第11話 女流作家について
別の話を書いていたら、これを更新するのをすっかり忘れていました。
予告では『鬼の種類について』書こうと思っていたけど、その前に書きたいことができたので、今回は平安時代を中心に作家さんについて。
今、大河で熱い紫式部とか、その辺ね。
何で急に書こうと思ったか。
仄暗はBL作品だけど、女性も何人か登場します。BLだからキャラ絞って女性少なめにはしていますが、色んなセクシャリティを書きたい作品なので、女性キャラの登場は必須。加えて作者はTS好きでもあるので、その辺も絡めたい。
本作中Ⅱで、藤埜清人が十年来の想いを寄せていた霧咲紗月は女性の生理みたいに月一で男性に体が変化するTSキャラでした。
そのために社会生活が困難だったけど、派遣看護師とかして何とか凌いでいました。
伊豆能売の魂を無理やり移植されていた紗月は、元々男性だった体が、神様の魂のせいで女性になりました。
落ち着いてからは直日神の神力で自分の意志で男性に変化できるようになりましたとさ。
本作中でも紗月は「人類最強」の称号を持つ女性です。
私が書く作品は、強い女性がたくさん出てきてしまいます。
好きなんですよね、強い女性が。
そんで、思った。
「一人くらい、よわっちぃ女の子、出しても良いかもなぁ」
本作では、男の子の方がむしろ、うじうじして弱々しい感じというかね。そういうのが人間味があって面白いってのもあるんですが。
けどまぁ、モチーフを探そうと思った。弱い女の代表みたいなの、いねぇかな。
あんまり、いないよねぇ。みんな強いから歴史に名を遺すわけなので。
今、話題の紫式部さんなんかは、恐らく端から見たら気が弱くて大人しい女性だったかもしれないけど、内面はかなり我が強くて割と粘着質だったと思う。
源氏物語は道長への想いを綴った物語で紫の上に自分を投影して書いていたとかいう評論もありますけど、どうだかねって思う。
大河だと紫式部さんと道長はかなり近しい間柄で絡みもあるけど、実際はほとんど会話したことも無いような関係でした。紫式部さんの一方的な片恋つーか、憧れというのか。
道長の妻の女御だった説は後世の作り話なのか史実なのか、ちょっと信憑性に欠けるなと思います。
紫式部さんの家柄的に、源氏物語の人気をきっかけに道長が紫式部さんに目を付けて娘の女御に迎えたってのが、一番妥当だなと思う。
ちなみに紫式部さんの当時の呼び名は「藤式部」です。「紫」はの後の人々が源氏物語の紫の上から取って呼んでいたのだとか。昔の人は諱を呼ばないから、得に女性は本名が残り辛いですね。
そう考えると、つくづく、紫の上に自分を投影して源氏の君を道長に見立てた話が後世の作り話感増しますね。源氏の君は他にモデルになった殿方とされる親王が存在するし。
恋というより、出世や学問といった思いの方が、紫式部さんは強い人だったんじゃないのかねって思ったりはします。
今の大河ってそんな感じなんですかね、実は観てないのでよく知らないんですが。
だってさ、自分で物語を書いていて、自分を投影したキャラって書きますか?
