フィクサー
「もしこの依頼を受けていただければ、美厨財閥の総帥の地位をさしあげます!」
美厨は、必死な勢いで立ち上がって尊堂にかけよった。
だが、尊堂はそれを制して──
「断る。そんなものはいらない」
「ならば──」
「なにもいらない。
皇帝の生死などどうでもいい。
どうせ何らかの叛乱勢力にくみしてるんだろ?
政治的なゴタゴタに巻き込まれるのはごめんこうむる」
「これはこの国の未来の話なのです!」
「まったく興味ない。この国が滅びようがエ師として食っていくだけだ」
「あなたの過去の真実がわかるとしても?」
尊堂は、美厨を睨みつけた。
「だから俺の過去の話は──」
「多少の情報は聞いてます。なぜあなたが追放されたのか、その『フィクサー』を知りたくはありませんか」
「──『フィクサー』だと」
尊堂は目を大きく開いた。
「はい。あなたの追放は、ただの事故でも事件でもありません。
その『フィクサー』によって仕組まれた、国も、わが財閥すらもすべてを巻き込んだ巨大な方策です」
「なぜそんなことがわかる。ただの陰謀論だろう」
「わかります。その『フィクサー』に協力したのがわが財閥総帥──美厨那勝だからです」
「なんだと!?」