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キキとの遭遇

怪盗について考えながら通りを歩く。今日も街は賑わっており、屋台からは様々な美味しそうな匂いがする。冒険者が街に戻ってくる夕方が賑い時で、最も騒々しい時間である。多くの者が屋台で食事を購入したり、近くの酒場で酒を飲んだりする。そして乱暴な冒険者同士で喧嘩が勃発し、警察が駆けつけ、犯人は留置所で反省する…… これもいつもの出来事だ。

「ねえねえ、カミトくん?」

 目の前の少し小さい女性から声をかけられ、思わず立ち止まる。メガネをかけており、帽子をしているので顔は良くわからないが、ぱっと見では心当たりはない。

「すいません、どちら様でしょう?」

「私よ、私」

 女性がメガネを取ったので顔が良く見えるようになったところ、わかった。キキだ。


「ああ…… こんなところで会うなんてびっくりです」

「昨日みたいにタメ口でいいよ。そんな畏まらなくても」

 道の端に移動して、会話を続ける。キキから話しかけられるとはびっくりだ。やはり普通だと考えていたことがインパクトが強かったのだろうか?

「そうか。覚えられてるとは思わなかったよ」

「いや、昨日はごめんね。ちょっとやり過ぎちゃったなって。冒険者達の前で恥をかかしちゃったね」

「恥……? ああ、戦闘のことか。特に気にしていないからいいぞ、心配しないでくれ」

 確かにバカにしている冒険者はいるかもしれないが、変装を解除すれば一撃で倒せるので特に気にするまでもない。


「ありがとう、優しいね。でも私としては申し訳ないからさ…… そうだ、せっかくだしケーキをご馳走するよ。それでチャラにしてくれない?」

 キキに接近できるのは良いチャンスだ。新しい情報が手に入るかもしれない。

「そうか、じゃあご馳走になろうかな」

「ありがとう! そう言ってもらって安心したよ。ところで…… この辺りで良いお店を知らない? 私はちょっとわからないんだよね」

「そうだな…… 俺も行ったことはないが、メンバーが美味しいと言っていた店がある。そこに行ってみるか」

 アズサは女の子らしく甘い物が好きで、マイクも好きなので良く甘い物談義をしている。おかげで俺もライエルも甘い物に関してはすっかり詳しくなっている。まさかこの場面で役に立つとは思わなかったが。


「1人で何をしてたんだ?」

「いつもの習慣なんだ。ライブの前は街を歩いてその街の雰囲気を感じるようにしているの。やっぱり街によって少し雰囲気が違うからね。その雰囲気を上手くライブに取り入れることができないかなーって」

「この街はどうだった?」

「さっきまで静かな街だったけど急に賑やかになったね。冒険者が多いからかな? そういう二面性があるという意味では面白いね」

「確かにそうだな。冒険者は昼に街にいることは少ないからな」

 会話をしながらしばらく歩くと、目的の店にたどり着く。混雑しておらず、すぐに座れるようだ。店員の案内で席に座り、メニューを眺める。


「この店、何が美味しいの?」

「ケーキが美味しい、とは聞いているが…… それ以上はわからないな」

「色々な名前が並んでいるけど、よくわからないね…… 私もケーキはそんな詳しくないんだ。甘い物が食べたいなあと思って提案したんだけど」

「じゃあ店のおすすめでも頼むか」


「そういえば、誰かにバレて騒動になったりしないか? それが心配だが」

「大丈夫だよ。私の魔法の一つで存在感を消しているから。周りは誰かがいるのはわかるけどそれが誰なのかまでは気に留めないようになっているからね」

「それは便利な魔法だな、俺も欲しいよ」

「カミト君そんな有名人なの?」

「あ、いや…… 有名になったら、だな。やっぱり有名人ならではの苦労はあるだろうからな」

「なるほどね。カミト君がケーキ屋で女の子とデートしてた! とか騒動になったら申し訳ないからさ」

「ならないから大丈夫だ。まあ、あいつがケーキ屋にいるぞ、と別の意味で話題になる可能性はあるけどな」

「そうなんだ。じゃあ私みたいな美女と一緒に過ごせる場を感謝してほしいな。あ、君に取っては私は思ったより普通なんだってっけ?」

「蒸し返さないでくれ……」


「そうは言ってもね、気になるんだよ。自慢じゃないけど普通だな、と思われることってあんまりなくてね。身近にすごい綺麗な人でもいるのかな? チームメンバーとか?」

「まあ…… そんな感じだ。ふと比較してしまっただけだ」

「そうなんだ。一回会ってみたいなあ。気になってきたよ」


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