【3-6】『それぞれの放課後』/《第3章:審判記録》
【本作はpixiv・小説家になろう 同時連載作品です】
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この作品は、オリジナルのダークファンタジー小説です。全7章構成の連載形式で投稿します。
こちらの物語は、pixivにも同時掲載しております。
https://www.pixiv.net/novel/series/14203170
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最新話の更新は1〜2日に1回のペースになります。
また、更新の時間帯については、日付が変わった直後〜お昼ごろまでの間に投稿することが多くなる予定です。
少しお待たせしてしまうこともあるかもしれませんが、継続して更新して行きますので、楽しみにお待ちいただけると幸いです。
更新時には活動報告でもお知らせしますので、よければチェックしてください!
それでは
第3章 ふれあいと違和感
scene8 それぞれの放課後
お楽しみください。
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scene8『それぞれの放課後』
屋上からレンジの姿が消えたあとも
シオンはしばらく、その場から動けなかった。
震える拳。冷たい夕風。
“証”を奪われた事実だけが、脈打つように体を支配していた。
「……優真に、言わなきゃ……」
かすれた声が、夕焼けに吸い込まれていく。
*
教室には、もうほとんど人がいなかった。
カバンをいつもの癖で肩にかけようとした律だったが――
「……っ、やべっ」
ほんの数センチ浮かせたその瞬間、脳裏に鋭い声と氷のような視線がよぎる。
反射的に動きを止め、そのままそっとカバンを降ろす。
代わりに、両手でしっかりと抱きかかえるように持ち直すと、何食わぬ顔で姿勢もきっちり。
思わず周囲を見回すあたり、完全にトラウマが刻まれていた。
そこへ
「……おーい」
後ろのドアが開く音と同時に、軽い声が飛んできた。
「ん?」
振り向くと、そこには澪がいた。
少し伸びた前髪を指で直しながら、気だるげな顔で立っている。
律は一瞬だけ、言葉を詰まらせて――
それをごまかすように、いつもの調子で口を開いた。
「あ、現れたな。赤点怪獣・ミオゴン」
「……は?」
澪が眉を上げて笑う。
「なんそれ(笑) 怪獣なの、あんたもでしょ、赤点ペアでしょ(笑)」
「ははっ。まあな、同じ試練を乗り越えた仲だし?」
「うける(笑)」
気がつけば、ふたりの距離は自然と縮んでいた。
かつては、隣のクラスの“話したことのない親友の幼馴染”だったはずの澪。
そして今は、気まずいまま、何も言い出せずにいる関係。
──それでも。
共に乗り越えた赤点補習の地獄の日々のおかげか、
こうして放課後に声をかけ合えるくらいには、また少し、距離が縮まってきたような気がしていた。
「優真いないしさ」
澪がカバンを揺らしながら言う。
「……一緒に、帰ろ?」
「……おぅ」
照れくささを紛らわせるように、律は少しだけ早足で歩き出した。
澪が、その横に並ぶ。
そのまま、夕日に染まる昇降口を抜けていく二人。
どこかぎこちなくて、でも、少しだけ心地よい。
校門の向こう、ゆっくりと風が吹いていた。
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第3章における《審判記録》
記録官:第四審査観察局付 エルヴァ=コルネリウス
報告対象:一ノ瀬優真/契約悪魔:シオン・ヴェリダ
概況:
対象者の精神状態に揺らぎが見られるも、自我の核は保持されている。
対外的摩擦が契機となり、自己認識の歪みに拍車をかけつつある。
特筆事項:
契約悪魔による感情的介入が頻発。対象者の安定を助ける一方、
干渉の明確な意図が見えにくく、審査基準としての評価が困難な場面も多い。
評価:
関係性の深化とともに、証の本質的意味を問う段階に入ったと見られる。
現段階では進行を見守る。次節にて転機が訪れる可能性あり。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
《次回以降投稿予定》
8/8(金)第4章 行き止まりの午後
【4-1】『心は、すぐそばにあるのに』
8/9(土)
【4-2】『侵入者』
※このシーンには、精神的・言語的な圧迫描写、および性的・暴力的示唆を含む表現があります。苦手な方はご注意ください。
8/10(日)
【4-3】『走れ』
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