夏の訪れ
高校三年生の一学期の終業式長い長い校長先生の話も終わって、皆んな夏休みを目前に楽しみにしていたのだが、僕にとって心から友達と言えるほどの友達はいない、それに受験生ということもあってワクワクどころか来ないでほしい夏休みであった。それから通知表をもらって校門を出てようやく家に着いた。沖縄の夏だ、苦しい暑さからようやく解放された僕はソファに腰をかけてテレビをつけた。するとニュースでは台風5号発生と報じていた。僕はボソッと呟いた「台風か〜夏休みに入ってからきても学校ないしもう少し早くこれば良かったのに」そうすると後ろで料理をしていた母がお使いを頼んできた。「牛乳と卵が足りて無いから買ってきてくれない?」僕はおもい腰をあげて『オッケー』と答えた財布を手に玄関を出ようとした時
母が「海沿いの店で買ってきてくれない?あそこ今日特売日なのよ」と言った。「えーあそこまでいくの?」なんと言ってもそこは家から三キロほど離れていて最寄りのスーパーは五百メートルくらいで着くのにたった数円でそこまで走らせれるのかと思い僕は呆れた。三キロ歩いて行こうか迷ったが流石に遠いため僕は母のママチャリを借りていくことにした。自転車に鍵を刺してロックを解除し気持ちい海風を浴びながら僕はスーパーに向かった。スーパーではささっと必要なものを買って急いで出てきた。すると待っていたのは水平線に浮かんだ夕日だった。雲も夕日によって鮮やかに彩られている。僕はその瞬間ふと思った。「この雲はどこまで飛んでゆくのだろう、きっとあと4、5日もすればきっと台風に持っていかれるだろうその時この雲はどこの誰に雨を降らせるのだろう、そしてその誰かさんは僕と会うことはないだろう、でも同じ雲の雨を体験したことに変わり無いだろう、でも会えないだろう、でももし会えたら!どんなに美しくドラマチックで感動的なのだろう!』そう思い少しワクワクしながらそんな思想を持った自分を少し恥じながらペダルに右足を置き家に向かって自転車を漕ぎ始めた。