44 初めての・・・
純菜のイジメ被害を聞いた有紀は涙が止まら無くなっていたので、一時退避。蒼正は純菜を自分の部屋に連れて行き、そこで楽しくお喋りしていた。
だいたいがお互いの母親の話で、どちらもいい人だと言って、どちらもそんな事は無いと謙遜する。その時、丁度蒼正が愚痴っている所に、有紀がおやつを持って登場。
そのせいで部屋に変な雰囲気が流れたので、有紀は蒼正の首根っこを掴んで出て行った。エッチな事をしていたと思ったらしい。
なので蒼正は慌てて否定したが、悪口を言っていたと口を滑らせたからには、チョップされていた。どちらにしても、怒られるような事をしていたから仕方が無い。
冤罪は晴れたが「他所様の娘さんを傷物にしたら分かっているな?」と有紀に釘を刺されたので、蒼正は自室に戻っても何処か話が弾ま無い。有紀が聞き耳を立てていそうだからだ。
ここでは甘い一時は我慢して、真面目な話だけをして部屋を出る。そうして二人で、リビングで寛いでいる有紀の前に座った。
「お母さん……僕、純と結婚する。今すぐ許可を下さい。お願いします」
「お願いします」
そして二人で頭を下げると、有紀は開いた口が塞がら無い。
「えっと……結婚を前提って事よね?」
「違う。今、地球は滅亡の危機にあるから急いでいるんだ」
「地球が滅亡? 何言ってるの??」
「信じられ無いだろうけど……」
蒼正から語られる宇宙人襲来。純菜も加わって説明していたけど、有紀は当然信じていない。しかし地球が滅亡しない場合は就職後にまた結婚の許可を取ると聞いて、今回も許可をしてくれたのであった。
「さっきは聞け無かったけど、二人して変な事考えて無いよね?」
純菜が帰って行くと、有紀が緊張した顔で蒼正を問い質していた。
「変な事って……宇宙人の話?」
「ううん……二人で心中とか……」
どうやら宇宙人襲来の話は嘘で、二人共イジメ被害者だから無理心中すると受け取られたらしい。
「無いよ!? 今、すっごく楽しいから! そもそも宇宙人に殺して貰った方が楽に死ねるのに、痛かったり苦しい自殺なんてする訳無いよ!?」
「また宇宙人って……」
「だからね。近々NASAから発表あるって言ってるでしょ? 疑うならその後にしてくれない?」
「だからなんでNASAが出て来るのよ~」
「刑事さんが言ってたから……あっ! 刑事さんからNASAのお土産を貰ったんだった!? 持って来る!!」
「その刑事も怪しい……」
晴美とは違い、有紀は石坂達を見た事も聞いた事も無かったので、ずっと疑われ続ける蒼正であった……
その日は夢の中で蒼正と純菜は、お互いの母親の話で愚痴を言い合い、次の日のお昼にはまた純菜が蒼正の家を訪ねた。
「一応、結婚の挨拶は終わったね……」
「うん……私は蒼君と最後の時まで一緒に居ると、ここに誓います」
「僕も純と最後の時まで一緒に居ると、ここに誓います」
二人は大袈裟な言葉を告げると、この日の為に用意していた安物の指輪をお互いの薬指に嵌めてキスをした。
「「地球最後の日まで宜しくお願いします……」」
お互いの家に結婚の挨拶をしたのは、恋愛を先に進める為の儀式。この日、蒼正と純菜は、初めて体を重ね合わせたのであった……
初めてを経験した夜は、夢の中で照れながら再会した蒼正と純菜。辺りは宇宙人対策で草原となっているのに、キングサイズのベッドで向かい合わせに座っている。
「やっぱり痛かったよね?」
「うん……まだ痛い……」
「魔法で治しても大丈夫?」
「うん……」
二人の初めては一応最後までしていたけど、蒼正だけしか楽しめ無かったので、夢の中の方が純菜のダメージを減らせると思ってベッドを出した模様。
とりあえず蒼正は抱き締めながら回復魔法を使って、純菜の痛みを取った。
「今、こんな事を聞くのもなんだけど……」
完全回復した純菜は、こんな態勢でもどうしても聞きたい事があるみたいだ。
「夢の中のキャラと浮気なんかしないよね?」
そう。ここは好きなキャラでもアイドルでも再現出来る世界。初めてを経験した今なら、夢に見たあの子達となんでも出来てしまうのだ。
「し、しないよ……」
なので蒼正の答えは、自信無さげ。
「何その言い方……」
「そ、そっちこそどうなの!?」
「逆ギレまでしてるし……」
こんなに慌てているのだから、蒼正は有罪。純菜も浮気を確信した目をしているので、蒼正も必死の土下座だ。
「一度だけ! もうちょっとしたら、自由時間を下さい! 異世界ハーレム物を最後にしたいんです!!」
その訴えは、あろう事か浮気の懇願。いつも見ていた夢の異世界ハーレム物を、完全再現したいとお願いしてるよ。
「い、一度だけだからね? 私も許してね??」
「うん! ……ん? ひょっとして、浮気の心配をしたのは、自分が言い出し難かったからでは……」
「バレた? エへ」
どうやら純菜も逆ハーレムをしたかったから、この話題を出したみたい。無駄に冷や汗を掻かされた蒼正は怒った顔になっていたけど、純菜に抱き付かれてどうでも良くなった。
「お昼の続きしよ?」
こんな事を言われたら、高校生男子は辛抱堪らず狼さんになっちゃったからだ。
「うん……痛かったら言ってね……」
「うん……」
こうして本日二度目の体の接触に突入。蒼正はキスをしてから純菜の服を脱がそうとする。
ピカッ! ドオオォォン……
その瞬間、強烈な光が夢の世界を包み込み、草原は灼熱の火の海に変わったのであった……




