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僕の私の夢は超イージーモード。だった・・・  作者: ma-no
三章 夢が繋がった理由

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30 正真正銘の初デート


 中ボスのトロルキングを倒した蒼正と純菜は、残りのストーリーも破竹の勢いで踏破。魔王もサクッと倒したら、王都に戻って大団円。ここで二人がキスをするシナリオであったが、なんだか恥ずかしくってスキップしていた。

 それからも夢の中では、二人で考えたストーリーをプレイして楽しむ。時々設定が微妙に違う事もあったが、現実での初デートが日に日に近付いていたから、そっちが気になって特に気にしていなかった。


 蒼正の学校がどうなったかというと、校長の坂本が月曜日から動き出し、生徒や教師に内部告発用のバーコードやアドレスが書かれたプリントが配布された。

 これらは坂本自ら一人一人手渡し、守秘義務は必ず守る事と必ずイジメは撲滅すると約束する。その行為で本気度が伝わったのか、イジメ被害に遭った事のある生徒や、学校を良くしたいと考えていた教師から続々と情報が届いているらしい。


 勿論、古株の教師陣からの反発や嫌がらせはあるが、坂本は一切取り合わずに、仲間になった教師と共に情報を精査している。

 その途中経過は、イジメ被害に遭った者には報告しているので、被害者からは期待が高まっていた。


 あっという間に日々が過ぎて日曜日。初デートは遠くにある遊園地で行われるので、待ち合わせ場所は遊園地の最寄り駅。近所の駅では誰かに見られたら、次の日学校に行き辛くなるからと言う理由で、別々に行く事に決まったんだとか。

 蒼正はドキドキして待ち合わせ場所に向かい、到着したのは一時間前。かなり早く着き過ぎたが、どこかに移動するという発想がまったく無いので、待ち合わせ場所の改札前から動か無い。

 

 ついに待ち合わせの時間。蒼正は純菜にメッセージを送ると、ほぼ同時に返事が来た。


「え? ちょうど着いた? 白い帽子って……」


 蒼正が左を見ると、少し離れた場所に白い帽子の女性が目に入る。なので、苦笑いしながら歩き出したら、その人物も同じ顔をしながら歩み寄り声を掛けて来た。


「たぶん……同じ電車だったね……」

「うん……恥ずかしがらず、早く着いたと言えば良かった……」


 そう。蒼正が着いた頃から、純菜はずっと近くに居たのだ。


「制服と全然違うから、分から無かったよ」

「僕も……その服も似合ってて可愛いね」

「吉見君も……ボーダーシャツ、似合っててカッコイイよ」


 お互い服から褒め合ってみる二人。これはどちらも母親に相手の見た目は褒めろと口を酸っぱくして言われていた事だ。

 ただし、相手が分から無かった本当の理由は、夢でも前髪でほとんど顔を隠していたから。今日はデートだからと母親が無駄に張り切り、前日には美容院に行かせて朝には二人の髪型をチェックしてくれたのだ。


「と、とりあえず行こっか?」

「うん……」


 夢の中では何度もキスをした事ある蒼正と純菜だが、顔の事には触れられず、手も握れ無いまま歩き出すのであった。



 遊園地の入り口でチケットを買った二人は中に入る。まだギコチナイ会話ぐらいしか出来無いが、ひとつ目の遊具に乗った後には会話が増える事に。


「声、凄かったね……」

「吉見君も……」

「「プッ……アハハハ」」


 どちらもジェットコースターは初めて乗ったらしく、大きな悲鳴を出したから緊張が解れたのだ。その調子で絶叫系の乗り物を避けて楽しんでいたら、そろそろランチ。

 純菜は母親からお弁当を用意しないのかと言われていたが、蒼正から荷物になるし無理しないでと止められていたのでフードコートに向かう。


 どちらも食べ飽きているお弁当よりは、こういう場所で食べるランチをしたかったみたいなので、楽しそうに選んで楽しそうに食べていた。

 午後からも温い乗り物で楽しんでいたが、お腹が落ち着いた頃にもう一度ジェットコースターにチャレンジ。今回は朝の時よりは怖く無かったようだが、降りたらベンチに直行した。


「「あ……」」


 そこで、本日初めての触れ合い。座った時に蒼正が純菜の上から同じ場所に手を置いたから重なったのだ。


「ゴメン……初デートなのに手も繋げ無いなんて……」

「ううん。私も忘れてたし……それに、朝に握られていたら、緊張で手がビチョビチョになってたかも? そっちが気になってデートも楽しめ無かったよ」

「あぁ~……急に手汗が出て来たかも?」

「吉見君の汗なら、気にならないよ? 自分の手汗は気になるけど……」

「ビチョビチョになったら拭き合おっか?」

「ウフフ。そこまでして手を繋ぎたいんだ」

「デートだもん。今のままじゃ遊びに来ただけにしか見え無いしね」


 ここからは手繋ぎデートに変更。一度手を拭いたりはしたけど、思ったより手汗が出無かったと二人して笑い合う。

 そうして最後に取っておいた観覧車に乗ると、最初は対面に座っていた蒼正はゆっくりと、純菜の隣に移動して手を握った。


「やっぱり夢と現実はちょっと違うね」

「うん。手なんかいつもサラサラだったしね」

「匂いも……女子にこんなに近付いた事が無かったから気付か無かった。いい匂い……」

「もう~。変な事言わないでよ~……私も吉見君の匂い、嫌いじゃないよ」


 ゴンドラの位置は、頂上までまだ中程。もうすでに二人の気持ちは最高潮となる。


「その名字呼び、そろそろ止め無い?」

「そうだね。蒼正君? 蒼君?? 何がいいかな~」

「純菜……呼び捨ては嫌? 純ちゃんとか??」

「呼び捨てでいいよ。蒼君……」

「じゃあ、純……」


 観覧車の頂上はもう間も無く。しかし二人は待ち切れずに唇を合わせるのであった……


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