78.
老人「儂は世界の謎を知っている……」
勇者「教えて」
老人「不躾な奴じゃの……」
老人「――だが、教えることは出来ぬ」
勇者「なんでよ、僕、勇者だよ」
老人「勇者だろうが村人だろうが、教えられぬのじゃ」
勇者「えー、何でも相談にのるからさぁ」
老人「これはそういう問題ではないのじゃよ……」
勇者「どういうことなの?」
老人「確かに儂は世界の謎を知っている……」
老人「じゃが、その謎が何だったか忘れてしまったのじゃ!」
勇者「……えぇ?」
老人「じゃから、教えることは叶わんのだ」
勇者「それ、知ってるとは言わないんじゃないの?」
老人「かつては知っておったのじゃよ……?」
勇者「今覚えてなきゃ、何の役にもたたないじゃん」
老人「それは、そうなのだが……」
勇者「何か少しでも覚えてることは?」
老人「……とんと、はっきりせぬ」
老人「知っていたということを、朧げに思い出せるくらいじゃ」
勇者「……。」
勇者「うーん、何かこうしたら思い出せそうとかは?」
老人「見当もつかぬな」
勇者「割とそういうのありがちだから。考えて……」
老人「儂も何十年とそうしてきた。全ては無駄じゃったがの……」
勇者「何十年も前から忘れてるの?」
老人「うむ」
勇者「うむ、じゃないよ。よく大層なこと言えたね」
老人「世界の謎を知っておるのは儂だけじゃからの……」
勇者「でも、忘れた」
老人「……。」
勇者「……。」
老人「儂は、知っていたんじゃ……」
老人「それだけは信じてはくれんかの」
勇者「同じこと言うけどさ」
勇者「今、覚えてなかったら、だめじゃん」
老人「……。」
勇者「……。」
死まで、あと23日




