22 デート後の二人
ドライブデートはアミューズメント施設で終わりでは無い。またスポーツカーに乗り込み、夜の町を走らせる。
キラキラ光る電飾が多い理由は、蒼正はクリスマスの町並みを再現したのだろう。お蔭様で純菜の評価も高評価だ。
それから山道を走り、やって来たのは六甲山の展望台。絶対に有り得ない、車で直付けだ。そのまま車の中から、純菜と蒼正は夜景を楽しんでいた。
「綺麗だね……」
「うん……本物はもっと綺麗かも知れ無いけど……」
「そんな事言わないで。こんなに準備してくれたんだから、それだけで私は嬉しいよ。素敵なデート、有り難う」
こんなに喜んでくれるなんて、蒼正も嬉しくなって純菜を見詰める。その純菜は目を潤ませて上目遣いになっているから、蒼正の心臓はトクンと鳴った。
ここは男の見せ所。蒼正は体を左に傾けて、ゆっくりと純菜に顔を近付けた。
「え? 何してるの??」
「……え??」
でも、純菜は蒼正を押し返した。
「ここはキスする流れかと……」
「えっと……キスはね。付き合ってからじゃ無いと……私達、付き合って無いよね?」
「意外とガードが堅いんだね……」
「いや、合意の無いキスは犯罪だよ?」
「いや、雰囲気は大事じゃない?」
男と女の相違。夢の中でも現実を持ち込む純菜に押し切られては、蒼正も言うしか無い。
「つ、付き合ってください……」
「まさかキスしたいから言ってない?」
「そうだよ! 堀口さんが好きだからキスしたいんだよ!」
そこまでしても純菜のガードが堅いので、蒼正も声を荒らげちゃった。でも、純菜は真っ赤だ。
「私の事、好き…なの?」
「うん……迷惑だった?」
「ううん。嬉しい……私なんて、誰にも好かれる事が無いと思っていたから……」
「それは僕もだよ。今更だけど、僕は堀口さんに嫌われて無い?」
「ううん。好き。小学校の頃から、ずっと好きでした……」
「良かった……」
お互い好意を伝えてから、ようやく車内は甘い空気に。ここからは言葉は交わさずとも、申し合わせたように唇を重ねる二人であった……
「ねえ? 大丈夫??」
ここは現実の吉見家。今日は日曜日なので、お昼は有紀も一緒に食事となったのだけど、蒼正の態度がいつもと違うので心配になっている。
「ん~? 何が~??」
「そのニヤけた顔よ。スマホばっかり見てるし……はっは~ん。彼女でも出来た?」
「ででで、出来て無いし!?」
「分かりやすっ……」
そりゃこんなに分かり易い行動をしていたら、誰だって分かるってモノ。有紀も友達すら居ないと思っていた息子の春に喜んでニマニマしてるよ。
「マジで出来て無いから~~~!!」
でも、息子はそんな事を認められ無い。初めて反抗的な態度を取って自室に逃げる蒼正であった。
所変わって堀口家。
「何か嬉しい事があったのかな~?」
こちらもこちらでいつもと態度が違うから、晴美に気付かれてニマニマ見られていた。
「べ、別に何も無いけど……」
「そんなにスマホ見てるのに~? てか、いつも食事中は部屋に置いてるよね?」
「うっ……彼氏が出来ました……」
「やっぱり~。どんな子どんな子? カッコイイ??」
「たぶんカッコイイ……小学校の同級生……」
「前に言ってた子? これは運命だね~」
男子と女子の違い。蒼正の場合は照れまくって母親に酷い態度を取ってしまったが、純菜の場合は単純に聞いて欲しくて喋ってしまうのであった。
その日に夢の中のファミレスに集合した純菜と蒼正は、最初は照れてモジモジしていたが、慣れて来るとスマホの話題になった。
「ラ〇ン、ちゃんと届いて良かったね」
「ホントに。でも、そのせいでお母さんにからかわれたよ」
前回の夢では、うろ覚えの連絡先をお互い伝えて朝から何度もやり取りをしていた。二人共、母親以外で初めてのやり取りだったから、かなり嬉しくて不要に持ち歩いていたのだ。
しばしスマホの話をしていたら、純菜がけっこうな所まで喋っていたので蒼正は驚く。
「付き合ってるって言ったんだ……」
「うん……ダメだった?」
「ダメって事じゃないけど……まだ夢の中でしかちゃんと会って無いから、これは本当に付き合っている事になるのかと思って」
「本当だね……現実では顔を見ただけだった……」
普通の夢なら、寝て起きたら消える物。付き合っているのも夢なんじゃ無いかと純菜は暗くなる。なので蒼正は、ネットでも顔を見無いまま付き合う人がいると例を出し、力強く付き合っていると宣言して笑顔を引き出した。
「ま、今度はちゃんと会ってみよう」
「うん。そうだね……あ、でも、デートで着るような服が無い……」
「あ、僕も……場所もこの辺は嫌かな~?」
「私も遠出したいかも?」
待ち合わせの約束をしてみたけど、そこから様々な懸案事項が発生。まずは服から決めようかと想像してみたが、どちらもファッション誌なんて読んだ事も無いので正直ダサイ。
正解も分からないのではどうしていいかも分から無くなり、場所決めから始める。しかしお互いクラスメイトやイジメっ子に見られたく無いので、移動手段も考え無いといけ無いから中々決められ無い蒼正と純菜であった。




