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現場調査

しばらくすると、元々いた冒険者や護衛の者以外は全員いなくなった。先ほどまでと比べるとひどく静かでがらんとしたように感じる。さて、キキの近くにいた奴らに話を聞くか。俺はこっそりと持ち場を離れると、ステージ付近に歩いていく。まだステージ付近では大伯大人がバタバタとしている。

 

「大変だったな」

「? あ…… すいません、完全に失敗しました」

「ややこしくなるからタメ口で頼む」

 まず、話しかけたのはアンだ。夜目の効くヴァンパイアであるアンなら何かを見ているかもしれない。


「で、真っ暗になった時何か見えたか?」

「……いや、何も。最初真っ暗になった時は皆が戸惑っていて、キキもステージ上でキョロキョロしていたのが見えた、けど…… その後煙が出てきたせいで何も見えなくなったから動けなかった」

「真っ暗になった時に侵入してきた者とかもいなかったのか?」

「何も変化はなかったなあ。周りを見渡しても動いている者がいなかったかな。全員戦闘体勢は取っていたけど動くに動けない状態だった」

「なるほどな。煙の中で人影は見えなかったか? 誰かがキキを連れ去ったと思うんだが」

「ええ。煙のせいで見にくかったけど、キキに近づくようにステージに近づいていく影は見えなかったわ。本当にいつの間にかキキはいなくなっていた、と思う」

「そうか、ありがとう。エッジはどこに?」

「エッジは……あっち」

 

 アンが指差した先には座り込んで休んでいる様子のエッジがいた。すっかりやる気をなくしているようだ。

「お疲れ」

「ん? …… ああ、すいません!」

「敬語はやめてくれ。怪しまれる」

「りょ、了解」

「どうだった?」


「そうですね、真っ暗になって以降、気づけばキキがいなくなっていたという感じで。ただ一点気になっているのが……」

「どうした?」

「全くもって不審な音が聞こえなかった、という違和感があって。普通キキがいなくなったということはキキを連れ去る音や、引きずる音、歩いていく音が聞こえてもおかしくないと思うんだけど、そういう音が全く聞こえなかった」

「無音だったということか?」

「いや、他の冒険者が動く音は聞こえていたけど、それ以外は特に聞こえなかった、というのが正しいかな。異音が聞こえなかったのが違和感だと思ってもらえれば」

「なるほど。キキはそれなりに強いし、女性とはいえ、連れ去るにはそれなりの苦労があるはず。それが一切なかった上に誰かが来たり立ち去ったりする音もしなかったということか」

「そう! それが何故かはわからないけど、気になってるっすね」


「わかった。俺は情報収集して回るから、何かあったらまた教えてくれ」

 俺はエッジに礼を言うと、その場を立ち去った。とりあえずわかったこととしては、アンもエッジも何も聞いておらず、見ていない。ただエッジは逆にそれが違和感だと言った。確かに考えてみると、そんなはずがない。いくら混乱状態で真っ暗、煙とはいえ何かしらの動きを誰かが把握していてもおかしくない。特に周囲は高レベル冒険者達だ。厳しい戦いで生き残ってくるために五感が優れている者が多いはずだが…… 不思議なことになっている。


 怪盗はどこから現れ、どのようにキキを連れ去ったのか? その点がわかれば怪盗の動きを追うことができそうだが、現時点の情報では推測しかできない。


一つの可能性は、空に登っていたパターンか。上から降りてきてキキを吊り上げ回収した、これなら人影や音も無く接近することは可能だろう。ただ、いくら煙があり真っ暗だったとはいえ、無音で誰にも気づかれず実行することは可能なのだろうか? また、犯行後にライブ会場に一般市民を集めた理由もわからない。普通に考えると一般市民を集めて混乱させることが狙いだろうが、空に逃げたならそんなことをする必要はなく、そのまま逃げれば良いだけだろう。わざわざアナウンスで空に目線を向けさせる必要もない。


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