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怪盗のルーティン

1ヶ月前の夜。1人の普通の女が借りているホテルの中に入る。高級ホテルにふさわしい、綺麗にドレスアップされた服装。まるで金持ちの貴族のような存在感を持って女は自室に戻っていく。部屋には1人、怪盗が静かに座っている。


「地図は出来たか?」

「いたの? びっくりしたわよ。女の子の部屋に入る時はノックくらいしてよね」

「すまないな。気になって待っていた」

「心配性ね。簡単だったわ。はい、これね」

女が手渡したのはキキのライブ会場の手書きの地図である。男はそれをじっくりと眺める。

「いわゆる普通の劇場だな。特段特殊な点はなさそうだ」

「ええ、そうね、そう思って問題ないわ」

「他に手に入れた情報があったら教えてくれ」

怪盗は女と二人でいつも活動している。女は情報収集役だ。


「そうねえ。どうやら領主も本気のようで、冒険者ギルドに連絡が言ったらしいわ。冒険者達も警備に駆り出されるみたい。大体こういう時は最大手のチーム、シールズオブワールドが出てくることが多いみたいね。そのチームの情報は今調べているところ」

「冒険者が多数、か…… 警察と冒険者が入り混じった警備になるのだろうな。秘宝に関してはライブで使われる予定は変わらずか?」

「ええ。これで怪盗を怖がって展示を取りやめたとなると沽券に関わるからね。間違いなく秘宝はライブ会場に姿を見せるわ。警察にも圧力をかけて大規模警備を行うみたい」


「どう? 今回も問題なさそう?」

「ああ、今の所失敗する理由はないな。今回もいつも通りだよ」

「だといいんだけど。ただ、この街って強い冒険者多いじゃない? 変なのに当たらなかったらいいんだけど」

「情報収集については頼む。土台がしっかり出来ていてこその本番だからな。おかしな能力を持つ冒険者に邪魔をされることだけは避けておきたい」

「任せて。ただ…… 世界最強の冒険者がいる街だからね。気をつけてね。あんたでも一撃で殺されちゃうかもしれないから」

「ああ、そうだな。とはいえ世界最強だろうがなんだろうが、戦わなければ問題ない。逃げることでは負けるつもりはないさ」

「確かにね。ライブ会場全体を吹き飛ばされたら別だけど」

「おいおい、俺のために何人道連れにする想定なんだ? そんなことしてくるわけないだろ」

「そうね。ここの領主は、いるかもわからない怪盗のために数万人を犠牲にするほど冷酷な領主ではないわ」

「だな。とりあえず冒険者と警察の動きに関する情報を引き続き集めてくれ」

「ええ、わかったわ。あんたはどうするの?」

「この街は良い。適度にたくさんの種族が集まっていて、賑わっている。この環境を楽しみながらお話を創造していくよ」

「了解。楽しんで」


女は部屋を出ていく。さて、今回のゲームはどう進めていくか。怪盗は葉巻をふかしながら考える。怪盗はいつも盗みに入る前に脳内でひたすらシュミレーションをし続ける。1日中椅子に座りながら考えていることもあるほど、頭の中で考えることにこだわっている。


 大胆に登場するのは、強力な冒険者が出てくる可能性を考えると難しいだろう。影のように行動するのが良いだろうな。ネックレスなのでキキの胸元に宝石があるに違いない。それを気づかれないように盗むか、強引に奪うか…… 一連の動きを頭の中で妄想し、シーンを描いていく。タイトルは……「消えたお姫様」にするか。


考えがまとまると、怪盗は攻略ストーリーを紙に書き連ねる。この世界で紙は貴重だが、惜しむことなく使っていく。気に入らない部分が出てくると燃やして新しい紙に書き続ける。犯行の始まりから終わりをまるで物語かのように紡ぐのが大泥棒のルーティンだ。そしてそのストーリーに沿った形で犯行を行っていき、物語を事実に出来事に変えてしまう。全ての事件は紙にまとめられ、隠れ家に保存されている。


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