仇討ち
尊堂の頬をかすめたのは一枚のカードだ。
その頬に赤い線が走る。
尊堂はそのことを気にする風でもなく、背中の壁に刺さったカードを手にとる。
「フン、またぞろか……」
カードを飛ばした方向を見ると、そこには傾いたファッションの存在が一人。
「ソンドーさんだよねぇ」
「違うといったら……」
「違わねーよ。俺見たもん。この前、フレーバー兄貴をテメーが潰したとき……」
「……あれか」
尊堂は右頬に大麻の葉の絵を彫りこんだエ師の顔を思い出す。
一週間前だったか? それとも二週間?
横目で件の御曹司様を確認する。
腰を抜かしてる。
「まあ、そうだろうな」
「フレーバーって言うのか、あいつ。顔は覚えてた」
「ざけんなよ……」
尊堂の前に飛び降りてくる。右手にペンを握り、一息に空中に鳥の絵を描く。
それはたちまち具現化、燃える白鳥となり尊堂に飛翔してくる。
紙一重で回避。
「ここはテメーの処刑場だ。火刑だ火刑、せいぜい苦しめや…」
「いまは取り込み中なんだが……また後にしてくれないか」
傾きのペンはさらに三匹の鳥を描き、燃えて飛翔させ、尊堂のジャケットのすそを少し焦す。
そのうち一匹は隣で尻餅をついている御曹司様にいったが、空中にあらわれた障壁にはばまれた。
「しゃーねえ……」
尊堂はペンを握りしめていた。
そのペンがたちまち描き出したのは、竜、亀、虎の三匹。
竜は青い蔦を放出し、亀は水流を浴びせかけ、虎は金色の弾丸を射撃する。
対する相手はやはり炎の鳥を描くが、蔦を防ぎきれず、その足にからまれて転倒する。
尊堂は、その隙に、さらに追撃を試みる。
しかし──