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僕の私の夢は超イージーモード。だった・・・  作者: ma-no
四章 宇宙人との戦争

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50 最後の言葉


 玉音放送の件と宇宙人反撃計画を説明した石坂は、蒼正と純菜にも話を振る。


「そっちは最近どうだ?」

「僕達は~……ちょっと前まで、万単位の宇宙人と戦っていましたよ」

「ここ数日は現れ無いから、兵力温存かと思ってます」

「さっきの話だと、ロケットの装置を狙ってるんじゃない?」

「あ、それも有りそうね。関係者を狙ってるとか?」

「ああ~……ちょっと電話するから、その後、宇宙人との戦争を聞かせてくれ」


 世間話程度の話だったのに、聞き捨てならない言葉ばかり出て来たので、石坂は一旦ストップ。自衛隊のトップに直電して、暗号で宇宙人に作戦がバレている可能性があると送った。

 それから蒼正達の宇宙人無双を呆気に取られながら聞いたら「まぁなんだ……頑張れ」と、やる気の無いエールを送って帰って行くのであった。



 時間の空いた蒼正と純菜はどうしようかと話し合い、蒼正は会いたい人が居るからと一人で向かおうとしたが、純菜も行きたいと言うので同行する。

 蒼正の会いたい人は、坂本校長。学校に居なかったら諦めようと思っていたが、地球が滅亡すると聞いたのに夏休み明けの準備をしていた。


 そこで蒼正は、自分に遭ったこれまでの出来事を説明し、坂本だったら必ず宇宙人の仲間に加えて貰える事と、こんな事をしてないで最後の時は家族と過ごすように伝えた。

 坂本は半信半疑だったが、最後は家族と過ごすと返事をする。それと、もしも地球が助かった場合にも備えておくから、安心して学校に来るようにと蒼正に返していた。


 その対応が(うらや)ましくなった純菜は、転校したいと申し込む。坂本も地球が助かったら権力をフルに使って迎え入れると約束してくれたので、笑いが起こるのであった。



 坂本と別れた蒼正と純菜は、町をブラブラして夕方になったら別れる。各々の家に帰り、母親の帰宅を待って二人切りの最後の晩餐。

 蒼正は目に涙を浮かべて感謝の言葉を送っていた。


「イジメられた時、僕の味方になってくれて有り難う。倒れるまで戦ってくれて有り難う。僕は、お母さんの子供に生まれて幸せでした」

「ううん……私がもっと早く気付いていれば……いえ、離婚なんかしていなければ、蒼正をもっと幸せに出来たのに……ゴメンね。蒼正」

「謝らないで。今が一番幸せなんだから」

「その幸せがもっと続けられたら、もっと幸せになれたのに……十六年なんて短過ぎる……神様、なんでもっと時間をくれ無いんですか~~~」


 有紀は蒼正の幸せが長く続いて欲しくて神様に泣き付く。蒼正も有紀の涙に釣られて泣き崩れ、この日は抱き合って眠りに付くのであった。



 同時刻、堀口家でも純菜と晴美が似たような涙を流していた。


「ママ、不出来な娘でゴメンなさい。心配ばかり掛けてゴメンなさい。それでもこんな私を愛してくれて有り難う御座いました」

「何謝ってるのよ。それは、全部母親の私が悪いの。もっと純菜と向き合う時間を取れば良かった。離婚なんてしなければ、もっと純菜の事を見てられたはずよ。ダメな母親でゴメンね」

「ううん。ママは最高の母親だよ。だって、今はこんなに幸せなんだよ? 今まで有り難う」

「純菜こそ、ママの子供になってくれて有り難う」


 こちらも涙ながらに抱き合って、そのまま眠りに落ちる。世界中、どの家族も似たような言葉を掛け合い、絆が深まるのであった……



 翌日は、地球滅亡最後の一日。この日のテレビやラジオは天皇陛下からの御心しか流れず、世界中は愛する者と共に最後の時間を過ごしていた。

 蒼正達は、全員堀口家に集まり、両家の母親が最後の晩餐を作り続ける。その間は、蒼正と純菜の自由時間。二人共、やる事やっとけと純菜の部屋に雑に押し込まれたけど、そんな言われ方をされると逆にやり辛い。


 それに昨日の夢の中では最後になると思い、ずっと愛し合っていたので、そこまで性欲が湧か無い。

 なので、母親達は何をしているのかと覗きに行ったら、家族写真を見ながらしんみりとお酒を飲んでいた。


 そんな母親達を見ては、更にやり辛い。蒼正と純菜は母親達の間に入り、思い出話に明け暮れた。



 時計の針が零時を指すと、いよいよ地球滅亡まで残り僅か。後何時間生きられるかは分から無い。

 世界中の人々は死の恐怖と諦めの気持ちで空を見上げる。中には暴れる者や、死を待つ時間に耐えられ無くて睡眠薬を服用する者もいる。


 蒼正と純菜は手を繋ぐと、母親に最後の挨拶をしていた。


「お母さん……多分お母さんは宇宙人の仲間に入れて貰えるから安心して」

「ママもだよ。あっちで蒼君のお母さんと仲良くしてね。再婚してくれてもいいから」

「僕達も諦めず、最後まで戦い抜くよ」

「また会えたら、ご飯作ってね」


 息子と娘の覚悟の顔を見て、有紀と晴美は自然と涙が流れる。


「頑張って……」

「負けないで……」

「「行って来ます」」

「「行ってらっしゃい……うっ……ううぅぅ」」


 母親達に送り出された蒼正と純菜は振り返りもせずに、純菜の部屋に入る。外からは、崩れ落ちた母親達の嗚咽が聞こえるのであった……



「それじゃあ飲むよ」

「うん」


 純菜の部屋では、蒼正の確認の後、二人は口に入れた睡眠薬を水で流し込んでベッドに横になった。


「最後に純と会えて良かった」

「私も。最後まで一緒に足掻こう」

「うん。純……愛してる」

「蒼君……愛してる」


 愛の言葉を交わした蒼正と純菜は、静かに目を閉じるのであった……


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