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怪盗の登場

責任者部屋に戻り待機していると、突然、バタバタし始めた足音が聞こえだす。「とにかく冒険者を!」そう叫んでいるのは警察のようだ。

「何かあったのかな……?」

「また気球でも飛んだ……?」

 アズサとマイクが小声で声を交わす。アリエッサが考え込んでいる様子。ピリピリとした空気なので邪魔しないようにと全員目を配らせるだけだ。


「失礼します!」

 駆け込んできたのは警官だった。

「……はい、なんでしょうか?」

笑顔のアリエッサの圧が強い。

「緊急で申し訳ないです……怪盗と思われる人物が姿を現しました! この会場から走って離れていっているようです! 追跡にご協力いただけないでしょうか!」

「わかりました。色々聞きたいことがありますが、時間が惜しいですね。 エッジとアンは詳細を確認してすぐに現場に向かってください。殺さないように」

「私は……?」

「エリスは待機です。怪盗の陽動作戦の可能性があります。戦力は分散させておきましょう。夢の羽のメンバーは、ここで私の指示に従ってください」


 エッジとアンはアリエッサの言葉に頷くと急ぎ足で退出した。どちらも索敵能力も戦闘能力も優れているし、よっぽどの敵でない限り問題ないだろう。

「そういえば…… リーダーのカミトはどうしているんだ? 来ないのか?」

「機密事項です。いちいち聞かないでください」

 ライエルの問いをバッサリ切り捨てるアリエッサ。ライエルの顔が青くなっている。すまない、ライエル……


「さて、時間も惜しいことですし、夢の羽の皆様は手分けして情報収集をお願いできますか? 今回お願いしたいことは、「怪しい人物」はいないか、ということです。アンとエッジが追っていますが、それは陽動で実は怪盗が冒険者として潜んでいる可能性も否定できません。高レベル冒険者であれば顔が割れているので、無名の一般冒険者として振る舞っているでしょう。違和感のある発言をする者がいないかを探してください。リーダーの方で適当に割り振ってもらえると助かります」

「ああ……わかった」


 その頃、アンとエッジは警察から目撃場所を聞き、打ち合わせをしている。

「追いかけても間に合わない可能性があるから先回りしたいね」

「そうだな。屋根の上を走っているんだろ? 障害物もないし、かなり早いだろうな」

「ね。 目撃情報的にはこの会場から真っ直ぐ北の方に進んでいるんでしょ? どっかで曲がるタイミングないかなあ……」

「家がなくなるタイミングじゃないか? 警察などに追いかけられる面倒さを考えると屋根の上を移動し続けるのは変わらないだろうから、屋根が無くなったらある方に方向転換すると思うんだが」

「そうだね。北の方で、家が少なくなるのは…… 商店街のところだね。そこで曲がると予測して先回りしてみよっか」

「だな。ここは賭けに出るしかないな、急いで向かおう」


 2人も屋根の上に飛び乗り、移動していく。本来であれば家を傷つける行為のため禁止されているが、そんなことを気にしていたら追いつけなくなる。

「こらっ。君たち! そんな所に乗るんじゃない!」

「すいません、急いでいるので! 文句はヘッズオブドラゴンに伝えておいてください!」

 警察とも繋がりの深い「アリエッサのチーム」の名はこういう時に便利である。


「私に着いてきてね!」

「もちろん、任せるよ!」

 夜の移動は、夜目の効くアンが先導し、エッジが後ろをピッタリ着いていくのが基本的な動きだ。アンに近すぎず離れすぎず適度な距離を保つことで、方向転換や急な障害物にも対応しつつ、迅速に移動していく。


「見えたよ、ゆっくり移動しているみたい」

「お、この方向で正解だったか」

「ちょっとズレてるけど、すぐ追いつけそう。あ……」

 怪盗とアンの目が合う。すると、怪盗はスピードを上げて逃げていく。

「やばい、逃げられる。ちょっとスピードあげるよ!」

「了解!」


「怪盗ってどんな見た目している!? 追いつけそうか!?」

「細身で全身黒の服、黒のマントにメガネをしている! 顔は隠れていて見えない! 移動速度は、私たちより早かったり遅かったり! 調節しているみたい!」

「ああ、ということは、あれだな!」

「ええ、戦闘準備よ!」


 怪盗がひらりと地上に降り、走っていく。2人が追いかけた先には広い公園があった。少し明かりがあるため、仄暗い中に黒い服の怪盗が立っている。

「どれくらい強いのかな?」

「さあ、エリスより強いことはないんじゃない? とりあえず様子見ね。殺したらアリエッサに怒られちゃう」

「そうだな」


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