39 宇宙軍
初めての話は、目覚めてからは一旦中止。お互い証拠の残るスマホではあまりしたく無いらしい。母親が見るのでは無いかと危惧して……
とりあえず夏休みになったらどちらかの家で会おうとだけ決めて、いつもの生活に戻る。
その日の夜も、夢の中の草原でイチャイチャしていたら、純菜と蒼正の前に宇宙人が現れた。
「アレって……軍隊だよね?」
「軍隊だけど、中世辺りの騎士団って感じかな?」
今日の宇宙人は、騎馬が百。歩兵が二百の騎士団風。その中の一騎が駆けて来て、目の前で止まると大声を張り上げる。
「百で勝て無いなら、三百だ! これは戦争なのだから騎士道に反している等、言われる筋合いは無いからな!!」
「それは理解するけど、仲間に入れてくれない?」
「断る! 今宵、必ず血祭りに上げてやるぞ~~~!!」
蒼正はしれっと尋ねてみたけど、騎馬は即座に拒否して隊列に戻って行った。
「こないだは怪獣だったのに、今回は軍隊って、なんでだろ?」
「う~ん……僕達の夢を参考にしてる? いや、地球人の夢かな? 怖い物を選んでるのかも??」
「怖い物か~……いま、嫌なの想像しちゃった」
「たぶん僕も想像した。それだけは絶対に考え無いでおこう」
「うん……」
二人の想像した物は、頭文字G。想像しただけで身の毛もよだつから、宇宙Gが百体も出て来たら悲鳴を上げて逃げるだろう。
「今回はどうする?」
「向こうは集団だし、五人ずつ足すのはどうかな?」
「少なくない? 十人ぐらいにしておいた方が、後々楽になるんじゃない?」
「んじゃ、それで行くか」
「は~い」
「「分身の術!」」
二人が作戦会議している間にも、宇宙騎士団は隊列を乱さず前進。開戦間も無くのタイミングで、蒼正と純菜は同じ見た目と装備の人間を増やした。
「弓隊、放て~~~!!」
「純! 後衛を先にやっちゃって!」
「はいは~い。聖なる雷!」
宇宙騎士団は、十人になった純菜が放った空から降る聖属性の雷によって、一気に瓦解。それでも宇宙騎士団は諦めずに突撃していたが、等間隔に配置した十人の蒼正の鉄壁ガードに弾き返されてそのまま塵となる。
その間も純菜の聖魔法が炸裂して、宇宙騎士団はガンガン消滅。最後は指揮官が聖魔法を抜けて突撃したが、蒼正と一騎討ちとなって簡単に倒されるのであった。
今回は思ったより早く終わってしまってので、蒼正と純菜は次に備えて準備をしていたけど、第二陣が来無いまま朝を迎える。
翌日はまた夢の中の草原で待っていたら、予想通りの宇宙人が現れた。
「プッ……中世から近代に変わった」
「予想通りだね」
今回の宇宙人襲来は、戦車に歩兵。第二次世界大戦に出て来そうな軍隊がおよそ千人の規模。前回とは違い、口上も無しに前進している。
「一先ず、空だけ気を付けよう。塹壕に入って」
「うん。引っ掛かるかな~?」
蒼正と純菜がオリハルコン製の塹壕に隠れると、宇宙軍は戦車がキュルキュルとキャタピラを回して前進し、歩兵がその後ろに続く。
そうして戦車の射程に入るとロケット弾が何百発と放たれ、塹壕の周りに次々と炎と煙が立ち上がる。
「すっごい音ね」
「音量調整して無かったら鼓膜が破れてたね」
それでも純菜と蒼正は余裕でお喋り。近代戦闘はうるさいと予想していたから、最初から音を十分の一に絞っていたのだ。
その爆発音に、パラパラと鳴る炸裂音とヒュンヒュンと鳴る風切り音が足される。歩兵の射程に入ったから、マシンガン乱射だ。
しかし数十秒後、戦車が空を舞う。
「アハハ。馬鹿だね~。地雷踏んでら」
「これは楽だね~。アハハハ」
そう。戦車が登場すると予想していたのだから、フィールドに地雷は設置済み。それも踏んだら宇宙人の弱点である聖属性の光の柱が現れる地雷だ。
戦車は一撃では消え無いので、空を舞って歩兵を巻き込む事に。歩兵はそれでも前進するが、地雷を踏んだら十人以上も一気に消える。
「やっぱり来たね」
「僕はこれで迎撃してみるよ」
第二次世界大戦と言えば、主力は飛行機。百機程投入された戦闘機に、蒼正はライフルを構えて発射。
「わあ~……一発で当たった」
「自動追尾技能も足してるから外れる訳無いよ」
「なるほど~。弾はなに? レーザービームみたいだったよね?」
「イメージはレールガンだから、電気だね。そこに聖属性をイメージしてるから、レーザービームに見えたのかな?」
「へ~……私もやってみよっと」
純菜は蒼正の真似をしてみたけど、戦闘機には上手く当たら無い。レールガンのような速度を出すには、兵器物を良く知る蒼正と比べると劣るみたいだ。
「私はこっちの方がやり易いわ」
「うん……あまり広範囲にやらないでね?」
なので、純菜は魔法で対応。戦闘機より高い位置で、聖魔法を含んだ雷を落とす。ただし、地上部隊にもダメージを与えているから、出番を取られたと肩を落とす蒼正。
それでも蒼正はライフルで戦闘機を撃ち落としていたら、地雷原を抜ける歩兵がチラホラ現れたのでそちらの対応をする。
「ドローンに銃弾を積んだの?」
「うん。相手の兵器、古いし」
ドローンによる空からの無差別射撃だ。
「今の戦争はそんなのになってるんだ~。良く知ってるね」
「どちらかというと、未来の戦争かな? 映画やゲームとかでそういうの有るの」
無駄話をしていても戦闘は続き、宇宙軍はガンガン減って行くのであった。




