4話 綾乃のお手伝いをする
図書館に入ると、数人の生徒が新刊を本棚へ置く作業をしていた。なるほど、結構な生徒がサボって帰ってしまっているようだ。
俺の顔を見た生徒から「なんで図書館に来たの?」なんて言う小言が聞こえたが、気にしない。それよりも綾乃と悠斗はどこにいるんだろうか?と奥の方へ足を運ぶと、綾乃が1人で作業をしていた。
「篠宮さん、手伝おうか?」
「城咲さん?どうしたんですか?」
「委員長に手が足りないから、応援に行けって言われてなー」
「そうでしたか。じゃあそこに置いてある本を、その棚に並べてもらえますか?」
「分かった」
段ボールの中に入ってるのは、漫画だった。今の学校の図書館は漫画も置くんだな。
「お兄ちゃんが、用事があるって帰ってしまったので助かりました」
「そうだったんだ。なら来て正解だったね」
確か、綾乃が玲司がサボってばっかで来ないから悠斗へ手伝いに来てほしいってお願いするんだよね。それで毎回放課後になったら綾乃元へ向かうのかの選択肢が出るんだったな。
何回も手伝いに行かなかったら、綾乃の好感度ゲージが下がってしまうので、結構重要なイベントだった気がするんだけど、この感じだとあんまり悠斗は来てなさそうだ。
「そういえば、この前はお兄ちゃんがご無礼な事を言ってすいませんでした」
「あー、別にいいよ。気にしてないから……」
申し訳なさそうに頭を下げる綾乃に、俺は気にしていないそぶりを見せる。
まぁ、でもちょっとカチンと来てたけどな。
「貴方が噂の人だとしても、ちゃんとお礼は言わないといけませんよね」
「ま、まぁそうだね……」
むすっとした表情を見せる綾乃、すごく可愛いなぁ……。ていうか、助けたとはいえあまりいい噂のない俺に対して優しいな。
こういう、綾乃たまに見せる優しさに俺は惹かれたんだよね。
その後、俺と綾乃は黙々と作業を進めていると、綾乃は一冊の本を見つけて「これは!」と声を上げる。
「どうしたの?」
「これ見てください!今流行りの異世界ファンタジーの漫画ですよ!」
「へぇー、面白そうだね」
そういえば、綾乃は漫画が好きで、ゲーム本編でも漫画を読んでいるスチルが何枚かあったんだよね。綾乃は異世界ファンタジーの小説が好きで、その話題になると、つい熱くなってしまって早口で語ってしまうんだよね。
そこの綾乃が可愛くて、一時期そこの台詞を聞くためだけに何回もリピートしてた気がする。
「城咲さんはこういう漫画お読みになりますか?」
「まぁ、結構読むかも」
「本当ですか!?」
「う、うん……。アニメとかでも見てたぞ」
俺がそう答えると、綾乃は目をキラキラと輝かせる。
「ちなみに、どのような作品が好きだったりしますか?」
「うーん、追放系とか、スローライフかな?」
「奇遇ですね!私もそのジャンルが好きなんですよー!特にこの作品の主人公のリュカがギルドから追放されて、フィリアと一緒に最強の冒険者に成り上がるこの漫画とか読んでて爽快感があって良いんですよー!」
「そ、そうなんだ」
生の早口で語る綾乃を見て、俺は感動のあまり絶句してしまっていた。生きててよかった……。
その顔を見た綾乃は表情を暗くする。
「あ、すいません。私……漫画の話になるとつい熱く語ってしまう癖があって……」
「別に大丈夫だよ。本当に漫画が好きなんだなって驚いてただけ」
「そ、そうでしたか。なら良かったです」
「俺もその漫画読んでみようかな?」
「はい!是非是非!」
なんか漫画の話だけで、綾乃と距離が近くなったような気がして嬉しいな。
その後俺達は、閉門ギリギリまで作業を続けていたのだった。
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