困る。
また熱が上がりそうだ。
秦ツヨシはモテる。
彼女はあえて作らない派だ。
部活中もギャラリーは多い。
岸アスカは美しい。おまけに学業もスポーツも難なくこなす秀才だ。
彼女にもチヤホヤされたい!
でも、彼女は秦を避けている傾向がある。
自分が声をかければ、女は誰しもキラキラした視線を向けてくれた。なのに岸アスカは、すごく嫌そうな顔をするのだ。
「きっと俺に振り向かせてみせる!」
変に気合いの入った秦だった。




