【3-1】『ボール、顔面キャッチ事件』
【本作はpixiv・小説家になろう 同時連載作品です】
ご覧いただき、ありがとうございます!
この作品は、オリジナルのダークファンタジー小説です。全7章構成の連載形式で投稿します。
こちらの物語は、pixivにも同時掲載しております。
https://www.pixiv.net/novel/series/14203170
(※創作活動としての併載です。転載目的ではありません。)
*お知らせ*
最新話の更新は1〜2日に1回のペースになります。
少しお待たせしてしまうこともあるかもしれませんが、継続して更新して行きますので、楽しみにお待ちいただけると幸いです。
また、更新の時間帯については、日付が変わった直後〜お昼ごろまでの間に投稿することが多くなる予定です。
更新時には活動報告でもお知らせしますので、よければチェックしてください!
それでは
第3章 ふれあいと違和感
scene1『ボール、顔面キャッチ事件』
お楽しみください!
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scene1『ボール、顔面キャッチ事件』
文化祭準備の日の騒動以来、澪は紫苑を避けているようだ。
汗ばむ午後。
体育の授業が終わったばかりの運動場は、土埃と熱気が残り、どこかぼんやりとした空気が漂っていた。
水道横で、優真は前髪をかき上げ、勢いよく顔を洗った。
冷たい水が額から流れ落ち、火照った頬を伝う。
(……はぁ、気持ちい……)
シャツのそででぬれた頬をぬぐおうとしていた、そのとき──。
「……一ノ瀬くん?」
ぴし、と背筋がのびた。
「シャツって、タオル代わりに使っていいものだっけ?」
静かで落ち着いた声。けれど、ぞくりと背筋が凍るような圧がある。
その声音はまさに、生徒たちを震え上がらせる担任・黒田先生そのものだった。……が。
(……なんか、ちょっと違う)
完璧なはずの口調に、ほんの少しの「軽さ」が混じっていた。
背後に感じる気配も、鋭さよりは、どこか楽しげで──
視界の端に、風に揺れる銀髪がちらりと映る。
「……紫苑?」
優真は振り向かず、顔をぬぐったまま、静かに言った。
「え、なんでバレたの!? 今の、めっちゃ似てたでしょ!?」
「銀髪でバレる」
「……そこか~~~~!」
紫苑は残念そうに両肩を落としながら、ぴょんと水道の隣に飛び出してきた。
紫苑は軽やかに笑いながら、蛇口をひねって水を飲む。
その姿を見ながら、優真はふと――口を開いた。
「なあ、紫苑。……あれから、澪とは……」
「ん? べつに? もう喧嘩してないし、そもそもあれから話してないや」
紫苑はケロリとして、水をぺろっと舌で拭いながら振り返る。
「まーしょうがないんじゃなーい? あいつ、あたしよりガキンチョだし。……いろんな意味でね?」
いたずらっぽく唇の端を持ち上げて、ニヤリと笑う。
「大人なあたしは、もうぜーんぜん気にしてないし? むしろキーキー澪がいない方が、優真といられるから――あたし的には、いーし?」
そのまま、紫苑はするりと優真に顔を近づけた。
距離が、ぐっと縮まる。
「ちょっ、わっ!!」
優真は思わずのけぞる。
紫苑はへらへらっと、いたずらそうに笑った。
「もー……」
優真はタオルで濡れた顔を拭きながら、呆れたような笑みを浮かべた。
そしてふと、ぽつりと一言。
「でも、そういうとこ……かわいいよね。紫苑は」
「うぇ!?」
不意打ちだった。
紫苑の目がまんまるになり、一瞬で耳まで真っ赤になる。
「な、な、な……っ!?!?!?」
「あはは、やっぱり」
優真はくすっと笑った。
「そう言ったら、紫苑ちゃん、めっちゃおもろい反応するんじゃない? ――って、律が言ってた」
「……なっ……! あいつっ……まじで呪うわ!!」
紫苑が真っ赤な顔で怒りに震える。
その顔を見た優真は、思わず吹き出した。
「や、やめて? 君が言うとマジでシャレになんないから(笑)」
笑い声を漏らしながら、額の汗をぬぐう。
紫苑は、そんな優真の笑顔を見て、ふっと目を細めた。
「ーよかった」
優真はぱちりと瞬きをした。
「……え?」
「んーん、なんでもないっ」
紫苑は顔を背けながら、フフンと鼻で笑ってみせる。
「さ、戻ろっか」
そのときだった。
「うわっ!? あっぶね!!」
「えっ――」
――ドンッ!!!
勢いよく飛んできたサッカーボールが、ちょうど優真の顔面にクリーンヒットした。
「ッんあ"っ!?!?」
「ちょ、優真っ!?!? ……てか誰よ!? 今の!?」
周囲が一瞬ざわついたあと、グラウンドの方から「すみませーーん!!」と叫ぶ声が聞こえてきた。
優真は涙目で鼻を押さえながら、紫苑に肩を貸されつつ、ふらふらと保健室へ向かったーーー
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
《次回以降投稿予定》
8/3(日)【3-2】無題/『予感と鼓動』/『保健室ー静かな侵入』
8/4(月) 【3-3】『魔界の試験と煉司の因縁』/ 『保健室の外―紫苑の混乱』
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