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それでも、この未来を。  作者: 風見鶏
第3章 ふれあいと違和感
12/35

【3-3】『魔界の試験と煉司の因縁』/ 『保健室の外―紫苑の混乱』

【本作はpixiv・小説家になろう 同時連載作品です】


ご覧いただき、ありがとうございます!

この作品は、オリジナルのダークファンタジー小説です。全7章構成の連載形式で投稿します。


こちらの物語は、pixivにも同時掲載しております。

https://www.pixiv.net/novel/series/14203170

(※創作活動としての併載です。転載目的ではありません。)



*お知らせ*

最新話の更新は1〜2日に1回のペースになります。

また、更新の時間帯については、日付が変わった直後〜お昼ごろまでの間に投稿することが多くなる予定です。

少しお待たせしてしまうこともあるかもしれませんが、継続して更新して行きますので、楽しみにお待ちいただけると幸いです。


更新時には活動報告でもお知らせしますので、よければチェックしてください!


⭐︎pixivで、オリジナル小説『それでも、この未来を。」の登場人物(優真、紫苑、律、澪)をイメージしてイラストで描いてみました!それぞれの性格にあわせ、表情差分練習中( •̀∀︎•́ )✧︎

よければ、以下のリンクから覗きにきてください!

(直接飛べない場合は、URLをブラウザにコピペしてごらんくださいm(_ _)m)


【pixivイラストページ】

①優真

https://www.pixiv.net/artworks/133440285


②紫苑

https://www.pixiv.net/artworks/133440446


③律

https://www.pixiv.net/artworks/133440628


④澪

https://www.pixiv.net/artworks/133440704


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


※この作品の無断転載・複製・AI学習への使用を禁止します。Repost is prohibited.


scene4 魔界の試験と煉司の因縁



ここは、闇の底を思わせる空間。

円形の部屋に黒曜石のような床が敷かれ、数名の人影の中心に立つ一人の少女――シオン・ヴェリダは、審査員長の前に腕を組んで立っていた。


「えーと……要するに、“人間界で契約者と信頼関係を築けたら合格”、ってこと?」


シオンが手をあげるようにして質問すると、目の前の審査員長は軽く眉を動かし、静かに首を横に振った。


「――いいや、それは“半分”正しい。だが、まだ本質には至っていない」


「……え?」


「試験の目的は“人間の感情と関係性に対する干渉能力”を測ることにある。

したがって、正式な合格条件は以下のとおりだ」


審査員長が淡々と読み上げる。


「『契約者から“証”を受け取った上で、その契約者を“自発的に不幸に導くこと”』

この二点を満たすことで初めて、試験は合格と見なされる」


シオンは「ん?」と声を漏らし、なぜか両手を前に出して指を折り始めた。

まるで計算でもしているかのように。


「証って……仲良くなったらもらえるもので……そのあと不幸にする?

……え?仲良くなって意地悪すればいいの?

……いやでもそれじゃ証くれないよね??

……ん?じゃあ仲良くしてから、そっと離れる?……なんかそれってちょっと可哀想じゃ――」


額に手を当ててうなりながら、しばらく

ぐるぐると考え込んではいるものの、どうやら本来の“意図”にはまだ辿り着けていない。


その様子を遠巻きに見ていた審査員長はため息をついた。


ひと通りの説明が終わり、


受験者たちはそれぞれ出口に向かって動き始めていた。


シオンも深く息を吐いてその場を後にしようと、廊下に出る。


そのとき――


「よー、劣等生。」


廊下の角から、まるでシオンの動きを読んでいたかのようにふいに現れたのは、レンジだった。


レンジ・グラジール。

シオンと同期だが、家柄も階位もかなり上位の存在だ。


「さっきの説明、ちゃんと理解できてた?お前のことだし、どうせ半分も頭に入ってないだろ。」

「うっかりミスで失格、なんてことになったら……そのときは、一生奴隷として雇ってやるよ」


にやりと口角を吊り上げ、レンジは楽しげに笑う。


「な……っ!そんなん、試験の規約くらい最初から全部知ってるし!!」

シオンは眉を吊り上げて反論する。

「あんたこそ、いつもみたいにゴリ押しだけして、失敗~とかになんないようにね!」


「へぇ、心配してくれるんだ?優しいなぁ、シオンちゃんは」


レンジはわざとらしく顔を近づけ、シオンの頬に指先を這わせる。さらに首筋にも軽く触れ――


「っ……やめてよ!!!」

シオンはその手を払って後ずさる。


「ははっ、せいぜい頑張れよ、落ちこぼれくん」

あざ笑うように吐き捨て、レンジはくるりと背を向けて歩き出した。


そのすぐ背後には、漆黒の鳥の仮面をつけた、従者らしき悪魔の姿。

無言のままシオンに一礼し、レンジのあとに続いていく。


「……はー、イラつく! なんなのよ、あのチヤホヤされて育ったただのわがままお坊ちゃんが……!」


そうつぶやいたときには、レンジとその従者の姿は、まるで煙に溶けるように、廊下の先から完全に消えていた。



――――――――――


scene5 保健室の外――紫苑の混乱



「ねえ、ねえちょっと……紫苑?」


教室への渡り廊下を、紫苑は勢いそのままに歩いていた。まるで何かに追われるような速さで。

腕を引っ張られながら、優真は慌てて問いかける。


「紫苑、あの、ちょっと待って……!」


「なに?」


ようやく足を止めた紫苑が、短く返す。

だがその声は、どこかとげとげしくて、いつもの紫苑らしくない。



「……怒ってる?」


そう訊ねた優真の声に、紫苑はぴくりと肩を揺らし――


「怒ってない!!」


叫ぶように言い放ち、手を振り払ってそっぽを向いた。


優真は、振りほどかれた手をそっと握り直す。

そして、紫苑の正面に回り込むように立って、まっすぐに目を見つめた。



「怒ってるよ。……どうしたの?

言いたくないなら、今は無理に聞かないけど…


心配だからさ。」


――その一言に、紫苑の表情が崩れる。


「ごめん、あの……ほんとに、なんでもない、大丈夫」


搾り出すような声だった。


けれど、紫苑の頭の中は、そんな言葉とは裏腹に、めちゃくちゃだった。


(なんで……なんであいつがいるの? 何しに来たの? なんで優真に……)


(あたしの契約者だって、気づいた上で――近づいてきた……?)


(……まさか、試験、、邪魔する気なんじゃ…)


紫苑の脳裏に、あの日の記憶が、ざわりと蘇る。



ー「うっかりミスで失格、なんてことになったらさぁ……そのときは、一生奴隷として雇ってやるよ」ー




「紫苑……?」


優真が不安そうに声をかけたその瞬間、紫苑は慌てて笑顔を作った。


「やだなぁ!ほんとになんでもないってば! 心配しすぎ!」


その声は少し裏返っていたが、優真は無理に追及せず、ただそっと手を離した。


(優真に不安な顔をさせたくない……)


紫苑は、胸の奥でざらつくものを抱えたまま、そっと目を伏せた。



廊下の窓の外では、曇り空の下、数羽のカラスが低く旋回している。


どこか、不穏な気配をまとったまま。



最後までお読みいただき、ありがとうございました!



《次回以降投稿予定》

※8/5(火)、お休み予定でしたが変更になりました。


8/5(火)【3-4】『文化祭準備と悪魔モード』


8/6(水)【3-5】『夕焼けの屋上と断絶』

(※このエピソードには、一部暴力的な描写・精神的な圧迫表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。)


8/7(木)【3-6】『それぞれの放課後』/《第3章:審判記録》




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