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それでも、この未来を。  作者: 風見鶏
第3章 ふれあいと違和感
13/35

【3-4】『文化祭準備と悪魔モード』

【本作はpixiv・小説家になろう 同時連載作品です】


ご覧いただき、ありがとうございます!

この作品は、オリジナルのダークファンタジー小説です。全7章構成の連載形式で投稿します。


こちらの物語は、pixivにも同時掲載しております。

https://www.pixiv.net/novel/series/14203170

(※創作活動としての併載です。転載目的ではありません。)


*お知らせ*

最新話の更新は1〜2日に1回のペースになります。

また、更新の時間帯については、日付が変わった直後〜お昼ごろまでの間に投稿することが多くなる予定です。


少しお待たせしてしまうこともあるかもしれませんが、継続して更新して行きますので、楽しみにお待ちいただけると幸いです。


更新時には活動報告でもお知らせしますので、よければチェックしてください!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


※この作品の無断転載・複製・AI学習への使用を禁止します。Repost is prohibited.


scene6 文化祭準備と悪魔モード



放課後の教室は、段ボールや模造紙が散乱する戦場だった。

誰かの笑い声、ガムテープのちぎれる音、背後で流れる軽快なポップス――。


もうすぐ文化祭。

廊下には他クラスの張り紙も増え始め、学校全体がにわかに浮き足立っていた。


そんなざわめきの中で、優真はというと――


「えっと、これがC組のぶんで……次は家庭科室から鍋借りてこいって……!?」


両手に模造紙と配布物を抱えたまま、肩には紙袋、首からはタイマーのような小道具。

その姿はまるで、便利屋にされる千手観音。


そのとき。


「ゆーうーまーっ!」


軽やかに響く声とともに、ぴょこんと窓際から飛び出してきたのは――

悪魔モードのシオンだった。


「うわっ!?ま、またそれ……っ!!?」


突然の登場に、優真は反射的に顔を逸らした。


視界の端に、黒くしなやかな尻尾と小さな角、そして露出度の高い装束が映る。

動くたびにさらりと揺れては、肩やおへそ、太ももをあっけらかんと晒している。


焦った優真は、模造紙を落としそうになりながらも、かろうじて踏ん張る。


シオンは最近、“人間の紫苑の姿”でいる時間が極端に減っていた。

天城紫苑としての名前も、学校ではすっかり見かけなくなっている。


けれど、優真の前では――たとえ姿が違っても、彼女はやっぱり「紫苑」だった。


「きーてよ~、B組の劇って結局ホラー系になったんだって!いまどきゾンビとか古くない?」


「……あぁ、、うん……」


優真は曖昧な返事を返しながら、ひたすらシオンの方を見ないようにしていた。


シオンはきょとんとした顔で優真の顔をのぞきこむ。


「……ねえ、優真?」


「ん、なに?」


「聞いてる? さっきから全然こっち見てくれないんだけど~」


「あっ……いや、その、見てないわけじゃなくて……」


優真はあたふたとしながら言葉を濁す。

目のやり場に困っているのが、誰の目にも明らかだった。


シオンは少し考えるように小首をかしげたあと、にんまりと笑った。


「……もしかして、照れてる?」


「えっ!!? いや、なんっ……なんでっ……!!」


「だってほら、このカッコだと、お腹とか足とか、けっこう出てるし♡」


「~~~~~っ!!/////」


優真は耳まで真っ赤になり、顔をぶんっと背けた。


慌てふためく姿を見てシオンはニヤニヤと楽しそうな顔で覗きこみながら――


「しょうがないなぁ、じゃあ、これならいい?」


ぱちんと指を鳴らすと、装束はTシャツにショートパンツというふだん着姿に変わった。


「……っ!? そ、そんなことできるの!?」


ようやく顔を上げた優真を見て、


シオンはいたずらっぽく笑う。


「できる♫ちなみに、尻尾と羽もしまえるよ」


ふわりと消える黒い尾と羽。


「その、、ツノは……?」


「しまえない♡」(即答)


「上手に隠せる子もいるけど、あたしはまだそこまで上手じゃないんだよね~」


そう言って、ツノを指でつんつんしながら笑うシオンに、優真は半ば呆れたように苦笑いした。


「まあでも、これならみんなに見えないし、くっついてても澪に怒られないし~?」


「……苦しい言い訳……」


シオンがくすくす笑いながら、ふいに優真の背中にぴとっとくっついた。


「それにね、悪魔モードの方が、実は時間操作とかしやすいんだよ?」


彼女がそう告げた瞬間――

教室の喧騒が、ふっと消えた。


まわりのみんなは蝋人形のようにその場にとどまり、ぴくりとも動かない。


「……わ……あのときのやつ……」


優真が驚きを隠せずにいると、シオンはご機嫌で黒板の上に『文化祭がんばるマン☆☆ ゆうま』と落書きをした。


そしてーー


ぱん、と手を叩いた瞬間、止まっていた時間はまた何事もなかったかのように流れはじめた。


「…すごっ……」



「と、いうわけで、あたしはしばらくこのまんまでいーの♫」


以前なら「サボってるだけでしょ」と笑い飛ばせたかもしれない。

でも今のシオンは――


(……なんか、ちょっとしんどそうだ)


心配そうに彼女を見つめていると、シオンはそれに気づいたように顔を近づけてきた。


「なになにー? やっぱりこっちの方が好きだった?♡」


ぱちん、と指を鳴らして、また一瞬で例の“悪魔衣装”に戻る。


「のわぁぁっ!!?!?」


思わず首がもげそうなくらい勢いよく顔を背けた。


耳まで真っ赤な優真を見て、シオンは腹を抱えて大笑いした。


「あはははは! かわいすぎ(笑)」



「かわいいって…もう…」



そんな和やかな空気の中ーー



ふとシオンの声色が変わった。


「そういえばさ……」


少しだけトーンを落としたその声に、優真が視線を向ける。


「煉司先生やっぱ変だよ!さっきもなんか、何気ないふうに、こっちの教室見てたし!」


「絶対狙われてる!前、保健室でも優真の服めくろうとしてたし!マジで近づかないほうがいいって!怪しい教師ランキングぶっちぎり1位!!」


「ははっ、そんなことしなくたって人気者なのにね、あの人(笑)それにーー」


「紫苑も、めくろうとしてたよね?前…」


「わっ!!私はいいの!」

シオンは慌てて叫ぶ。


笑って返しながらも――

優真は、どこか引っかかるものを感じていた。


紫苑の軽口。

だけど、その直後。


「優真……煉司先生には、気をつけて」


その言葉だけは、はっきりと“本気”の色を帯びていた。


震えるようなその声に、優真の胸が小さくざわめく。

まるで、何かが近づいてくる気配を、誰よりも早く察知した動物のように――。


シオンのまとう魔力は、確実に以前よりも弱まっていた。

それでも、彼女は優真の傍を離れようとはしなかった。


(なんで……あたし、こんなに焦ってるんだろ……)


シオンは自分の胸の奥で、じくじくと疼く不安を押し込めるように、

再び優真の背中にぴと、とくっついた。


最後までお読みいただき、ありがとうございました!


《次回以降投稿予定》


8/6(水)【3-5】『夕焼けの屋上と断絶』

(※このエピソードには、一部暴力的な描写・精神的な圧迫表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。)


8/7(木)【3-6】『それぞれの放課後』/《第3章:審判記録》



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