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「じゃんけん」
熊谷さんという50半ばのおじさんと都内の学校に来た。夏休み中で生徒はおらず、先生方ものんびりしている。
屋上での作業ということで階段を上がっていく。エレベーターを使いたかったのだが、ボタンを押しても反応しない。鍵を持った先生しか使えないようロックされているらしい。我々のようなヘボ業者が先生を呼びつけて「エレベーターよろ」とやるわけにもいかんので、脚を使い上がる。1、2階は涼しかったものの、3階に行き着いた途端にもわんとした空気が流れ出し、屋上がある4階は蒸し風呂をレンチンした状態であった(注:すみません、すげぇ盛りました。実際はあっつ〜〜〜ってくらいでした)。
こんな状態じゃ屋上の方が風が通る分涼しいんじゃね???ということで早速ドアを開けようとしたのだが、なんか鍵がかかっている。おかしい。事務室のおっちゃんの話では開いてるはずなんだけど…
1階の事務室に行くために階段を降りようとしたタイミングで、ちょっと!と熊谷さんから声をかけられた。振り返ると熊谷さんは握り拳を腹の前で構えている。
「どっちが行くかじゃんけんで決めよう」
「は、、、はい」
さて、じゃんけんの結果だが、2回のアイコ(いずれもグー)のあと、僕がチョキ、熊谷さんがパーを出し、熊谷さんは、はぁぁぁぁぁっぁ〜〜〜〜〜〜〜と特大のため息を吐きながら階段を降りて行った。フラフラなおじさんを運動させてしまったことに対し、若干の申し訳なさを感じながら、僕は束の間のネットサーフィンタイムを満喫した。めっちゃ暑かった。
「業界人」
埼京線に乗った。その名の通り埼玉と東京をつなぐ電車で、その日の昼は湘南新宿ラインのダイヤが乱れていたこともあり、いつも以上に混雑していた。スマホを取り出そうとすると、どんなに気をつけても若い女性、もしくはおっさんのお尻に手が触れてしまうような混雑具合である。
スマホを取り出せない僕は、やることがないので他人のスマホ画面をガン見した。別に好き好んで見てしまったわけではなく、ドアの正面に立っていたお兄さんがスマホをドアに貼り付けるように固定して文字を打っていたのだ。風景を見ようとすると、いやでも画面の文字が見えてしまう。僕は悪くない。
お兄さんのLINEのトーク画面にはTVの中継画像みたいな画像が表示され、お兄さんはその画像にテロップがなんたらとか、ワイプが云々とか、前と言っていることが違いますよどうのこうのとか発言していた。明らかにテレビ関係者である。
テレビ関係者は新宿で電車に乗り込み、池袋で降りた。新宿とか池袋とかって、ギョーカイ人がうろちょろする街なんだなぁ、TOKYOって感じするなぁと感心した。僕も一応東京生まれ東京育ちのシティーボーイではあるものの、煌びやかさとは無縁の下町で育まれた影響で、ギョーカイ人を見ると心の中で平伏してしまうのだ。
「広告頻度」
弊社では去年あたりから、社内でBGMを流している。流す曲に関してはSportifyのプレイリストを適当に見繕っているのだが最近、やたらと広告が流れる。広告と言っても他社製品・サービスのセールスではなく、Sportify Premiumへの加入を促すものだ。広告に邪魔されたくなければ、金を払えという脅迫じみたメッセージが数分おきに手を替え品を替え流れる。よく流れるのが。
可愛い女の子の声「よかったら…私と付き合ってください!!!」
青年「ごめん、今は集中したいんだ」
女の子「勉強?私も一緒に頑張るよ!」
青年「いや」
女「部活?応援するし、お守りだって作る」
青年「......ボサノヴァに、集中したいんだ…」
女「バサノバ???」
青年「ボ・サ・ノ・ヴァ!!!」
天の声「SportifyPremiumならお好きな楽曲がいつでもどこでも好きな時に聞ける!!!」
僕「うるせえええええええ!!!!!!○すぞこの野郎!!!!!!青春すんなハゲ!!!!!!!!!!!!!!!ガァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ」
となっていつも叫びそうになる。かと言ってPremiumに加入したら脅迫に負けたようで嫌だしなぁ。




