王子
「ご、ごめん!」
スグルがアスカからすぐ離れる。
「いや、私が急に引っ張ったから…ごめん」
アスカもしどろもどろである。
なかなかに気まずい沈黙である。
「雨小降りになってきたし、行こっか」
「そ、そうだね!」
何とか家にたどり着き、アスカは盛大に息を吐いた。
まさか王子が…
しかもキスを…!
守る対象として、仕える身として尊敬し、慕っていた存在にこの世で会えるとは!
でも、今はただの同級生。
私はどうしたらいいのか!
アスカは眠れない夜を過ごすのだった。
翌日、昇降口でアヤと会った。
「おはよーアスカ」
「おはよ…」
スグル君がいる!
向こうもこちらに気が付く。
「おはようアスカさん」
「おはようございます!」
咄嗟に敬語が出てしまうアスカ。
スグル君は微笑んで歩いて行った。
「アスカ?どうしたの?」
アヤが怪しんでいる。
言えない。昨日の事は言えない!
「いや、何でもないよっ」
「ふぅ〜ん?アスカ顔赤いけど、熱ある?」
おでこを触るアヤ
「わかんないや。具合悪くなったら保健室行きなよ?」
分かんないのかい。
授業も頭に入らない。
これは風邪かな…
保健室にはアスカを心配して何人か着いてきてくれた。
「はいはい病人だけ入ってね〜」
先生がアスカ以外を追い払う。
そこにはスグル君もいた。
「え?どうしてここに?」
アスカが訊ねる。
「なんか寒気がして、熱あるかなって思って、アスカさんは?」
「私も頭がぼーっとするの」
「それじゃあ2人とも寝てなさい。先生ちょっと職員室行ってくるから」
先生は保健室から出て行った。
「きっと昨日の雨だよね、ごめんね」
アスカがスグルに謝る。
「僕が勝手にやった事だし、謝らないで」
「うん、寝よっか」
授業中に保健室で寝るのは初めてだ。
夢の中で、アスカは騎士になっていた。武功を納め、隊長として王子への謁見をしている。
ありがとう、君は国の宝だ。これからも国の為に尽力してくれ。
王子の手が肩に触れる。
頼りにしているよ、隊長。
優しく笑う顔、穏やかな声、やっぱりスグル君は王子と同じだ…




