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「バッテリー上がった」
豆乳やら炭酸水やらをスーパーでまとめ買いしようと愛車に乗った4秒後、ドアを開けても車内が光らないことに気付く。鍵を回しても(注:我が愛車は鍵を回してエンジンをかけるのよ)ウンともスンとも言わず、依然として車内は真っ暗だ。
コレが噂に聞く「バッテリー上がり」なのだろうとなんとなくは理解できたが、なにぶん初めてのアクシデントなので何をすればいいのかよくわからない。車の脇で呆然としていたら耳を蚊に刺された。とりあえずスーパーへ行こうと、蚊から逃げるように自転車に飛び乗った。
「保険」
そのままほっといても特段問題ないんじゃないのと思って一晩放置したものの、ネットを見るとさっさと直せこの野郎といった情報が溢れている。直し方には概ね以下の4通りがあるそうだ。
1.JAFを呼ぶ
2.任意保険のロードサービスを呼ぶ
3.他車から電気を分けていただく
4.車のバッテリー用充電器で充電する
1は高そうなのでパス、2はどうせ契約の時にケチってロードサービス無料特約をつけてないだろうからパス、3は近くに車持ってる友達いないのでパス、4が現実的だろうか。
ただ、ついうっかりロードサービスセットにしちゃってる可能性もあるので確認したところ、ついうっかりロードサービスセットにしちゃっていたことが判明。ケチの申し子、吝嗇の隠し子、節約の秘蔵っ子、伊豆の踊り子、春のタケノコ、おせちのカズノコ(だんだん腹が減ってきた)の僕がまさかそんなサービスをケチらずにつけていたなんて...と驚愕した。
「緊迫の昼食」
昼休みに入るなり、僕は素早くスマホを取り出しロードサービスの申し込みをした。備考欄に僕ちゃんお仕事中なんで18時半ごろ来てくださいますようヨロシクと書き添えて送信。申し込み完了後、LINEで「担当者が電話しますんで、電話に出れるようにしといてね」的なメッセージが来た。12:16のことである。
ただ、こちとら腹が減っている。飯を食わず電話を待っている間に昼休みが終わっちまったなんて事態は避けたいので、弁当をレンチンした。レンチン中もスマホを凝視したが、特に通知は来ない。
レンチン後も少し待ったが、空腹に抗えなかったためご飯をいただくことにした。いつ電話が来てもいいように、口に含む量は最小限にちびちび食べた。食うスピードは優雅なお嬢様、しかしいつ来るかわからぬ電話に怯え心の中は荒れ狂う。口の中が空の時は「電話来い電話来い電話来い!!!」と祈り、口に卵焼きを入れた時は「今はダメ今はダメ今はダメ!!!」と願う。数秒ごとに祈る内容が180度入れ替わり、神様も大いに困惑しただろう。
神の意地悪かはたまた担当者のお昼休憩のせいか、昼休みに電話は来なかった。
「混雑」
13時過ぎに電話が鳴った。きたぁぁぁぁぁぁぁと思ってスマホ片手に誰もいない部屋に向かうが、向かう途中で呼び出し音が切れてしまった。がっかりした。
その時に電話を折り返したものの電話が混み合っているらしく不通、14時にかけても不通、15時にかけても不通、15時半にようやくつながった。
電話口でオペレーターさんに「バッテリー上がりはタダで直せるけど、契約期間中一回だけだぜ!それでもよかったら来て欲しい時間の1時間前、お客様の場合は17時半ぐらいにもう一度かけてくれよな!」と言われた。そうか、一度きりなのか...
よく考えたらロードサービスを急いで頼むような状況ではないと思うので、今回はロードサービスは止める。ということでヨドバシカメラで車のバッテリー用充電器 (ジャンプスターターというらしい)をポチった。
「いただき男子 (リリちゃんのパクリ)」
帰るとき、おじいちゃん社員にバッテリーが上がったことを話していたら、どこからともなく大森さん(森さんのボスなので大森さん)が現れ、「バッテリーの充電器持ってるよ〜貸すよ〜〜〜」とおっしゃる。バンザーーーイと歓喜する僕を見て気をよくしたのか、さらに大森さんは「俺もしかしたら2個持ってるかもしれないから、そのときは充電器1個あげるよ〜」とおっしゃる。
これまで僕は大森さんからカーナビ、車用空気入れを頂いておりますので、さらに頂くのは申し訳ない。辞退しなさいと囁く控えめ男子と、もらえるもんは貰っちまえ、大森さんみたいなおじ(おじさんの意)は若人に物を与えるのが喜びなのだと囁くいただき男子が脳内で一瞬だけバトルを繰り広げたが、当然いただき男子の圧勝・瞬殺である。大森さんにヨロシクおなしゃすと笑顔で頭を下げ、僕はルンルン気分でヨドバシ.comで注文をキャンセルした。




