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それでも、この未来を。  作者: 風見鶏
第3章 ふれあいと違和感
10/35

【3-1】『ボール、顔面キャッチ事件』

【本作はpixiv・小説家になろう 同時連載作品です】


ご覧いただき、ありがとうございます!

この作品は、オリジナルのダークファンタジー小説です。全7章構成の連載形式で投稿します。


こちらの物語は、pixivにも同時掲載しております。

https://www.pixiv.net/novel/series/14203170

(※創作活動としての併載です。転載目的ではありません。)

*お知らせ*

最新話の更新は1〜2日に1回のペースになります。

少しお待たせしてしまうこともあるかもしれませんが、継続して更新して行きますので、楽しみにお待ちいただけると幸いです。


また、更新の時間帯については、日付が変わった直後〜お昼ごろまでの間に投稿することが多くなる予定です。


更新時には活動報告でもお知らせしますので、よければチェックしてください!


それでは

第3章 ふれあいと違和感

scene1『ボール、顔面キャッチ事件』


お楽しみください!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


※この作品の無断転載・複製・AI学習への使用を禁止します。Repost is prohibited.


scene1『ボール、顔面キャッチ事件』




文化祭準備の日の騒動以来、澪は紫苑を避けているようだ。


汗ばむ午後。

体育の授業が終わったばかりの運動場は、土埃と熱気が残り、どこかぼんやりとした空気が漂っていた。


水道横で、優真は前髪をかき上げ、勢いよく顔を洗った。

冷たい水が額から流れ落ち、火照った頬を伝う。

(……はぁ、気持ちい……)


シャツのそででぬれた頬をぬぐおうとしていた、そのとき──。


「……一ノ瀬くん?」


ぴし、と背筋がのびた。


「シャツって、タオル代わりに使っていいものだっけ?」


静かで落ち着いた声。けれど、ぞくりと背筋が凍るような圧がある。

その声音はまさに、生徒たちを震え上がらせる担任・黒田先生そのものだった。……が。


(……なんか、ちょっと違う)


完璧なはずの口調に、ほんの少しの「軽さ」が混じっていた。

背後に感じる気配も、鋭さよりは、どこか楽しげで──

視界の端に、風に揺れる銀髪がちらりと映る。


「……紫苑?」


優真は振り向かず、顔をぬぐったまま、静かに言った。


「え、なんでバレたの!? 今の、めっちゃ似てたでしょ!?」


「銀髪でバレる」


「……そこか~~~~!」


紫苑は残念そうに両肩を落としながら、ぴょんと水道の隣に飛び出してきた。


紫苑は軽やかに笑いながら、蛇口をひねって水を飲む。

その姿を見ながら、優真はふと――口を開いた。


「なあ、紫苑。……あれから、澪とは……」


「ん? べつに? もう喧嘩してないし、そもそもあれから話してないや」


紫苑はケロリとして、水をぺろっと舌で拭いながら振り返る。


「まーしょうがないんじゃなーい? あいつ、あたしよりガキンチョだし。……いろんな意味でね?」


いたずらっぽく唇の端を持ち上げて、ニヤリと笑う。


「大人なあたしは、もうぜーんぜん気にしてないし? むしろキーキー澪がいない方が、優真といられるから――あたし的には、いーし?」


そのまま、紫苑はするりと優真に顔を近づけた。

距離が、ぐっと縮まる。


「ちょっ、わっ!!」


優真は思わずのけぞる。

紫苑はへらへらっと、いたずらそうに笑った。


「もー……」


優真はタオルで濡れた顔を拭きながら、呆れたような笑みを浮かべた。


そしてふと、ぽつりと一言。


「でも、そういうとこ……かわいいよね。紫苑は」


「うぇ!?」


不意打ちだった。

紫苑の目がまんまるになり、一瞬で耳まで真っ赤になる。


「な、な、な……っ!?!?!?」


「あはは、やっぱり」


優真はくすっと笑った。


「そう言ったら、紫苑ちゃん、めっちゃおもろい反応するんじゃない? ――って、律が言ってた」


「……なっ……! あいつっ……まじで呪うわ!!」


紫苑が真っ赤な顔で怒りに震える。

その顔を見た優真は、思わず吹き出した。


「や、やめて? 君が言うとマジでシャレになんないから(笑)」


笑い声を漏らしながら、額の汗をぬぐう。

紫苑は、そんな優真の笑顔を見て、ふっと目を細めた。


「ーよかった」




優真はぱちりと瞬きをした。


「……え?」


「んーん、なんでもないっ」


紫苑は顔を背けながら、フフンと鼻で笑ってみせる。


「さ、戻ろっか」


そのときだった。


「うわっ!? あっぶね!!」


「えっ――」


――ドンッ!!!


勢いよく飛んできたサッカーボールが、ちょうど優真の顔面にクリーンヒットした。


「ッんあ"っ!?!?」


「ちょ、優真っ!?!? ……てか誰よ!? 今の!?」


周囲が一瞬ざわついたあと、グラウンドの方から「すみませーーん!!」と叫ぶ声が聞こえてきた。



優真は涙目で鼻を押さえながら、紫苑に肩を貸されつつ、ふらふらと保健室へ向かったーーー


最後までお読みいただき、ありがとうございました!


《次回以降投稿予定》

8/3(日)【3-2】無題/『予感と鼓動』/『保健室ー静かな侵入』

8/4(月) 【3-3】『魔界の試験と煉司の因縁』/ 『保健室の外―紫苑の混乱』



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よろしくお願いいたします。

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