私は書きません。
だって、それ言っちゃったら出てくるキャラ全部に自分の想いや思想が入っている訳だから、全部のキャラが自分を投影したキャラになっちゃうよね。
まぁ、そういう意味じゃないのかもしれないけど。
何にせよ、紫式部さんは内気な女性であったのは間違いなさそうです。
源氏物語は執筆中から大人気で、続きを急かされながら書いていたらしいし、作家冥利に尽きるって感じですね。
そりゃ、天子様も毎日、彰子さんのとこ来るよね。道長の思惑は大当たりでした。
紫式部さんはきっと、「大したことないわ」くらいの涼しい顔しながら、内心で高笑いだったろうなと思う。そういう感じの性格だったんじゃないかと。
よく、清少納言との宮中バトルが話題になったりしますが、実際は直接対決とかなく。紫式部と清少納言が宮中務めしていた時期は十年ズレるし、対決の仕様がない。
ただ、紫式部が「紫式部日記」の中で清少納言をぼろくそに陰口言ってるってだけです。
清少納言さんて、明るくてあっけらかんとした女性だったんじゃないかと思います。この時代の女性としては学があったと思うけど、恐らく紫式部さんほどの才女ではなかった。
『枕草子』って、マジで感覚が冴えるね! って感じのエッセイですよね。作中で使われている言葉や表現、私は好きですが、勘で書いているのは間違いない。
紫式部さんのように学問という下積みがあって物語を作っているとかじゃなくて、得た知識を生まれ持った才を使って思ったことをそのまま表現している感じ。
紫式部さんが頭脳派なら、清少納言さんは感覚派だったのだろうと思います。
まぁ、出典の「紫式部日記」もいじりたおされてて、どこまで本人が書いたモノかもわかりませんが。
一説には仲が悪かった紫式部さんと清少納言さん。そんな二人がそれぞれに尊敬していたとされる女御が和泉式部です。
恋多き女性として有名で道長に「浮かれ女」と馬鹿にされたりしていた女性です。紫式部も「歌は天才だけど、素行は感心しない」みたいな記述を残しています。「紫式部日記」にね。
後世になると和泉式部を色狂いみたいに描いている話とか結構ある。ひでぇなと思う。
何というかね、多少はそういうトコ、あったんだと思いますよ。浮名は確かに流していたし、好かれやすい人だったと思う。その辺りの詳細は、興味があったら調べてみてください。
けど、基本は思い切りが良くて姉貴肌の頼りになる女性だったんじゃないかと思うんですよね。頭が良くて思考が回るから結論出すのが早い人というかね。
あとね、行動力があって包容力がある人だったのかなと思います。だから皆に好かれるんだよね。
好いてくる相手が男だとややこしくなるんだろう。性に対して奔放だったのも事実だと思うし。まぁ、天皇の息子の親王にラブコールされたりしているから、相手が悪いってもの多分にあるけど。
その辺は、この時代ならもっと許容してやれよと思うけど、江戸時代の儒学者とかは二夫にまみえるのがどうとか、うるせぇ話をしていますけどね。
通い婚の時代の倫理観を何百年も後の儒教で否定するなよと思う。
何にせよ私は和泉式部さんがとても好きです。
あとは、小野小町さん。
情熱的な恋歌が多い小野小町さん。その恋愛歴や婚姻に関して、史実では何もわかっていません。小野篁の娘って設定は、ちょっと信憑性が薄いけど、一番好きだからいつかどこかで使いたい。
わからないことが多い分、創作には使いやすい人です。
だから、「百夜通い」とかの物語が生まれたりするのでしょう。深草少将との悲恋譚ですが、自業自得感が否めないお話です。
簡単に説明すると、「百日、私の所に通えたら結婚してあげますよ」と話した小野小町の言葉を信じて、通い続けた深草少将は九十九日目に死んでしまいます。
その九十九日間を通して、二人は距離を縮めて小町さんもすっかり結婚する気でいたわけなので、突然の訃報に泣き崩れるわけです。
小町さんはその後、誰とも結婚せずに、田舎の寺院で一人静かに息を引き取ります。白髪頭になるほどに年を重ねた小野小町に昔の面影はなかった、と。
そんな感じの話です。
共に過ごした九十九日より、一人で深草少将を想い続けた何十年間の方が、小町さんの想いは遥かに深かったろうな。と思わせる悲恋。私は大好きです。
今回は平安の女流作家の話を書きましたが、何が書きたいかというと、結局みんな強いってこと。
これはね、もう男女問わずなんですよね。歴史に名を遺す残さないでもない。
人間としてコミュニティの中で生きていく以上、強くないと生きていけない。だたそれだけ。それでも、強くなれない人間だっている。そういうキャラをどう描こうかな。目下、検討中です。
弱いけど強いキャラ、物語の主人公はすべからくそれですね。特に少年漫画的な成長物語に多い。そうじゃないのも勿論いますが。
本作における律も瑞悠も紗月も、梛木もかな。
皆、強い。心も体も強い。
何故か全員、戦闘特化の前衛だってことに、最近気が付いた。
本作の戦闘シーンは女性陣が支えてくれています。
さて、次回は今度こそ『鬼の種類』について。
本作はこちら↓
【R18】 仄暗い灯が迷子の二人を包むまで https://novel18.syosetu.com/n0232iy/ #narou #narouN0232IY