真の依頼
「説明してもらおうか」
尊堂は、ふたたび地面に座って休んでいた依頼人の前に腕を組んで仁王立ちになり、あらためて問いただす。
「ちなみにここで汚れた服のクリーニング代はあんた持ちだからな」
「…………」
「冗談だ。それくらいは出してやる。それともこれも財閥の経費になるのか?」
「……やはりカンづかれてましたか。しかしなんと素早い……」
依頼人は落ちついたそぶりをしようとしてもまだ焦燥を隠しきれない。
「……まあアレは神エ師の中でもトップクラス、しかも体制のお気に入りときた。あんたがどんだけ注意を払っていても、どこからか情報は漏れるもんだ」
「有能な執事を……元情報部の信頼できる人に変えたのに……」
「その執事さんがどうだか知らないが、『信頼できる人』なんて片手だけでも数えられたら御の字だ」
「…………」
「まあ、それは済んだことだから仕方ない。とにかく、説明しろ。アレがなぜわざわざこんなところまで、あんたを追いかけてくる?」
「……それでは、お話します」
覚悟を決めたのか、いままでの焦燥を腹の底にしまいこんで、キッと尊堂の顔を見つめた。
「天下一神エ師大会で優勝し、その褒美として与えられる神エ師団天覧試合への挑戦権を使い、その試合会場にあらわれる皇帝を暗殺してもらいたいのです」
「……なんだと?」